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乾癬治療に用いられる生物学的製剤とその効果 - 抗薬物抗体の影響と対策

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【生物学的製剤による乾癬治療と抗薬物抗体の発生率】

乾癬は、皮膚に炎症が生じ、皮疹やかゆみなどの症状が出る慢性の皮膚疾患です。近年、生物学的製剤と呼ばれる薬剤が乾癬の治療に用いられるようになりました。生物学的製剤は、免疫反応に関わるタンパク質を標的とし、乾癬の症状を改善させる薬剤です。しかし、生物学的製剤の使用により、抗薬物抗体と呼ばれる抗体が体内で作られることがあります。

抗薬物抗体は、生物学的製剤に対して体が抗体を作ってしまうことで発生します。抗薬物抗体ができると、生物学的製剤の効果が低下したり、副作用が出たりすることがあるのです。

最近の研究で、11種類の生物学的製剤における抗薬物抗体の発生率が明らかになりました。セクキヌマブ、エタネルセプト、ブロダルマブでは抗薬物抗体の発生率が低く、それぞれ0.49%、2.20%、2.38%でした。一方、リサンキズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ビメキズマブでは抗薬物抗体の発生率が高く、それぞれ21.93%、29.70%、31.76%、39.58%でした。

【抗薬物抗体が生物学的製剤の効果に与える影響】

抗薬物抗体ができると、生物学的製剤の血中濃度が低下し、十分な効果が得られなくなることがあります。TNFα阻害薬では、抗薬物抗体陽性の患者は陰性の患者に比べて、乾癬の症状改善率(PASI75)が約50%低下していました。一方、IL-17阻害薬では、高力価(1:1280以上)の中和抗体ができた場合にのみ、臨床効果の低下が見られました。

また、TNFα阻害薬とIL-12/23 p40阻害薬では、抗薬物抗体ができると血中薬物濃度の低下が明らかでした。抗薬物抗体が原因で効果が十分に得られない場合、医師と相談の上、別の生物学的製剤に切り替えることを検討する必要があるでしょう。

【抗薬物抗体が副作用に与える影響と対策】

抗薬物抗体ができることで、副作用が増えるという明確な証拠は得られていません。しかし、TNFα阻害薬とIL-23 p19阻害薬では、抗薬物抗体陽性の患者で注射部位反応が増加していました。特にTNFα阻害薬では、重度の注射部位反応の発生率が3倍に上昇していました。

抗薬物抗体の発生を減らすには、メトトレキサートの併用がTNFα阻害薬で有効であることがわかっています。また、インフリキシマブでは低用量(3mg/kg)よりも標準用量(5mg/kg)の方が、IL-23 p19阻害薬では間欠的投与よりも継続的投与の方が、抗薬物抗体の発生率が低いことが報告されています。

生物学的製剤を使う際は、抗薬物抗体の発生率と投与方法を考慮し、効果的で忍容性の高い薬剤を選ぶ必要があります。もし抗薬物抗体ができて副作用が出たり効果が低下したりした場合は、早めに医師に相談しましょう。適切な対処を行うことで、生物学的製剤をより安全に、より効果的に使うことができるはずです。

参考文献:

Xiaoying Sun et al. (2024) Formation and clinical effects of anti-drug antibodies against biologics in psoriasis treatment: An analysis of current evidence. Autoimmunity Reviews. 23, 103530.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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