ウクライナ映画「Babi Yar. Context」ホロコーストで3万人以上が銃殺された事件の証言
ユダヤ人受難の地バービ・ヤール
ナチスドイツによる600万人以上のユダヤ人やロマらを殺害した、いわゆるホロコースト。ナチスドイツが侵攻したウクライナではユダヤ人狩りは組織的に行われ、強制収容所に送られ、多くのユダヤ人が殺された。ナチスはウクライナで85万~90万人のユダヤ人を殺したと推定されている。1941年9月には、約34,000人のユダヤ人がキエフ郊外の谷間バービ・ヤールに集められ、射殺され、穴に埋められた。その後ユダヤ人がアウシュビッツなどの絶滅収容所に移送された後もロマ、ウクライナ人のレジスタンスらがバービ・ヤールで銃殺された。バービ・ヤールは現在でもユダヤ人受難の地として知られている。
貴重なデジタル史料としてのホロコースト映画
そのバービ・ヤールでの悲劇を描き、その証言などを集めたドキュメンタリー映画「Babi Yar. Context」がカンヌ映画祭で公開された。日本人には全く馴染みのない事件とテーマかもしれないが、「ユダヤ人受難の地」と言われるバービ・ヤールの事件について詳細に描いている。ウクライナ人の監督のセルゲイ・ロズニツァ氏は公開に先立って「重たいテーマと内容ですが、知っておかなければいけない歴史です。今回の映画で私たちの歴史を紐解くことができるでしょう。ナチスドイツはユダヤ人の墓石も全て破壊しました。その墓石を砕いて道路も作りました。"ここでいったい何がおきたのか?"と自分自身にも問いかけています」と語っていた。
戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。今回の映画「Babi Yar. Context」も貴重なデジタル史料である。
デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いたりしている。そのためホロコースト映画の視聴には慣れてる人も多く、成人になってからもホロコースト映画を観に行くという人も多い。
▼「Babi Yar. Context」の一部を紹介した動画
▼カンヌ映画祭に登場したセルゲイ・ロズニツァ監督