貯金者の権利が消える郵便貯金が急増している問題は解決できるのか
一定期間が過ぎて貯金者の権利が消える郵便貯金が急増している問題で、総務省は1日、消えた貯金の返還を求める人への対応について見直すよう、郵政管理・支援機構に求めたと発表した(1日付朝日新聞)。
これは民間銀行では休眠預金になっても預金者保護の観点から返金に応じているのに対し、旧郵便貯金法により満期から約20年で権利が消えてしまうことに問題があったと思う。これは「権利消滅」とも呼ばれている。
念の為、民間銀行や信用金庫にお金を預ける場合は「預金」と呼び。 ゆうちょ銀行であるとか、JAバンクにお金を預ける場合は「貯金」と呼ぶ。
ゆうちょ銀行のサイトに、「権利消滅」とは何ですか?というページがある。
「権利消滅」とは何ですか? (ゆうちょ銀行)
https://faq.jp-bank.japanpost.jp/faq_detail.html?id=10217
2007年(平成19年)9月30日以前にお預け入れいただいた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金について、満期後20年経過した際に「権利消滅のご案内(催告書)」をお送りし、その後2か月を経過してもなお、払戻しのご請求等がない場合は、旧郵便貯金法の規定により、お客さまの権利が消滅し、払戻しが受けられなくなりますので、満期後は、お早めにお手続きをお願いします、とある。
民間の銀行では、お金の出入りが10年以上ない口座を「休眠預金」にして使えなくすることはあるものの、預金した人が請求すれば払い戻しに応じてもらえる。このように預金が消えることは一般の民間金融機関ではない。
権利消滅を定めた旧郵便貯金法が、民営化前の定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金には適用されることで「権利消滅」が発生するが、民営化前の「通常郵便貯金」はゆうちょ銀行に引き継がれていて、こちらは権利は消えない。民営化後にゆうちょ銀行へ預けた貯金も消えることはない。
利消滅の2カ月前に催告書を発送しているが、引っ越しなどで住所が変わった例も多数あったとみられる。また郵便貯金については「名寄せ」が必要とされていたが結局、それはできなかった。同一人物が複数口座を保有していたケースも多くあったとみられ、その管理が民間銀行よりもより複雑化していたことも考えられる。
もし権利が消えた貯金を返す場合の基準などについて見直した場合には、過去に消失してしまったものの救済措置なども必要になろうが、いろいろと不公平感が出てしまうことも予想される。
2011年には認知症患者の家族から抗議を受けて「真にやむを得ない場合」は権利の復活を認めた。これは天災や長期入院といった限定的な理由に限られることで、救済の事例割合は低下してきている。
「真にやむを得ない」という基準があいまいで不透明だとの批判が出ていたが、それが明確化されたとしても、そもそも知らぬうちに権利が消失される事例などは多く存在してしまうとみられる。これはなかなかこれはなかなか難しい問題となりそうである。