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お年寄り達は「もう限界」千葉県館山市、布良(めら)地区の惨状

堀潤ジャーナリスト
千葉県館山市の布良地区ではお年寄り達の生活が限界にきている(撮影・堀潤)

台風15号による甚大な被害を受けた千葉県館山市。高齢化率は39%で、県平均の26.8%を大きく上回る地域です。

中でも海沿いの集落、布良(めら)地区は特にお年寄りが多い集落で孤立しやすい状況でした。

今回の台風被害では布良に関する報道は限られていました。

昨晩、私のTwitterのダイレクトメールに、布良に祖母が住んでいるという女性から「取材で訪ねてほしい」と連絡があり、今朝、現場に向かいました。布良では停電などの影響で携帯電話も固定電話も通じない状況が続いています。

女性は祖母が暮らす街の様子を知るためにはSNSを通じて伝えられる断片的な情報に頼るしかなかったと言います。

館山市布良は、東京都心からアクアラインなど高速道路を使って房総半島を南に進み、およそ2時間半の場所にあります。

道路は既に復旧しており、一般道の一部が一車線通行に規制されるなどしていますが問題なく通行することができます。

館山市の中心部ではすでに携帯電話が復旧していますが、布良は今も電力と通信は遮断されたままです。一部では水道も止まったままです。台風発生から4回目の夜を迎えています。日中の暑さ、熱帯夜によって体力が奪われ「もう限界だ」と語るお年寄りもいます。か細い声で、絞り出すようにその言葉をつぶやいていました。

布良に到着して驚いたのは、まるで津波や地震の災害現場のような光景が広がっていたことです。屋根の瓦や屋根そのものが吹き飛ばされるなど状況が深刻です。停電が続く中、現場では「カビ」との格闘も始まっています。破れた壁や天井、窓から猛烈な勢いで雨が降り注いだため、畳がずっしりと濡れてしまいました。

お年寄りが自分たちで畳をあげる作業は大変しんどい作業です。

今も畳を敷いたままにしている方のご自宅を訪ねました。室内に入れていただくと玄関付近からカビ臭さに包まれていました。畳を踏むと靴下が湿るのを実感できるほどです。エアコンや扇風機が使えないためです。

このままでは、家がカビだらけになり傷んでしまう、将来住めなくなってしまうと家主の女性は焦りを募らせていました。「自衛隊が来てくれたら」とも語ります。森田健作千葉県知事は、既に自衛隊の派遣要請を出していますが、給水への対応が主で、布良のようなお年寄りが多い集落の住宅復旧のための派遣ではありません。

ありとあらゆる被害からの復旧を自分たちでやらなくてはいけません。しかし、台風被害から5日目を迎えようとする今、お年寄りの「自助」は、もう限界を迎えています。

現場では、お年寄り達がどのような過酷な状況に追い込まれているのかを知るために、堀が取材をした映像をぜひ見ていただきたいです。

10分間の動画でそれほど長くはありません。さらに、ツイッターを使って発信した現場の写真のいくつかも共有します。

ぜひ知ってほしい、そして行動につながればいい、そう思います。

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2021年、株式会社「わたしをことばにする研究所」設立。現在、TOKYO MX「堀潤LIVE Junction」キャスター、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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