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元大関・琴奨菊の秀ノ山親方が描く新しい断髪式の実現 NFTやVRなど最新技術を駆使

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
元大関・琴奨菊の秀ノ山親方(写真:日本相撲協会提供)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、しばらく花相撲ができていなかった角界。今年に入ってから、“断髪式待ち”をしていた親方衆の引退相撲が次々と開催されている。10月1日に断髪式を控えるのは、2020年11月場所限りで引退した、元大関・琴奨菊の秀ノ山親方。断髪式の来場者にはチケット半券をNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)でプレゼントすることで早くも話題になっているが、いったいどんな内容になるのだろうか。現在の構想などを伺った。

新しいグッズの楽しみ方が広がるNFT

メディアでたびたび話題となった、秀ノ山親方断髪式の「(チケット)半券特典NFT」。チケットを購入し、断髪式当日、会場に足を運んだ方限定で、スマートフォンを使って、デジタル上で「琴奨菊引退相撲記念チケット」をイメージした画像を保存することができる仕組みという。詳細は近日中に発表ということだが「角界にも新しいことを取り入れていきたい」と常々話す親方。こうした取り組みに踏み切った経緯を聞いた。

「新しい相撲の魅力を世界に発信することで、これまでと違う層のお客様にも相撲に興味をもってもらいたくて、やってみたいなという気持ちがありました。NFTに関しては、レコチョクさんにお声がけいただいて展開しています。いま話題のNFTと融合することで面白くなるし、普及にもつながるだろうと思っています」

来場者特典以外に、販売型のNFTも制作中。ひとつは「メモリアルNFT」と名付けられ、親方の入門から引退まで、その土俵人生の節目を集めた画像コレクション。各画像の裏面には、親方が幕内で勝利した全26の決まり手があしらわれている。琴奨菊ファンにはたまらない、デジタル上で楽しめる新しい形のグッズとなっている。

一方で、従来のグッズ展開にも力を入れる。

「NFTのような新しいものへの挑戦もしつつ、やっぱりリアルでのグッズやお土産も大事にしていきたい。新旧の価値観を融合させた新しい断髪式の形を実現していけたらいいなと思っています」

また、会場でもさまざまな工夫を検討中。目玉は、国技館地下の大広間で行う地元・福岡の物産展と、VRを駆使した体験型コーナーの設置だ。あらゆるところに、伝統と最新技術とが散りばめられた断髪式。「福岡への恩返しになればというのと、足を運んでいただく皆さんに少しでも楽しんでもらえれば」との思いが込められている。

秀ノ山親方が語る髷への思い

断髪式を控え、これまで土俵人生を共にしてきた髷への思いもひとしおな秀ノ山親方。引退して2年近く経ついまも、寂しさが強いという。

「力士たるもの、どこへ行くにも常に髷を崩さないようにと思い、いつもピシッと整った髷でいることを心がけていたので、そこに対して寂しい気持ちがあります。ただ、次のステップへ向けて、断髪式でそういう気持ちを置いていくことも大事。泣くことはないかなと思います」

(写真:日本相撲協会提供)
(写真:日本相撲協会提供)

新しい髪型は考えているのだろうか。これまでの人生で、坊主かちょんまげしかしたことがないという親方にあらためて伺ってみた。

「想像つかないですね。天パですし。でも、清見潟親方(元関脇・栃煌山)も天パを生かした髪型でカッコよかったですよね!皆さん断髪すると若々しくなるので、自分もそんなふうになれればいいなあなんて思います」

断髪後は、スーツではなくタキシードで登場予定。「二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)に、二所一門はみんなタキシードなんだよって言われたので」とのことで、現在採寸して作ってもらっているところだそう。

親方の「最後の一番」は、息子さんと一緒に取ることが決まっている。「息子もすごく楽しみにしていて、パパに負けないように頑張るって、まわしを締めて毎日稽古しています」と目を細める。

「約20年付き合ってきた髷。苦しいときもうれしいときも共に歩んできたちょんまげなので、寂しい気持ちもありますが、次のステップに向けた区切りとして断髪式を迎えますので、ぜひ足を運んでいただければうれしいです」

引退相撲では、親方の代名詞といえる「琴バウワー」も見られるかもしれない。10月1日(土)は、琴奨菊最後の雄姿を見届るチャンス。ぜひ多くの方に国技館へ足を運んでいただきたい。

断髪式の詳細(開催日時やチケット情報)

琴奨菊引退相撲事務局

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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