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大泣きの子供に、ママが1%でも出来ること

宮下幸恵NY在住フリーライター

子供が突然火がついたように泣き出して困り果てること、ありますよね。

真冬並みに冷え込んだ先日の朝、我が家がそうでした。ニューヨーク州内のマンハッタンに比較的近い地区に住む私たち一家。3歳の娘が通うプリスクールでは、今週「Spirit Week」と名付けられ、毎日学校に着ていく洋服にテーマがありました。

例えば、月曜はクレイジーヘア。学校内にはピザの形をした帽子をかぶったり、クラスメートの男の子はブロンドの髪を(たぶんスプレーで)染めたり。普段からハロウィン的な要素満載なのはさすがアメリカ!

娘が泣き叫んだのは、「Dress like your favorite book character」、『本の中の登場人物になりきっちゃおう!』というテーマの日で、紆余曲折を経て(これが伏線・・・)ミッフィーのTシャツを着て行った時でした。

でも、学校に着くなり、クラスメートの女の子のダウンコートからのぞくのは、光沢のある水色のドレスの裾・・・。これだけ見れば、誰でも何か分かるあのドレスです。そう、エルサ!!!

親は飽きても、まだまだ続くアナ雪ブーム。それを見るなり、娘の『怒りスイッチ』がオン。

「ドレスがよかったの!エルサのドレスーーーーー!」

突然泣き出し、わめき散らし、外に出ようともう必死。かろうじて抱っこして、「そうか、ドレスが良かったんだね。エルサのドレスが良かったんだね」と気持ちを受け止めようとしました。コーチングで言う『承認』です。相手の『ありのままの気持ちや姿』を受け止めるんですね。でも、まーったく私の声なんて全然聞こえてない・・・。

見かねた学校のスタッフが、「明日はパジャマデーよ。プリンセスのパジャマ着て来れるわよ!!」なんて慰めてくれますが、まったくもって効果ゼロ!私たちの側を通り過ぎる親御さんも「どうしたの?」なんて聞いてくれますが、こういうときって、私と娘の2人だけの世界になってしまう感じ。「あー、恥ずかしい」「なんか惨め・・・」って思いがちだと思います。

でも、コーチングを子育てに生かすマザーズコーチジャパンの新米コーチでもある私は、外野の反応は気にならず、惨めだとも思いませんでした。まず、子供の気持ちを受け止めようと。そして次の一手を考えようと。

もし、ドレスを着たかった娘の気持ちを無視し、学校に行くことだけに全精力を注ぎ、「ミッフィーで納得したんだから着てなさい!」。「しょうがないでしょ!遅れるから早く行きなさい!!」と逆ギレしていたらどうでしょう? きっと娘は、「私の気持ち、誰も分かってくれない」「いいんだ。どうせ私なんて」と自己肯定感が低くなったかもしれません。

私は気持ちを受け止めました。第一歩はクリア。でも・・・。ここから、親のエゴが出てしまったんですよね〜。

娘のクラスは2階にあります。階段をのぼって教室まで行かないといけません。泣き叫ぶ娘を抱っこしながら階段をのぼります。のぼったところで座り込む娘。

私「そうか、そんなにドレスが良かったんだね。マミー、家に帰って取ってくるよ」

娘「ヤダーーーーーー」

(いくらスクーターとはいえ、家に戻ってまた学校に来るなんて結構な距離だし、途中で『もういい!』とか泣き叫ばれても困るしと、フツフツと私にも怒りが・・・)

私「10ブロックもスクーターで戻って帰って来れるの?来れないでしょ!!」

(出ちゃいました、大きな声が)

娘「もどるうーーーーー」

私「まず荷物を置いてこよう」

泣き叫びながらなんとか教室まで行くも、ジャンパーを脱ぎません。チャックに手をかけようものなら、「ヤダーーーーーー!」。

教室に入ってもクラスメートはエルサだし、先生やアシスタントの先生が代わりになりそうな衣装を見せてくれてもダメ(教室に宇宙飛行士やら消防士の衣装があってビックリ)。ここで、私が「家に取りに帰るから、それまで待てる?」と聞くと「うん」と。家にドレスを取りに帰ることにしました。

学校を出て早足で家に戻る途中、暖かい教室のなかで1人だけスノースーツ上下を着込んでいるのだろうか、まだ泣いているんだろうかと思うと、胸がザワザワザワザワ。そんな時、ある言葉を思い出しました。

先日、私のコーチがママ向けコーチングのクラスのなかで言っていた言葉。

「100%あなたは悪くない。だけどもし、1%でも出来ることがあったとしたら、それは何ですか?」

直接子育てには関係のない例をコーチングするなかで出てきた質問ですが、これが今の自分にも当てはまるんじゃないか、と。

泣き叫ぶ娘を前にして、私が1%でも出来たこと。それを考え始めると、次から次へと「たられば」が湧いてきます。

娘の体力では、もう1往復、学校と家との往復が出来ないと決めつけてしまったこと。

「もどるーーーー」と言った時に、「一緒に戻ろう」と言えばよかったこと。

実は前夜「一休さんがいい」と言う娘に、「坊主のカツラもないし、衣装だって作れないし」と私の面倒臭さを優先し、さりげなく希望を却下してしまったこと。

1%でも出来たことを考えるだけで、不思議と気持ちが落ち着き、自分たちの状況を客観視できるようになりました。泣き叫ぶ子供を前にすると、つい子供の感情にこちらの気持ちも「反応」してしまって大声を出したり、力で黙らせようとしてしまいがち。そうではなく心で「対応」したら、そもそも私が娘の『一休さん案』を却下しなかったら、2人で少しでも似てる衣装を紙で作ったら・・・。結果は違ったかもしれません。

エルサのドレスに着替えクラスに戻る娘。
エルサのドレスに着替えクラスに戻る娘。

息急きかけてエルサのドレスにティアラを持って学校に戻ったら、ちゃっかり普通に過ごしてた娘・・・。エルサのドレスを着ていたクラスメートのママが、娘に別のプリンセスの髪留めを貸してくれて、機嫌が治ったそうです。それでも、私の顔を見るなり、目と口を大きく開け「!」と、パッと明るい表情になったのは忘れられません。“たられば”はいっぱいあるけど、この表情をしてくれただけで良かったかな。

もし、子供が突然ぐずりだしたり、大泣きし始めら・・・。

あなたに1%でも出来ることはありますか?

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでコーチングの手法を学び、メンタル/ライフコーチとしても活動。書籍では『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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