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「死ぬやつは死ね。そういう政策なのだ」北朝鮮の食糧難が末期症状

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮は2日、金正恩総書記の立ち合いの下、極超音速ミサイル「火星-16ナ」の試射を行った。相変わらずの軍事挑発だが、その一方で民は飢えに喘いでいる。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)北倉(プクチャン)出身で脱北者のパク・ウンチョルさんは、NGO「北韓人権市民連合」に寄せた手記で次のように記している。

「山に住んでいた人たちは食べ物がなく、葛の根、松の皮、ドングリなどを主食にして凌いでいたが、病気になって顔がむくみ、死ぬ人も出てきた」

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

これは大飢饉「苦難の行軍」の最中だった1998年の状況についてものもだが、パクさんの出身地の北倉、隣接する洪原(ホンウォン)や栄光(ヨングァン)の2024年3月の食糧事情は、今も変わらず悲惨なものだ。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、これら地域の農村部では、食べるものもそれを買う現金も底をついた「絶糧世帯」が徐々に増えつつあり、住民の間では不安感が高まっている。

「ポリッコゲ(春窮)が来る前から食糧難に喘ぐ家が多く、深刻な危機に直面している。こんな状況なのに国は対策を立てるはおろか、『自力更生せよ』と繰り返すばかりだ。要するに『生き残れる者は頑張って生きろ、死ぬ者は死ね』という政策も同然だ」(情報筋)

栄光郡内では先月下旬、こんな悲劇的事件も起きている。

4人家族の父親が結核に倒れ、8歳の息子も栄養失調で起き上がれなくなった。治療費もなければ、食べ物を買う現金もなく、もはやツケや借金で首が回らなくなっていた。家々を訪ね歩き食べ物を貸してもらえないかと頼み込んだが、苦しいのはどこも同じ、全く貸してもらえなかった。飢えに耐えかねた家族は、自らの手で人生に幕を下ろしてしまった。

また、洪原郡では先月初旬、海岸で貝を拾い市場で売って生計を立てていた夫婦が、自宅で遺体となって発見される痛ましい事件が起きた。

情報筋によると、農村地域はどこでも食糧が底をつきかけ、他人を助ける余裕などないという。このような状況が好転するのは、麦の収穫が始まる初夏以降だ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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