新型コロナの点滴治療を入院で受けると薬価約28万円に 4月1日から
新型コロナも「5類感染症」へ移行し、行政的にはインフルエンザと同じような扱いになったため、政府の助成は令和6年(2024年)3月末で終了し、4月1日から新型コロナにかかる費用は通常の診療と同じになります。つまり、抗ウイルス薬も自己負担割合に応じてお金を支払う必要があります。
政府からの補助が終了
これまである程度政府が補助してくれていた負担分は、そのまま国民のみなさんが負うことになります。これを機にしっかりと把握しておきましょう。
抗ウイルス薬は高額であったため、これまでは3割負担の方で9,000円が上限でしたが、今回を機にこの特例も撤廃されます(図1)。
通常の診療と同じように、3割負担の人は、医療費の3割を自己負担しなければいけません(図2)。
実際の自己負担額は?
少し話はそれますが、代表的な5類感染症であるインフルエンザにかかった場合、日本では抗ウイルス薬が処方されることが多いでしょう(図3)。最も処方されているオセルタミビルは4月1日から薬価が引き下げられ、3割負担の患者さんでは薬価1,116円に負担割合0.3を乗じて、335円で治療可能となっています。
しかし、新型コロナの場合、抗ウイルス薬の薬価が飛びぬけて高いのです(図4)。4月1日以降、外来で抗ウイルス薬を処方する際、3割負担の患者さんでは、パキロビッドで2万9,708円、ゾコーバで1万5,556円の自己負担が発生します。処方してもらうかどうか、ちょっと迷う水準の高さですね。
問題は入院を要する患者さんです。当院には今でも入院要請がありますが、ほとんどが新型コロナ肺炎に陥っている方です。
こうした中等症以上の場合、医療機関では点滴抗ウイルス薬のベクルリーを用いることが多いです。特に、症状が強い人や高齢者では錠剤やカプセルの抗ウイルス薬を使うことは現実的ではなく、点滴で5日間程度投与することが多いです。
ベクルリーの薬価はその他のウイルス薬よりも高く、4月1日以降薬価の引き下げが行われるものの、5日間点滴で薬価27万8,988円、3割負担の場合でも8万3,696円の自己負担が発生します。
新型コロナ肺炎を起こしている人は、すぐに退院できるわけではなく、入院が1~2週間におよぶことがよくあります。実はこの入院にかかる費用の補助もあったのですが、4月1日からなくなることが決定しています。
そのため、新型コロナに関してみなさんが負担する費用は4月1日以降、格段に高くなるのです。
高額療養費制度の限度額を確認しよう
年金受給のみで生計を立てている高齢者や、世帯所得が高くないご家庭であれば、高額療養費制度を活用することで上記ほどの自己負担額が不要のこともあります。しかし、現役並み所得の方が新型コロナ肺炎を起こして入院される場合、思っているよりも自己負担額が高くなることもあります。
そのため、ご自身が入院した場合の、高額療養費制度が適用される限度額を確認いただきますようお願いします(2)。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症 令和6年4月からの治療薬の費用について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001219096.pdf)
(2) 全国健康保険協会. 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)(URL:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/)