40年近くにわたるサラリーマンのこづかい対策の中身をさぐる(2020年公開版)
サラリーマンの多くは厳しいお財布事情の中にある。こづかい対策として、どのような分野の出費を節約しているのだろうか。その実情を新生銀行発表の「サラリーマンのお小遣い調査」(※)から確認する。
たばこや雑誌の価格が上がり、携帯電話料金も気になる中、限られたこづかいでやりくりするため、削れるものは削り、無駄なもの・優先順位の低いものは我慢する。サラリーマンに限った話ではないが、節約のターゲットになる項目は多様に及ぶ。「サラリーマンのお小遣い調査」では今件項目「こづかい対策として削ったもの、節約したもの」について、調査を実施した年の上位陣を掲載している。そのうち「昼食代」「飲む回数・飲み代(2項目統合、上位値のみ)」「タクシー乗車」「弁当・水筒持参(2項目統合、上位値のみ)」を抽出してグラフ化した。掲載が無い年の値は無視をし、値がある年のみを単純に線で結んでいるので、やや無理のあるグラフだが、大まかな動向はつかめる。
バブル崩壊を機会に、各値に大きな変化が生じている。今件項目では「タクシー乗車」「昼食代」が急降下の動きを示している。「昼食代」はその後持ち直しているが、「タクシー乗車」はほとんど下げたままで持ち直しを見せていない。この動きについて2012年に発表された白書では「タクシー乗車をひかえるのは当然の節約術として定着したから、あえて意識して回答するものでは無くなった」と説明している。いつも使っているものをひかえるのなら「節約した」と実感するが、普段から使わないものは「節約した」ではなく「当たり前」と認識する、あるいはこれ以上節約のしようがないとの解釈で、納得できる説明ではある。いわゆる「無い袖は触れぬ」。
「昼食代」は一時1ケタ台に落ち込むが(当時は選択肢が5つしか無く設問の事情による可能性がある)、再び上昇。意識的に昼食代を削っている認識が高いことが分かる。
また「飲む回数・飲み代」は漸減を続け、2014年では15.6%にまで落ち込んだ。グラフ化は略するが「こづかいの使い道として大きいもの」の項目では常にトップの位置にあった「飲み代」が、今世紀に入ってから「昼食代」「携帯電話代」にその座を明け渡しており、「タクシー代」同様に「節約するのは当たり前」の動きを見せつつあることが予想される(もっとも2015年以降は揺れを見せながらも増加を示しているが)。
2015年以降は一部の項目で持ち直し、つまり具体的に節約の対象としている項目への注力が増える動きを示している。タイミング的には消費税率の引き上げの影響が継続しているものと考えられる(実際、今調査の他項目では「消費税によるこづかいへの重圧は大きいまま」との結果が出ている)。
なお直近2020年における「こづかい対策・節約しているもの」の序列は次の通り。
「昼食代」は意識して節約対策をしている項目の最上位にある。毎日欠かさず昼食を取り、日々購入の際に頭を悩まし、しかも商品価格の動向や購入機会の変化など情勢が流動的である以上、「節約が当たり前」と思う状況にシフトすることは無い。また「弁当持参」以外に「水筒持参」もここ数年上位項目にその姿を見せており、2020年では「弁当持参」よりも高い値を示してしまっている。水筒の方が持参のハードルは低いからだろうか。飲食の面で出費を少しでも抑えようとする努力が垣間見られる次第ではある。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2020年分は2020年4月10日から14日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2717人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性841人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.7対59.3、女性は54.3対45.7。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。