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U-20女子ワールドカップに臨む21名を発表!過去最難関の「高地」と過密日程を勝ち抜けるか

松原渓スポーツジャーナリスト
過去のU-20W杯で実績を残してきた日本(写真:アフロ)

【幅広いカテゴリーから選ばれた21名】

 今年8月31日から9月22日まで、コロンビアで開催されるFIFA U-20女子ワールドカップに向けて、大会に臨むU-20日本女子代表(ヤングなでしこ)のメンバー21名が発表された。

 チームを率いるのは、U-17年代からこの世代を率いてきた狩野倫久(かのう・みちひさ)監督。チームは昨年3月にU-19日本女子代表として立ち上げられ、今年3月にはアジア予選を兼ねたU-20女子アジアカップで準優勝。上位4カ国に与えられるワールドカップ出場権を獲得した。

 日本はこの世代で指折りの強豪国だ。U-20女子ワールドカップは2012年大会(日本)で3位、2016年大会(パプアニューギニア)で3位、2018年大会(フランス)で優勝、前回2022年大会(コスタリカ)は準優勝。しかし、近年はA代表とともにスペインの台頭が著しく、U-17世代でもその壁が立ちはだかる。加えて、過去2回の優勝経験を持つ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がコロナ禍を経て復活の狼煙を上げ、ブラジルやコロンビアといった南米勢も女子サッカーの強化を進めている。開催国数は前回大会の16から「24」に増加しており、新興国が台頭する可能性もある。

 その中で、日本はチャレンジャーとして、再び王座に挑む。

 今回選出された21名は、プロのWEリーグから14名、なでしこリーグから1名、NWSL(米女子プロサッカーリーグ)1名、スウェーデンリーグ2名、クラブ(ユース)1名、国内大学1名、アメリカ大学1名と、幅広いカテゴリーから選出された。うち16名が3月のアジアカップを戦った選手たちだ。

アジアカップは準優勝だったヤングなでしこ(写真提供:AFC)
アジアカップは準優勝だったヤングなでしこ(写真提供:AFC)

 この世代の候補で、先のパリ五輪では主力級の存在感を示した藤野あおば(20)、浜野まいか(20)、谷川萌々子(19)、古賀塔子(18)の4名は、今大会は招集外となっている。U-20女子ワールドカップはインターナショナルウィーク外で、各国リーグが通常通りに開催されるため、各クラブの協力なしに選手を招集できない。

 とはいえ、10代での海外挑戦や国内リーグプロ化がもたらした若い世代のレベルアップやタレントの突き上げによる選手層の強化などは、長い目で見ればポジティブな変化だ。

「パリ五輪の方に入った(4人の)選手は、活動の日数やクラブとの調整、コンディション面も含めて、JFA(日本サッカー協会)とも話をして、そちら(クラブ)を優先したほうがいいだろうということで、エントリーから外しました。その選手たちがいないことで、他の選手たちが活躍し、なでしこジャパンを後押ししていく目的もあります」

 狩野監督の言葉通り、A代表で活躍した4人の存在がこの年代の選手たちの刺激になり、次のヤングスターが誕生するかもしれない。

 3月のアジアカップでは、チームコンセプトでもある「即奪(奪われたらすぐに奪い返す)」とハードワークを徹底。ワンタッチパスを交えた流動的なコンビネーションや個々のシュートレンジの広さを生かし、攻撃的なサッカーで順当に勝ち上がった。しかし、決勝では北朝鮮の徹底したクロス攻撃に屈することとなり、4連覇の夢を絶たれた。

 それから5カ月で、チームは世界基準を目指してさらに積み上げてきた。狩野監督はチームの最大の武器として「シンキングスピードの速さ、予測、判断」を挙げ、5カ月間の強化の成果をこう説明した。

「フィジカルフィットネス(筋力、持久力、柔軟性などの基礎的な能力)の強度を上げ、それらに対応していくフィットネスレベル(身体能力)の向上は、各チームで取り組んできてもらいました。また、相手のプレッシングの中でいかにマイボールの時間を増やし、高い位置で即時奪回してサイドでチャレンジできるか。それらを新たなチャレンジとして見せていきたいと思います」

【大会史上“最も高い場所”で行われる大会】

 今大会は、ライバル以外にも日本の前に大きな壁が立ちはだかる。それが開催地の“高さ”だ。グループステージの3試合が行われる首都・ボゴタは標高2600m。世界で3番目に標高の高い首都で、そのほか2会場のメデジン(標高約1500m)、カリ(標高約1000m)も高地である。

「ボゴタは富士山の5号目、6号目にあたります。今までのアンダーカテゴリーは、2017年にU-17がメキシコで戦ったのが1900mぐらい。我々が今までにない標高でやることになります」(狩野監督)

狩野倫久監督
狩野倫久監督写真:森田直樹/アフロスポーツ

 高所では気圧が高くなるため空気が薄くなり、酸素量が足りなくなると頭痛や食欲低下、倦怠感や睡眠障害など、高山病のリスクが高まる。

 加えて、今大会は出場国数が増えた影響もあり、決勝までの試合数が前回大会までの「6」から「7」に増加。中2日の連戦という過酷なスケジュールだ。

「(開幕の)約2週間前から現地に入って、現地でコンディションを慣らします。フィジカルやメディカルの観点から、国立スポーツ科学センターや日本オリンピック委員会も含めて話をした中では、少しでも高所順化して体を慣らし、高山病にならないよう、心肺機能を合わせてコンディションを整えていきます」(狩野監督)

標高2600mに位置するボゴタの街並み
標高2600mに位置するボゴタの街並み写真:ロイター/アフロ

【A代表に続く課題と向き合う大会に】

 日本はグループステージでニュージーランド、ガーナ、オーストリアと対戦する。その先には、前回大会王者のスペインや、最多優勝を誇るアメリカやドイツ、育成年代から巻き返しを期すフランスやブラジルなどが待ち受ける。日本はA代表を兼任するテクニカルスタッフが帯同しており、対戦国については入念な分析を進めているだろう。

 パリ五輪でベスト8の結果だったなでしこジャパンは、3年後のワールドカップに向けて、ボール保持率を高める必要性を突きつけられた。育成年代ではボールを保持できる試合がほとんどだが、A代表に繰り上がる段階で、各国は一気に組織力や戦術レベルを高めてくる。その課題に対して、日本もこの年代からさらに綿密な落とし込みをしていく必要があるだろう。WEリーグのテクニカルアドバイザーも務める狩野監督は、この課題について次のような指針を示している。

「この課題は、日本女子(のカテゴリー)全体でどのようなフットボールを展開していくかということも含めて重要な議論になると思います。アンダーカテゴリーから判断やテクニック、運動量、関わり、アグレッシブにゴールを目指すところは男女関わらず日本の良さとして積み上げてきたと思います。そういった部分を世界(の強豪国)を相手にしても恐れず展開できるかが、マイボールを少しでも増やして相手を上回っていく一つ(の方法)なのではないかと思います。(相手国の)プレッシャーの強度やスピードが、フィットネスレベルも含めて上がってきているのは間違いないので、そういう部分をいかに掻いくぐるかということが重要なポイントになると思います」

 なでしこジャパンで活躍する選手たちにとって登竜門とも言える今大会。個々のスキルや強さとともに、組織としてどれだけポゼッションの質を高め、意図的にゴールへの道を作り出せるか――。日本女子サッカー界の未来を担うヤングなでしこたちの躍進に期待したい。

 今大会は、「FIFA+」(無料)でライブ中継(配信)される予定だ。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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