駆除剤の効かない蚊が出現!?ネッタイシマカの脅威と最新対策
ネッタイシマカは、熱帯や亜熱帯地域に広く分布する蚊で、黒と白のしま模様が特徴です。この蚊は非常に危険なウイルスを媒介することで知られており、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、黄熱病などが主な病気として挙げられます。特にデング熱の発生率は、過去20年間で急増し、世界中の公衆衛生に大きな影響を与えています。世界保健機関(WHO)の報告によると、2000年から2019年にかけて、デング熱の報告件数は50万人から520万人へと10倍に増加し、2024年は4月の時点ですでに760万人以上のデング熱症例が報告されています。
薬剤耐性を有する蚊の出現
国立感染症研究所などのチームは、ベトナムとカンボジアで、デング熱などの感染症を媒介する「ネッタイシマカ」に、駆除剤が効かない「スーパー耐性蚊」が広がっていることを確認したと発表しました。カンボジアの首都プノンペンでは、この遺伝子変異を持つ蚊が7割以上に達しています。この耐性は、駆除剤に対して約1000倍の耐性を持つ可能性があり、日本にも航空機などを通じて侵入するリスクが指摘されています。(参考:読売新聞 殺虫剤効かないネッタイシマカ、東南アジアで確認…日本に侵入しデング熱など媒介の恐れ)
日本国内にネッタイシマカはいるのか?
ネッタイシマカは過去に沖縄や小笠原諸島で確認され、デング熱の流行を引き起こしたことがありましたが、現在は国内では絶滅しています。分布の北限は台湾の台中市付近であり、日本国内では沖縄の南側(石垣島・西表島など)以北では野外での定着は難しいとされています。
日本への侵入リスクと温暖化の影響
しかし、グローバル化と地球温暖化の進行により、ネッタイシマカが日本国内に侵入し、定着する可能性が高まっています。実際に2012年から2017年までの間、成田国際空港や東京国際空港などでネッタイシマカの幼虫や成虫が発見されており、航空機を介して侵入したと考えられます。2017年と2018年に採集されたネッタイシマカからは、駆除剤抵抗性をもたらす遺伝子が確認され、今後の駆除が困難になる可能性が指摘されています。(参考:国立感染症研究所 日本におけるネッタイシマカの分布, 侵入および定着)
新しい駆除剤や蚊よけ商品の開発
地球温暖化が進行する中、日本ももはや他人事ではありません。デング熱の発症率が急増している東南アジアでは、スーパー耐性蚊に対応するための新技術を活用した駆除剤や蚊よけ商品が次々と発売されています。
花王が開発した「蚊の飛行行動を妨げる技術」を応用し、花王株式会社とアース製薬株式会社は、駆除成分を含まない蚊駆除スプレーを共同開発しタイで発売しました。表面張力の低い界面活性剤水溶液を蚊に付着させることで、飛行を妨げ、蚊をノックダウンさせます。(参考:マイナビニュース アース製薬と花王が協業、タイで殺虫成分不使用の蚊・駆除スプレーを発売)
花王は、化粧品技術を応用し、蚊が肌に止まりにくくする蚊よけクリームをタイで発売しました。ベースには低粘度のシリコーンオイルを使用しており、クリーム状の商品を肌に塗ると、蚊が危険を察知して逃げ出すという仕組みです。実験では蚊に刺される回数を74%減少させることが確認されました。(参考:日本経済新聞 花王、タイで蚊よけ参入 肌に止まりにくい新技術開発)
まとめ:駆除剤が効かない蚊が出現!ネッタイシマカの脅威と最新対策
ネッタイシマカは、熱帯地域での危険なウイルス感染症を媒介する蚊で、日本国内でも侵入のリスクが高まっています。殺虫剤に対する耐性を持つ「スーパー耐性蚊」の出現や、地球温暖化による生息域の拡大が懸念される中、新しい研究や商品開発による対策が期待されています。