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大谷翔平に有利なルール変更も?!野球素人でも楽しめるHRダービー徹底観戦ガイド

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
HRダービー初出場で優勝の期待がかかる大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB単独トップで前半戦を終えようとしている大谷選手】

 すでに日本で大々的に報じられているように、エンジェルスの大谷翔平選手が現地時間の7月7日に行われたレッドソックス戦で今シーズン32号本塁打を放ち、2004年に松井秀喜選手が記録した日本人の年間最多本塁打記録を塗り替えることに成功した。

 この結果、本塁打タイトル争いでも2位のブラディミール・ゲレロJr.選手との差を4本に広げており、MLB単独トップの状態でシーズン前半戦を終えることがより濃厚になった。

 そんな今シーズンのMLB最強スラッガーが、オールスター戦の人気イベントであるHRダービーに出場しようとしているのだ。すでに米国でも大きな関心を集めているのは、誰でも想像がつくはずだ。

 日本でも地上波での生中継が決定していることもあり、そこで今回は、野球素人でも十分に楽しめる観戦ガイドをお届けしたいと思う。

【オールスター戦前日に行われるお祭りイベント】

 日本のプロ野球では本塁打競争と呼ばれ、オールスター戦の試合開始前に実施されているが、MLBのHRダービーは本戦前日に行われるお祭りイベントだ。

 グラウンドにはダービー出場選手のみならずオールスター戦出場選手も集結し、選手総出で特大本塁打の競演に酔いしれる。NBAでいうところのダンクコンテストと同じ趣で、毎年本戦に負けないくらいの盛り上がりを見せている。

 とりあえずHRダービーの雰囲気を感じ取って欲しいと思い、MLBが公開している2019年のHRダービーの動画を添付しておくので、是非チェックして欲しい。

 今年はコロナ禍の影響で多少の制限があると予想されるが、会場のクアーズ・フィールドは6月下旬からフルキャパシティのファンを受け入れており、観客席は満員のファンで埋め尽くされることになるだろう。

【8選手によるトーナメント勝ち上がり方式】

 もちろんHRダービーは本塁打の数を競うものだが、出場8選手による総数で勝敗を決めるのではなく、1対1の対戦を勝ち上がりながら準決勝、決勝へと進むトーナメント勝ち上がり方式になっている。

 つまり優勝するためには、1回戦、準決勝、決勝と、違う対戦相手に3回勝たなければならない。いくら1回戦、準決勝で本塁打を量産して勝ち上がったとしても、決勝で打てなければ敗れるケースもあるわけだ。

 実際2019年でも、ゲレロJr.選手は各ラウンドの記録を塗り替える本塁打を放ち決勝に進出しながら、決勝でピート・アロンソ選手に敗れ去っている。

 動画をご覧になった方は理解できると思うが、準決勝で繰り広げられたジョク・ピーダーソン選手との死闘が、ゲレロJr.選手の体力を消耗させてしまったことが敗退の一因になってしまったようだ。

 それだけ各ラウンドを如何に勝ち上がっていくのかも、勝敗を左右しているのだ。

【まず理解しておきたいルール変更】

 2019年のHRダービー動画を紹介しておいて恐縮なのだが、実は今年のHRダービーは2019年から多少ルール変更しているので、しっかり理解しておかねばならない。

 まず対戦時間が短縮された。2019年まではすべてのラウンドが4分間で実施されていたが、今年は1回戦、準決勝が3分間、決勝は2分間で行われる。選手の体力が考慮されたようだが、それだけ集中力が求められることになる。

 またボーナスタイムも変更され、2019年までは飛距離440フィート(約134メートル)以上の本塁打を2本以上放つと30秒間のボーナスタイムが与えられていたが、今年は475フィート(約145メートル)以上の本塁打1本で30秒間、2本以上でさらに30秒間のボーナスタイムが与えられる。つまりボーナスタイムを加えると最長で4分間与えられることになる。

 対戦時間が短縮された分ボーナスタイム獲得が重要になる一方で、ボーナスタイム獲得条件の飛距離が伸びたことで、これまで以上に飛距離が重要視されることになりそうだ。

 ちなみに同点による延長戦の戦い方はこれまで通りで、まず1分間の延長戦を戦い、それでも決着がつかなかった場合は3スイングずつのサドンデスに移行する(2019年のゲレロJr.選手対ピーダーソン選手の準決勝を参照して欲しい)。

【今年のルールは大谷選手に有利?】

 あくまで個人的な意見だが今回のルール変更は、大谷選手にかなり有利に作用するとみている。

 というのも、翌日の本戦で二刀流出場が決まっている大谷選手としては、HRダービーで少しでも体力を温存しておきたいところだ。まず対戦時間が短縮されたことが大きい。

 さらに今シーズンの本塁打数でシードが決まっているため、大谷選手は文句なしで第1シードに指名されている。各ラウンドはシード下位が先攻を務めることになっているため、大谷選手は常に後攻で戦えるわけだ。

 実は後攻の選手は対戦者より本塁打数が上回った時点で、制限時間に達していなくても終了することができるので、その分さらに体力の温存が可能になってくる。

 また今シーズンの最長本塁打で、大谷選手は出場8選手の中で1位の470フィートを誇っており、この点でも他選手以上にボーナスタイムを獲得しやすい状況にあるといえる。

【大谷選手に期待がかかる500フィート超え本塁打】

 今シーズンの大谷選手の最長本塁打が470フィートと聞いて、「おや?」と思った方がおられるはずだ。そうなのだ。ボーナスタイムの獲得条件である475フィートに達していないではないか。

 だがそんな心配は不要だ。実はMLBで最も標高が高い場所にあるクアーズ・フィールドは他球場よりもボールがよく飛ぶため、MLB屈指の本塁打量産球場として知られている。

 また公式戦では飛距離を抑えるため保湿装置で管理したボールを使用しているのだが、HRダービーでは保湿装置を使用しないことが決まっており、公式戦以上にボールが飛ぶことが期待されている。

 ちなみに各球場に追尾システムの「スタットキャスト(STATCAST)」が装備されて以来、本塁打の飛距離や打球角度、打球速度が即座に判明するようになった。2019年の動画を見ても、本塁打が出る度に瞬時に画面で紹介されているのが分かるはずだ。

 そこで知っておいて欲しいのが、同装置が活用にされるようになってからクアーズ・フィールドで記録された最長本塁打の飛距離だ。MLB公式サイトによれば、2016年にジャンカルロ・スタントン選手(当時マーリンズ)が放った504フィート(約154メートル)らしい。

 もちろん大谷選手も500フィート超えの本塁打を放つのは可能だと思うし、ぜひそれを期待したいところだ。

 皆さんもこの記事を読んだ上で、是非日本時間の7月13日午前9時から始まるHRダービーを堪能して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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