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JR東日本渋谷駅は、なぜ運休をともなう工事を5回も実施したのか? 結果、大きく駅は変わった

小林拓矢フリーライター
5回にわたる線路切換工事を終えた渋谷駅を出る山手線外回り電車(筆者撮影)

 11月18日から19日にかけて、山手線は大崎~池袋間で一部運休をした。18日には外回りが運休、19日には内回りが運休となり、運休したホーム(と線路)で工事を行った。

 渋谷駅での運休をともなう大規模工事は、これが初めてではない。今回の工事もふくめて、5回も実施された。

 18日に筆者は、「マイナビニュース」の取材で5回目の工事の報道公開に行き、現場を見てきた。その際に、「これでようやく……」という思いを感じずにはいられなかった。ここまで来るには、長かったのだ。

5回の工事では、何が行われたのか?

 渋谷駅では工事が延々と続いていて、行くたびにどうなっているのかわからないと思う人も多いのではないだろうか。ときどきはJR東日本の渋谷駅を通る列車が運休になり、東京メトロ銀座線が運休になったこともあった。そこまでして渋谷駅はなぜ変わらなければならないのか、なぜ何度も運休してまで工事しなければならなかったのか。

 もちろん、渋谷駅周辺を再開発するためというのはその理由ではあるものの、鉄道までも大きく変わる必要がどこにあったのかという疑問が湧いてくる。

 端的に言って、JR東日本の渋谷駅は「不便」だったのだ。

 まず、埼京線ホームがとんでもないほど南側にあった。山手線のホームは、内回り・外回り別々に設けられていたものの、どちらも狭かった。

 しかも埼京線ホームは、もともとホームはなく、貨物線を旅客線にしようとした際に設けられたホームだった。あのあたりは貨物駅だったのだ。

 ではなぜ埼京線ホームが最初から山手線ホームのとなりになかったかといえば、東急東横線の渋谷駅が以前は埼京線ホームの場所の一部となって、そこにホームをつくることができなかったからである。

 東急東横線のホームが地下化し、東京メトロ副都心線と直通することで、東急東横線の旧渋谷駅の土地に余裕が生まれる。そのことから渋谷駅周辺の大規模改良工事は始まったのだ。

渋谷駅の工事は長く続いている
渋谷駅の工事は長く続いている写真:イメージマート

 ここで東京都や渋谷区といった行政、JR東日本、東急グループ、東京メトロがそれぞれの課題を解決するために動き出す。

 東急東横線の地下化に始まる一連の鉄道関連工事は、玉突き的に改善策が実施されるということになった。その中で東京メトロは、狭い相対式ホームを広い島式ホームにすることを可能にした。

 いっぽう、課題が多かったJR東日本は、複数回の工事により、大規模に課題を解決することにした。それゆえに5回も工事をすることになったのだ。

 2018年の5月には、埼京線上りを東側の新設高架橋に切り替えた。これは、東急東横線の旧渋谷駅の土地が空いたからできたことだった。線路を切り替え、埼京線ホームを拡幅した。

 ここから次の工事までには、時間がある。この間の2019年12月27日終電から、2020年1月3日始発までの間、東京メトロ銀座線渋谷駅では旧ホームから新ホームへの移設が行われている。この移設により、銀座線渋谷駅ではホームが広くなった。

 話はJR東日本にもどって2020年5月には、埼京線下りの線路の高さを上げ、東側に横移動し、ホームを北側に設けることにした。これで埼京線の工事は終わり、山手線ホーム拡幅のための用地を確保した。

 2021年10月には、山手線内回りを東側に横移動し、山手線内回りホームを拡幅した。この工事から、山手線ホームの改良が始まった。

 2023年1月には、山手線外回りの線路が西側に移動し、山手線内回り・外回りを同一の島式ホームにした。その際に、外回りの玉川改札は廃止になった。

 ホームの拡幅はできても、地下の東西自由通路が狭く、勾配があるという問題が残っていた。

 そこで今回2023年11月の工事では、山手線の線路・ホームの高さを上げた。また若干、山手線ホームが北側へと移動した。

 なぜ、ここまでしなければならなかったのか?

渋谷駅線路切換工事は5回にわたって行われた(JR東日本プレスリリースより)
渋谷駅線路切換工事は5回にわたって行われた(JR東日本プレスリリースより)

駅の不便を解消するための工事だった

 渋谷駅で工事が延々と続いていて不便だ、という声は東京圏の鉄道利用者の間でよく聞かれる。しかし、渋谷駅で工事が始まる前から、渋谷駅にはどの鉄道においても不便なところが多々あり、それを改良しようとして工事が行われているというのが正しい見方である。

 もちろん、工事が長々と続き、その間不便であるというのはわかる。しかし工事が終わる2027年度の終わりころには、その不便は解消されることになる。

 2027年度ということは、2028年の3月まではいろいろと不便なのか、と思う人も多いかもしれない。いまは2023年の11月なので、ずいぶんと先だ、と感じる人が多いのもわかる。人手不足で工事が遅れる可能性もないわけではない。

 しかし、渋谷駅改良工事は、人が行き来しやすく、使いやすい駅をめざすためのものであるということを目的としている。意識して不便にしているわけではないのだ。それと街づくりが組み合わせられて、渋谷駅周辺では日々大工事が行われている。

切換工事の概要と渋谷駅の未来像(JR東日本プレスリリースより)
切換工事の概要と渋谷駅の未来像(JR東日本プレスリリースより)

 その中において、5回にわたるJR東日本の線路切換工事は、駅を便利にするための中心的な工事であったといえる。鉄道を止めてまで行うには理由があるのだ。

 この工事をやりきったことで、渋谷駅改良工事は山場を越えた。今後は、駅内の設備などを改良していくための工事が中心となる。

 なお、筆者が取材した「マイナビニュース」の記事は、次の2本である。工事中と工事後、それぞれの報道公開時のものである。どんな工事だったかは、こちらを見ていただきたい。

JR東日本、渋谷駅の線路切換工事を公開 - 運休を伴う最後の工事に

https://news.mynavi.jp/article/20231118-shibuyastation/

JR東日本、渋谷駅の線路切換工事完了 - 山手線ホームどう変わった?

https://news.mynavi.jp/article/20231120-shibuyastation/

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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