誤解と無理解が横行するオスプレイ低空飛行訓練
3月6日、普天間海兵隊基地のMV-22オスプレイが日本本土での低空飛行訓練を開始しました。3機のオスプレイが岩国基地を拠点に四国のオレンジルートと呼ばれる低空飛行訓練ルートを飛ぶ事になっています。この低空飛行訓練に付いて基本的な事を纏めておきます。
低空飛行訓練について
- オスプレイは海兵隊の戦闘機が既に使用している低空飛行訓練ルートを飛ぶ。
- 海兵隊の戦闘機(ホーネット、ハリアー)は騒音も事故率もオスプレイより悪い。
- 米本土でも既存の低空飛行訓練ルートでオスプレイの低空飛行訓練は行われている。
- ハワイにはこれからオスプレイが配備されるが低空飛行訓練は実施予定で変更は無い。
- 普天間基地のオスプレイは既にテニアン、フィリピン、タイで低空飛行訓練を実施済み。
アメリカ本土でも低空飛行訓練は実施されている
アメリカでは禁止されているという誤解はニューメキシコ州での空軍の低空飛行訓練計画が見直しになった事から来ています。ただしこれは新設の低空飛行訓練ルートに関するもので、既存の低空飛行訓練ルートでは通常通り実施されています。ニューメキシコ州の事例は空軍の特殊作戦機であるCV-22オスプレイとMC-130Jコマンドウ2の低空飛行訓練計画で、オスプレイ固有の問題ではなく、世界遺産に登録された先住民居住地区タオス・プエブロを守ろうという運動でした。
ハワイの低空飛行訓練計画はそのまま実施される予定
ハワイにはこれからオスプレイが配備される予定です。事前に計画していた訓練計画で中止されたのは二つの地方空港(ウポル、カラウパパ)でのタッチアンドゴー訓練で、ハワイ王国初代国王カメハメハ1世生誕地と先住民の遺跡保護が理由とされています。ハワイ島などで行う低空飛行訓練の計画に変更はありませんでした。
日本の低空飛行訓練ルートは以前から使われている既存のもの
つまりアメリカ本土のニューメキシコ州やハワイでの事例を直接当て嵌めて「日本で実施するのは何故か」という問い掛けは出来ません。アメリカでも低空飛行訓練は行われているからです。在日米軍の低空飛行訓練に付いて日本側が有る程度制限できるようにすべきという主張は、比較例としてはヨーロッパでの駐留アメリカ軍の扱いを持ち出すべきでしょう。また、オスプレイのみをことさら問題視するのも筋が通りません。騒音の大きさも安全性も既に飛び回っているジェット戦闘機の方が問題は大きいのです。今は低空飛行訓練に付いて注目されているオスプレイのみが問題視されている状況ですが、本質的な問題点が置き去りにされているように思えます。
オスプレイを危険な航空機扱いしているのは世界中で日本だけです。アメリカではもう欠陥機呼ばわりはされていません。「未亡人製造機」という汚名で呼ぶ大手メディアはもう居らず、かつて「空飛ぶ恥」と書いてオスプレイ批判の急先鋒だったTIME誌は今やオスプレイに好意的な記事ばかり書いています。今年の春にはイギリスのミルデンホール空軍基地にもアメリカ空軍のCV-22オスプレイが配備される予定です。当然、イギリス国内で低空飛行訓練が始まるでしょう。イギリスの低空飛行訓練空域「LFA7」には通称「Mach Loop」という、丘の上から谷を飛ぶ軍用機を見下ろせる世界的に有名な撮影ポイントがあります。そのうち此処でオスプレイが飛ぶ姿も撮影されてYouTubeに投稿されるでしょう。その時、イギリスで今の日本のような報道が為されるとは思えません。これまでイギリスでは2度、航空ショーにオスプレイが参加しています。ロンドン上空も飛んでいます。誰も危険な航空機扱いはしませんでした。
- オスプレイのアメリカ本土での低空飛行訓練の様子。