ChatGPT、声高まる「規制の必要性」
昨年11月末に公開され急速に浸透するChatGPT。ビジネスや社会の変革を期待する声があがる一方で、規制を求める声が高まっています。
■ChatGPTとは
ChatGPTとはOpenAI社が2022年11月に公開した人工知能チャットボットです。従来の単語単位の指示ではなく、人と人が対話するような自然な文章を理解し、回答を出力するのが特徴です。
2023年3月にはより進化したGPT-4を採用した「ChatGPT Plus」が月額20ドル(約2,600円)で利用可能になりました。「ChatGPT Plus」を利用するとテキスト入力だけでなく画像入力にも対応可能になります。
ChatGPTは公開当初から大きな話題を集め、無料で利用可能なChatGPTはリリース後わずか2か月でユーザー数1億人を突破し米Microsoft社がOpenAI社に対して100億ドルを投資することが報じられるなど、機能面だけでなく今後の成長性でも注目されています。
■進む「規制すべきか?」の議論
急速に成長するChatGPTですが、利点ではなく「リスク」に着目する動きも出てきています。
・各国政府の対応
先陣を切ったのはGDPR等個人のプライバシー保護に厳しい欧州が発端となりました。イタリアのデータ保護当局が3月31日にChatGPTの一時的な使用禁止を発表。きっかけはユーザーの会話や支払い情報の漏洩が起きたことでした。
米国も4月4日にバイデン米大統領が欧州で禁止論が高まるChatGPTなどの高性能AIが国家安全保障に及ぼす影響について「潜在的リスクにも対処すべきだ」との認識を示しました。
日本でもこれらの他国の動きを受けて日本でも追随する方向にあるのか?という問いに対し、松野博一官房長官が「AIに関する動向の把握に努め、何らかの対応や検討が必要となる場合には、内閣府を中心に関係省庁が連携して取り組んでいきたい」とコメントしています。
また、日本では文科省が思考力低下等が懸念されることを理由にChatGPTの教育現場での活用について教育指針を作成すると表明しています。
なお、イタリア当局の動きをうけてChatGPTの運営元であるオープンAIは、AIの学習データに使う個人情報を減らす方針を示しました。
・イーロンマスク氏らIT業界の著名人
各国の政府だけでなくイーロン・マスク氏等、IT業界の有識者達も急速なAI技術の発展は社会に大きなリスクをもたらすとし、最低六ヶ月間AIシステムの訓練を停止するよう公開書簡を投稿しています。
■企業では情報漏えいが既に発生
韓国のサムスン電子ではChatGPTを利用した結果情報漏えいが発生したと報じられています。
・ソースコードの流出
開発者がバグが発生したソースコードをChatGPTにコピーし、ChatGPTに解決策を依頼したところ、ChatGPTの学習教材となった。
・議事録の流出
ChatGPTに議事録作成を依頼したところ、ChatGPTの学習教材となった。
社内データ流出のリスクを認識したサムスン電子は、緊急にChatGPTの各質問の容量を1024バイト以下に制限し、今後、罰則を課すことも辞さないとしています。
■企業でもChatGPTガイドライン作成等に着手する動き
日本国内の企業でも「ChatGPTの活用」を検討していると耳にする機会が増えました。一方、金融機関等のセキュリティへの配慮が求められる企業では「ChatGPTの安全な利用方法」の検討を始める企業も出てきています。
ChatGPTはこれまでのビジネスの在り方を大きく変える可能性を秘めているという点においては疑いの余地がありません。DXを掲げる企業にとって強力な武器になると予想されます。
しかし、ChatGPTという新しいリスクとも捉える必要があり、今後企業ではChatGPTの安全な取り扱いについて議論が進むと予想されます。