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今年はコレが来る!?2020年に最も期待されるハリウッド映画TOP10

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をPRするダニエル・クレイグ(写真:ロイター/アフロ)

 2020年のハリウッド映画には、どんな期待作があるか?2019年を振り返ると、興収トップ10のうち9本がフランチャイズの続編、ゲームやコミックの映画化等、既存の作品をベースにしたものだった。残りの1本は、ジョーダン・ピールが2000万ドルの製作費で監督し、結果的に世界配収で25億ドル以上を稼いだ『アス』である。この傾向は来年も続きそうだ。何しろ、マーベルは2本、DCも2本のフランチャイズを用意していて、さらに、ピクサーでは例外的に2本の新作がスタンバイ。これに、007シリーズの最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が加われば、2020年もハリウッド映画は安泰と言える。

 さて、今年、最も期待される映画TOP10を映画サイトIMDbが発表している。それも、同サイトが売りにしているユーザースコアではなく、実際のページビューが多い順に並べた上位10本だ。つまり、映画ファンの期待値を計測した結果とも言える。それによると。

『ワンダーウーマン1984』
『ワンダーウーマン1984』

IMDbがページビューで弾き出した期待作TOP10

 第10位は、ヴィン・ディーゼルがドミニク役でシリーズに復帰する『ワイルドスピード9』。同じく、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター、タイリース・ギブソン、そして、亡きポール・ウォーカーも、実弟コーディの顔を借りて戻ってくるという噂もある。第9位は、時代を前世紀に巻き戻し、スパイ組織の成り立ちを描くプリクエル「キングスマン:ファースト・エージェント」。レイフ・ファインズ演じるオックスフォード公爵が、何百万人もの人々を一掃するための戦争を企てる悪の権化に対し、『マレフィセント2』でフィリップ王子を演じた新人、ハリス・ディキンソンを従えて立ち上がる。

 第8位は、デヴィッド・リンチの代表作『デューン/砂の惑星』(84)をドゥニ・ヴィルヌーブがリメイクする『Dune』。ティモシー・シャラメ、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソン、ステラン・スカルスガルドと配役も豪華で、IMAXと3D上映が決定。第7位は、つい先日US版の予告編が解禁された『ワンダーウーマン1984』。1984年を舞台に、ガル・ガドット演じるヒロイン、ダイアナが、前作で死んだはずのクリス・パイン扮する恋人、スティーヴと再会し、人気コメディエンヌ、クリスティン・ウィグ演じるヴィランと対決する。監督は勿論、前作に引き続いてパティ・ジェンキンスだ。

 第6位は、ディズニー・アニメの実写版リメイク『ムーラン』。ヒロインは新人のリュウ・イフェルが演じ、脇をドニー・イェン、ジェイソン・スコット・リー、ジェット・リー等、鉄壁の布陣で固める。ディズニー・ヒロインのイメージを変えたと言われる作品が、実写になってよりパワーアップ必至だ。第5位は、MCUフェーズ4の中の1本となる『ブラック・ウィドウ』。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)と、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)の間に起きた出来事を描く新機軸のストーリーで、来たるオスカーで本命視されているスカーレット・ヨハンソンが、再びアクション女優として弾ける。第4位は、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。シリーズ25作目で遂にボンド役を引退するダニエル・クレイグの回りに、レア・セドゥ、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ、ベン・ウィショー等、馴染みの顔ぶれが集結。クリストフ・ヴァルツが前作『スペクター』(15)に続いて悪役、ブロフェルドを演じる。

 第3位は、『トップガン マーヴェリック』。トム・クルーズが34年ぶりにマーヴェリックを演じるファン待望の続編だ。マーヴェリックはトップガンの教官として現場に復帰。劇中では驚くべき操縦スキルを見せつける。親友グースの息子をマイルズ・テラーが演じるほか、ヴァル・キルマーがアイスマン役でカムバック。他に、ジェニファー・コネリー、ジョン・ハム、エド・ハリス等が出演。

 第2位は、少々意外だがSEGAのビデオゲームを実写化する『ソニック・ザ・ムービー』。アメリカのモンタナ州を舞台に、驚異的なスピードで走るハリネズミのソニックが、狂気の科学者、ドクター・ロボトニックに挑む。ロボトニックの声をジム・キャリーが担当する。

 そして、第1位は、『スーサイド・スクワッド』(16)の人気キャラ、ハーレイ・クインを主役に据えたスピンオフ『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。ジョーカーと別れ、新たな人生をスタートさせたハーレイ・クインが、自由を目指す女性たちを率いて大暴れする。マーゴット・ロビーが前作以上のパンクメイク&ファッションでファンの目を楽しませてくれるに違いない。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

よりマニアックな期待作TOP10

 一方、よりマニアックな期待作を発表しているサイトもある。2007年の設立以来、ソーシャルメディアとして独自の記事を提供している大手ウェブサイト、The Playlistも同じく2020年に期待される100本を選出。ここでは、そこからTOP10を紹介しよう。IMDbとはかなり異なるマニア向けの10作が並んだ。

 第10位は、『君の僕の虹色の世界』(05)で知られる女優、作家、ミュージシャン、そして、映画監督のミランダ・ジュライ監督の『kajillionaire』。犯罪者の両親が部外者を連れ込んで立てた強盗計画に巻き込まれる娘の混乱を描く犯罪ドラマで、エヴァン・レイチェル・ウッドが娘を、デブラ・ウィンガーとリチャード・ジェンキンスが両親を演じる。第9位は、デヴィッド・フィンチャー初のモノクロ映画で、Netflixが製作する『Mank』。伝説的傑作『市民ケーン』(41)の脚本をオーソン・ウェルズと共に書き上げたハーマン・J・マンキウィッツの伝記映画で、脚本はフィンチャーの父で元ライフマガジン編集長のジャック・フィンチャーが担当し、ゲイリー・オールドマンが主演。アマンダ・セイフライド、リリー・コリンズが共演する。

 第8位は、『ブンミおじさんの森』(10)で第63回カンヌ映画祭パルムドールに輝いたタイの名匠、アピチャートポン・ウィーラセータクン監督が、ティルダ・スウィントン主演で撮る『Memoria』。内容の全容は不明だが、スウィントン扮するスコットランド人女性が、母国を旅するうちにスピリチュアルな体験をする異色ファンタジーになる模様だ。第7位は、『ジェシー・ジェームズの暗殺』のアンソニー・ドミニク監督が、マリリン・モンローの私生活に迫る『Blonde』。モンローを『ブレードランナー2049』(17)や『ナイブズ・アウト/名探偵と刀の館の秘密』(19)で注目されているアナ・デ・アルマスが演じる。ドミニクは自らキャリア最高の1作と明言しているが、さて。

 第6位は、ソフィア・コッポラの『On the Rocks』。若い母親がプレイボーイの父親と再会し、一緒にニューヨークを冒険するといういかにも楽しそうな物語で、ラシダ・ジョーンズが娘を、ビル・マーレイが父親を演じる。製作はA24とアップルが共同で担当する。第5位は、タイトル未定のポール・トーマス・アンダーソンの最新作。1970年代のサン・フェルナンド・バレーに暮らす、高校生でありながら子役でもある主人公の日常を綴るものとか。気になるキャストも未定だ。第4位には、IMDbのリストと唯一被る『Dune』がランクイン。

 第3位は、ウェス・アンダーソンの『The French Dispatch』。20世紀フランスの架空の町にあるアメリカの新聞社の支局を舞台に、紙面に載った数々の物語が紹介される。出演は、ティモシー・シャラメ、シアーシャ・ローナンの他に、ビル・マーレイ、ティルダ・スウィントン等、”アンダーソン組”。

 第2位は、フランスの鬼才、レオス・カラッカスの『Anette』。人気コメディアンと世界的オペラ歌手の間に生まれた好奇心溢れる娘、アネットにまつわるエピソードを綴る。夫婦を売れっ子のアダム・ドライバーとマリオン・コティアールが演じる。

 第1位は、クリストファー・ノーランが『ダンケルク』(17)に続いてIMAXカメラで撮影する最新監督作『Tenet テネット』。国際的に暗躍するスパイとタイムトラベルを描く壮大なアクション大作で、2億2500万ドルという破格の製作費が計上されている。1枚のガラスに銃弾で穴を開けるショットで始まるティーザートレーラーからすでにただならぬ世界観を想像させる。ノーランが新たな映像革命を起こしそうな気配だ。

 以上、ここで紹介した作品は、勿論、2020年に期待されるラインナップのほんの一部に過ぎない。意外な映画がスリーパー・ヒットしたり、社会現象を巻き起こすのがこの業界の面白さでもある。果たして、今年の映画シーンはどんな展開を見せるのか?

画像

(C) 2019 WBEI and c&TM DC Comics

(C) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

(C) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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