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「盛田正明テニス・ファンド」の奨学生を経て、プロテニスプレーヤーへ転向した坂本怜は、本物か!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
プロ転向した坂本怜(写真右)と盛田ファンド名誉会長の盛田正明さん(写真/神仁司)

 ジュニアテニスプレーヤー・坂本怜(ITFジュニアランキング3位、9月16日付)が、9月20日にプロテニスプレーヤーへ転向した。

「ジュニアたちに僕が夢を与える側になった。僕を応援してくださる人に、僕がコート上で自分を出すことによって、笑顔になってくれたり、前向きな気持ちになってくれたり、そういう影響を出せる選手になりたいですね。それを達成するために、僕はグランドスラム優勝を目指しています」

 こう宣言した18歳の坂本は、ジュニア最後の年となる2024年シーズンに、オーストラリアンオープン・ジュニアの部シングルスで優勝、USオープン・ジュニアの部ダブルスで優勝、ITFジュニアランキング1位(2024年5月27日付)にもなった。さらに、2024年2月にはデビスカップ日本代表にも初めて選ばれ、将来を嘱望されている。

 坂本は、プロで活躍する錦織圭、内山靖崇、西岡良仁、望月慎太郎らを輩出した「盛田正明テニス・ファンド」の奨学生を経てプロ転向に至った。

 もともとは錦織や大坂なおみが、ワールドプロテニスツアーやテニスの4大メジャーであるグランドスラムで活躍していたのを見て刺激を受け、プロテニスプレーヤーになりたいと思ったという。

「盛田正明テニス・ファンド」の存在を知っていた坂本は、2021年に盛田ファンドへ自ら手紙を書いた。書類選考を通過して、日本で開催された選考会での練習マッチを行い、それをクリアすると、IMGアカデミーで2週間過ごし、海外のジュニア大会にも出場した。

「盛田正明テニス・ファンド」は、元ソニー副社長で、元日本テニス協会会長だった盛田正明さんが、70歳でソニーグループ退職後、私財を投じて作った奨学金制度で、プロテニスプレーヤーを志すジュニアプレーヤーの海外テニス留学を経済的にサポートする。

 選考会に合格した15歳の坂本は、プロになるという思いを秘めながら、2022年2月から、「盛田正明テニス・ファンド」の奨学金制度のサポートを受けて、アメリカ・フロリダにあるIMGアカデミーでの海外テニス留学を開始して、テニスの腕を磨いた。錦織と一緒に練習をする機会もあった。

 身長195cmで日本人離れした長身から繰り出されるサーブと、長い手足を駆使して放たれるフォアハンドストロークが武器だ。ただ、坂本本人が認めるように体がまだ細いので、プロ大会での連戦に耐えられるフィジカル強化は必須だ。リーチを活かしたショットが力強さを増していけば、ATPツアーレベルでやっていけるだろう。

 テニスでは、ジュニアで活躍したからといって、プロで成功するとは限らない。そのことは多くの人が知るところだが、坂本がプロとして“本物”であるかどうかは、自らの実力で結果を残して証明していくしかない。

 有明コロシアム(東京)で開催されたプロ転向会見には、「盛田正明テニス・ファンド」の名誉会長である盛田正明さんも同席した。盛田さんは、坂本が相手の弱点をうまく突いていけるかどうかを案じ、メンタル面で強くなっていってほしいと願った。

「錦織圭をはじめ、たくさんの選手を育ててきましたが、その中で途中でだめになった選手もたくさんいます。でも、坂本は、非常に厳しいジュニアの期間をくぐり抜けてプロになった。私は大いに期待しています。(坂本の)テニスに関しては、ほとんど心配していません。ただ、プロでは、自分が強くなるだけでなくて、(試合の中では)相手を弱く(弱点を突くなど)することもやらなければならない。そういうことに耐えながら、どれだけ自分の力を出していけるか心配しています」(盛田さん)

 9月23日の週に、東京・有明で開催される木下グループ ジャパンオープンテニス2024で、坂本は、シングルスで予選のワイルドカード(大会推薦枠)を、ダブルスで本戦のワイルドカードを獲得して、プロとして初めてのプレーを披露する。ちなみに、ダブルスのパートナーは、盛田ファンドの先輩である錦織で、公式試合で初めて組んでプレーする。

 プロとして初めての舞台で、多くのテニスファンの視線が坂本に注がれることになるだろう。そんな中で、どんなプレーを見せてくれるのか非常に楽しみだ。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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