もはやゴルフ界だけの問題ではないPGAツアーとPIFの統合合意、米議会公聴会で次々に明かされた新事実
ゴルフ界の問題が、ついにゴルフ界の枠を超え、米議会が動き始めた。
6月6日(米国時間)に発表されたPGAツアー、DPワールドツアー、リブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の3者統合合意を受け、米上院財政委員会の常任小委員会は「それが米国と米国民にとって何を意味するのか?」を問うため、統合合意に関わった中心人物らを7月11日(米国時間)にワシントンDCへ召喚し、公聴会を開いた。
元々、召喚されていたのは、PGAツアーのジェイ・モナハン会長とPIFのヤセル・ルマイヤン会長、リブゴルフのグレッグ・ノーマンCEOの3名だった。
しかし、ルマイヤン会長とノーマンCEOは「スケジュール上の理由」で欠席。モナハン会長は体調不良で休養中ゆえ、やはり欠席。結局、統合合意にかかわった「中心人物」として出席したのは、モナハン会長の代理を務めているPGAツアーのロン・プライスCOOと統合合意の立役者と言われているPGAツアーのジミー・ダン理事だけだった。とはいえ、米ゴルフウィーク誌によると、新たに明かされたことは多々あったようだ。
【PIFから出されていた主な提案】
PGAツアーのダン氏とPIFのルマイヤン会長が初めて直接会ったのは今年の4月24日、場所は英国ロンドンだった。これまで明かされていた情報では、その会合はダン氏がルマイヤン会長へレターを送って打診し、PGAツアー側から歩み寄ったとされていた。
しかし、その会合で積極姿勢を見せたのは、むしろPIF側だったことがわかった。PIFは、PGAツアーに対するさまざまな提案を盛り込んだプレゼンテーションをその場で行ったそうだ。
提案の中で主なものを挙げると、
「タイガー・ウッズとローリー・マキロイにリブゴルフのチーム・オーナーになってもらい、最低でも年間10試合に出場してもらうこと」
「PGAツアー、リブゴルフ、LPGAのスーパースターが集う大規模でグローバルなチーム・イベントをリブゴルフ流のスタイルで、サウジアラビアとドバイで開催し、テレビ中継も行うこと」
「PIFのルマイヤン会長にオーガスタ・ナショナルとR&A(ロイヤル&エインシャント・ゴルフクラブ・オブ・セント・アンドリュース)のメンバーシップを授けること」
などが盛り込まれていたという。
【アクションを起こしたのはPIF側だった】
交渉のためのアクションを最初に起こしたのは、これまでの報道ではPGAツアーのダン氏だとされていたが、実際は、ダン氏が動く数か月前に、PIF側からの打診があったことがわかった。
「手を組もう」というPIF側の意向を受けた英国のビジネスマン、ロジャー・デブリン氏がPGAツアーのダン氏へ最初の打診を行なったのは昨年12月8日のことだったそうだ。
デブリン氏はダン氏と会う機会を求め、メッセージのやり取りを数回行なった。その際、デブリン氏は「PIFの財力にPGAツアーは叶わない。このまま対立を続けたら、どちらが長続きするかは明白だ」などと強調したという。
しかし、結局、ダン氏はデブリン氏とは会わず、やり取りを中止。その代わり、ダン氏は今年4月18日にルマイヤン会長へ直接メッセージを送り、水面下の交渉を行うことを打診。そして両者は、4月24日にロンドンで初めて顔を合わせたという経緯だったそうだ。
PGAツアー側はPIFと統合に関する交渉を開始した当初から「ノーマンCEOを交渉の場に加えないこと」「ある時期にノーマンCEOを解任すること」を求めていたこともわかった。
しかし、その要求をPIF側が受け入れたのかどうかは、PIFのルマイヤン会長もノーマンCEOも公聴会には出席していなかったため、いまなお不明だという。
【秘密は、まだある?】
6月6日に統合合意が電撃的に発表されただけでも、ゴルフ界とツアー関係者が受けた衝撃は大きかった。
その後、統合に向けた「水面下の交渉」が、いつどんなふうに行われたのかは、ある程度は明かされていた。だが、今回の公聴会によって、さらに裏側に潜んでいた新事実が次々に明るみになった。
一体、この統合話には、どこまで秘密が隠されているのだろうか。なぜ、そんなにも秘密裡にコトを進める必要があったのか。この統合は誰のため、何のためのものなのか。本当に選手やゴルフ界にとって、良きものなのか。
わからないことだらけだからこそ開かれた公聴会だったが、疑問と不安は、さらに深まったように感じられてならない。