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B&Iライオンズ戦なぜ大切? 日本の現状は? 日本代表・松島幸太朗語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
新たな髪色には「まぁ皆、びっくりしていましたね」(スクリーンショットは筆者制作)

 ラグビー日本代表の松島幸太朗が日本時間6月22日夜、合宿先のスコットランドでオンライン取材に対応。26日のブリティッシュ&アイリッシュ(B&I)ライオンズ戦へ「この試合というのは、日本ラグビーにとって重要な一戦だと思う」と述べた。その理由は。

 松島は身長178センチ、体重88キロの28歳。ワールドカップには2大会連続出場中で、2019年の日本大会では計5トライを挙げ8強入りを果たした。

 グラウンド最後尾のフルバックを主戦場とする。ただし、2016年秋からジェイミー・ジョセフヘッドコーチが率いる日本代表では、端側のウイングでも起用される。

 現在はフランス・クレルモンに所属し、12日まで同国プロリーグのトップ14に参加していた。日本ラグビー協会のホームページによると、現在の日本代表には19日に合流した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——合流からいままで、チームにどうアジャストしようとして、いまはどんな感触を得ているか。

「(最初は)戦術とかはまるっきりわかんないんで、まずはアタックの戦術(を把握し直す)。ディフェンスは、基本、変わらない。前に上る(接点から相手ボールが出るや、相手との間合いを鋭く詰める)。おもに、そこ(列から一斉に飛び出す際)のタイミングをどうとるかを意識しています」

——「アタック」の戦術。2019年時と変更点はありましたか。

「そんなに、すごい変わったな、とかは感じないです」

——短い時間で適応するために工夫している点は。

「より選手とコミュニケーションを取る。あとは戦術を毎日(チェック)。見る以外は(日々確認しないと)頭の中に入らないので、そこはしっかり毎日やっています。まだ(試合まで)数日ある。いま徐々に覚えていますし、試合までには完ぺきに覚えられると思う。あとは(防御ラインを飛び出す時などの)タイミングとかを合わせていければ」

——日本代表とクレルモンとで、ご自身の立ち位置や役割に違いはありますか。

「そんな変わんないですね。しっかりプレーで(存在感を)見せるってところが、僕が一番、できる表現なので、練習でも試合でもそこを意識的にやっていきたいです」

——プレーしたいポジションは。もともとは、グラウンドの中央付近でボールに触れるフルバックを希望していたようですが。

「ジャパンだとフルバックは、何と言うんですかね、あんま自由のない感じがあった。ウイングの方が自由にできていて。アタック中は(ウイングも)フルバックのような役割をしているので。だから、そんな(どのポジションでプレーするかを)気にしないようにしています」

 ジョセフ体制の日本代表にあって、フルバックはスクラムハーフ、スタンドオフと同様、戦術やゲームプランに即したプレー選択がより求められるのだろうか。突破力が長所の松島は今回、ウイングで起用されそうな旨を自ら示唆した。

 選手起用の示唆と言えば、こんなやりとりもあった。

——セミシ・マシレワ選手、髙橋汰地選手ら、バックスリー(ウイング、フルバック)の新しい選手について。

「皆、向上心があるので、チームとしても向上できる。いいランニングスキルがあるので、自分がディフェンスしている時に(相手組に入った当該選手の走りに触れて)『こういうステップ切って来るんだな』と勉強になる。新鮮で、楽しいです」

 今度戦うB&Iライオンズは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの代表的な選手により4年に1度編まれる連合軍だ。

 結成されるたびに南半球の強豪国にツアーへ出るが、今回は南アフリカ遠征の前にエディンバラ・マレーフィールドで初めて日本代表とテストマッチ(代表戦)を実施。希少なカードに期待感が高まっている。

 松島は言う。

——B&Iライオンズのメンバーが発表された。

「B&Iライオンズとやれる機会はないですし、皆、緊張はすると思うんですけど、わくわくの方がずっと高いと思う。そういった楽しみがありますね。

 キックが多くなりそうな9、10番(スクラムハーフのコナ・マレー、スタンドオフのダン・ビガー)なので、そこはバックスリーとして気を付けたい部分です。

 9番がかなり高いボールを蹴ってくると思います。その分、相手のウイングが(自軍の捕球役との間合いを)詰めてくる時間も多くなるので、そのキャッチする人を周りがサポートするのが大事。もしボールをこぼしても周りが捕る状況にして、なるべくピンチを少なくする」

——その他、注目すべき攻防は。

「やっぱり、ジャパンはチャンスがあればすぐに展開ラグビーもキッキングゲームもできる。そこをスマートにやっていって、自分たちの攻撃する時間を増やしてきたいです」

——B&Iライオンズへのイメージは。

「毎週のように(イングランドの)プレミアリーグとかを見てはいたので、(出場選手が)どういったプレーをするのかはわかるっちゃ、わかる。予想しやすい部分はあります。そういったスター選手とやるのは凄く楽しみ。いい経験になると思います」

——楽しみな対戦は。

「うーん…。誰…。難しいですけど…。ビッグネームばかりなので、絞り切れないですね」

——2023年のワールドカップフランス大会に向け、この試合はどういう位置づけになるか。

「位置づけ…そうすね、この1戦で自分がいいプレーをすればまた注目されると思いますし、チームとしてB&Iライオンズに勝つことができればチームとして注目される。こうしたモチベーションは個人的にもチーム的にもあると思う。やっぱり皆、気合が入っている」

——相手には、フランス大会で対戦するイングランド代表の選手もいる。意識しますか。

「いや、そんなに、いまは特に、ないです。いまは相手よりも、自分たちにフォーカスを当て、どうすれば勝てるかを考えていくのがベストだと考えています」

 まずは自分たちのプレースタイルと向き合う。自分たちのすべきことをいつ何時でも遂行できるよう準備する。それがジョセフの唱える「自分たちフォーカス」で、松島もそれに倣う。

 そうはいっても、今度の試合の価値は深く認識する。さらには空中戦への対応といった、相手の特徴に基づく具体的な注目点も整理している。

 B&Iライオンズと戦える名誉について聞かれ、「この試合というのは、日本ラグビーにとって重要な一戦だと思う」と締める。

「選手としてはもしかしたらもう(戦えることは)ないかもしれませんし、この先、いつあるかわからない。ただ、今回の試合で日本代表は勝てれば、またB&Iライオンズも(再戦を)考えてくれるかもしれない。この試合というのは、日本ラグビーにとって重要な一戦だと思う」

 2019年の日本大会まで、日本ラグビー界は国際リーグのスーパーラグビーへサンウルブズというチームを派遣。世界中を転戦してタフになった選手が、あの熱狂を支えていた。

 ところが、いまのスーパーラグビーはニュージーランド、オーストラリアの国内リーグが主体となっていて、現在の形になる以前にサンウルブズの2020年限りでのリーグ撤退が定められていた。

 会見で日本と世界との差について問われた松島は、1度しか世界8強入りを果たしていない自国のリアルを述べる。

——日本と欧州とで、ラグビーの差は縮まっているか。

「うーん、どうすかね。フィジカルという部分では(フランス入り後)最初の方は苦労しました。ただ何試合もやっていくなかで、フィジカルの差は縮まっていったと思う。海外でプレーする選手が増えれば増えるほど、そうした免疫がチーム(日本代表)としてついていく。(世界へ)出たい選手は出て行ってもいいと思います。まぁ、日本にもたくさん海外の選手が来ているので、これから(2022年1月からの新リーグで外国人枠に変化があれば)どんどん変わっていくんじゃないかと思います」

 日本代表と他国との間に「差」が現存するのだとしたら、列強国とのぶつかり合いに「免疫」をつけて「差」を埋めるほかない。松島はそれを実施したうえで、今度のB&Iライオンズ戦に臨む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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