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自治体別待機児童数を厚労省発表。ワーストは世田谷、那覇、市川…3位の市川市は実質1,110人で落第点

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

昨年10月時点で待機児童は全国で47,738人。年々深刻になっている

新年度を迎え、待機児童の問題はより切実になっている。

待機児童問題については、これまでも高橋亮平(日本政治教育センター代表理事・元中央大学特任准教授・元市川市議・元市川市長候補)コラムでも『<待機児童ランキング>自治体は待機児童を解決する気があるのか!ワーストは世田谷・岡山・那覇・市川…』(https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashiryohei/20170117-00066658/)などを書いてきたが、年度末に厚生労働省が「平成28年4月の保育園等の待機児童数とその後 (平成28年10月時点)の状況について」を公表した。

厚労省による2017年4月1日現在の全自治体の待機児童数の公表はまだ先になるため、今回出されたデータを元に、現状どうなっているのかということを予想しながら、サンプルとして今回厚労省から示されたデータで、待機児童数514人の全国ワースト4位から、待機児童数711人の全国ワースト3へと不名誉なランクアップを果たした地元「市川市」のケースで具体的に見て行きたいと思う。

日本全体で見ると、待機児童数は2016年4月に23,553人だったものが、10月時点で24,185人増加し、ほぼ2倍の47,738人となった。

4月以降も年度途中に育児休業明け等により保育の申込みは増える一方で、保育の受け皿拡大は年度途中に少ないため、基本的に待機児童は増える構造にあるが、2015年10月と比較しても2,423人多い数だ。

「保育園落ちた日本死ね」と書かれたブログが話題になったのが2016年2月だが、その後、待機児童対策は優先課題としての認知は広がっているものの、実際には逆により深刻になっている事も分かる。

待機児童が全国で最も多かったのは世田谷区、次いで那覇市、市川市…

図表: 待機児童28年度50人以上自治体のその後の状況一覧

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出典: 厚生労働省が「平成28年4月の保育園等の待機児童数とその後 (平成28年10月時点)の状況について」から筆者作成

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待機児童問題の背景には、少子化であるにも関わらず保育ニーズの拡大による構造的な課題があるが、自治体による対策に温度差があるため、近隣自治体が積極的な対応を行う事で、地域間による格差が生まれる新たな問題が生まれてきていると言える。

厚労省が今回公表したデータで、1,137人と待機児童最多だったのは、昨年4月時点でも全国最多だった世田谷区だが、ほとんどの自治体が待機児童を増やしている中、2016年4月に比べて61人の減となった。

次いで、待機児童が多かったのが、227人増やし786人となった那覇市。

3位が197人増やし711人となった市川市だった。

逆に4月時点で2位だった岡山市は待機児童を78人も減らし651人の4位になった。

以下10位以内には、葛飾区、鹿児島市、江戸川区、大分市、品川区、西宮市、大阪市、町田市、高松市と並んだ。

市川市の認可保育園整備は67.5%しか進まず、待機児童は過去最高に

こうした中、厚生労働省のデータでも全国ワースト3位に浮上した地元市川市は、4月12日、2017年4月1日時点の待機児童数が昨年からさらに増えた576人になったと発表した。

市川市は昨年5月、過去最多となったことを受けて緊急対策プランを作成。認可保育所13園、分園1園の計14園の新規設置や駅前ビルなどを中心とした小規模保育所7園の開設などで1,012人分の定員枠を拡大し、大久保市長はこの事を成果に努力したが保育需要が急増した事を言い訳にしているようだが、こんな事は想定されていた通りであり、本当に想定すらできていなかったとしたら、相当能力がないか危機感がないかだ。

今回、待機児童数が昨年を抜いて過去最多になった事を受け、市川市は2018年度までの2年間で2,000人分の定員枠拡大を目指して計画を策定するとしているようだが、こんな予測もできない上に、その想定すら議会にも明らかにしてこなかった。

「大丈夫、大丈夫」「やれます、やれます」と言ってきて毎年できない現状の市長の発言を「今年こそは大丈夫だ」と信じろというのは、もはや限界があるのではないだろうか。

実際、昨年5月に慌てて作った市川市「待機児童対策緊急対応プラン」の進捗は、少し前のものだが合計1,200人→1,006人と83.8%しか達成できていない。

さらに問題はその内訳だ。

1.積極的な小規模保育事業所の設置14施設200名→147人(73.5%)

2.いちかわ保育ルームの設置3施設50名→51人(102.0%)

3.認可保育園の整備15施設800人→540人(67.5%)

4.既存保育園における受け入れの拡大150人→188人(125.3%)

5.私立幼稚園における預かり保育の拡大3施設→80人(プランに目標値なし)

数値を押し上げているのは、新たに受け皿として保育園を作ったのではなく、既存保育園における「数字上」の「定員」を多くしただけのもので、これだけが目標を大きく超えている。

もう一つが、そもそも数値目標も掲げられていなかった「+α」の部分である私立幼稚園の預かり保育の拡大での80人である。待機児童解消のために多様になりつつある保育ニーズに応えるために様々な施策を打つ事は否定しないが、後でも示すように待機児童の根幹は0歳児から2歳児までにあり、その意味でも幼稚園の預かり保育で解消できる事は100%ない。

「一生懸命対策をやったのですが…」と言い訳をするために、「数字を少しでも大きく見せる」ためにと全部をごっちゃに見せたくなる気持ちは分からなくはないが、真剣にこれを対策のメインだと考えていたのだとするとお粗末過ぎる。

この「待機児童対策緊急対応プラン」の本丸は間違いなく「認可保育園の整備15施設800人」であったはずだが、この段階での結果540人(67.5%)。

5月に作った計画が3月時点で60%台というのは落第点という以外にない。

県内近隣自治体との比較においても市川市だけが増加の一途をたどっており、その責任は大きく、2016年における人口の移動を見ても、市川市だけが保育対象年齢の人口が極端に転入超過担っていることも分かる。

図表:待機児童数に関する市川市と県内近隣自治体との比較とその推移

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出典:千葉県待機児童調査から筆者作成

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図表: 保育対象年齢の転入超過数

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出典:総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

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市川市の実質的な待機児童は1,000人を超えている

図表: 市川市内待機児童発生状況一覧

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出典:市川市「申請者数及び入園状況一覧」より筆者作成

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待機児童は今年も576人しかいないと言っている市川市だが、実際に保育園への入園を希望して第一希望には入れない「潜在的待機児童」も含めると待機児童は1,110人もいる。

市民に分からないように、少なく見える数字を公表しておこうというのはどうなのだろうか。

ちなみに市川市は、2016年4月14日に行われた待機児童解消に向けた緊急対策会議に待機児童の多い自治体として呼ばれ、わざわざ市長自ら出席しているのだが、この会議での厚労省への提案として市川市は、「待機児童数の算定基準の統一」として、「待機児童数を少なく見せることはせず、申請者数から認可保育園へ入園したものを引いた数で統一するべきである。」と提案している。

こうした数字を議会にすら報告していないようだが、国にご丁寧に提案までしときながら、自らがすべきだと言っている数字を公表できないというのはどういうことなのだろうか。

市川市の現状をデータで見れば、その課題は半数以上を占める1歳児であり、次いで2歳児、0歳児である事、地域別にみると深刻なのは「市川駅南」、「妙典」、「行徳」、「中山」、「本八幡駅南」、「八幡」の順である事などはすぐに分かる。

参考までに、各保育園ごとの待機児童の発生についても共有しておく。

問題を明確化させた上で、その解決策を明確にする必要がある。

解決する事を真剣に考えるのであれば、もっとしっかり考える必要があるだろうし、少なくとも真摯に対応しようというのであれば、途中計画を含めて、常に市民に対して説明責任(アカウンタビリティ)を果たしていく事ぐらいはしてもらいたいものだ。

少なくとも市川市においては、大久保市政は赤点と言えそうだ。

今回は市川市の事例で具体的に紹介したが、他地域における待機児童問題を考える際にも参考になるのではないかと思う。

図表: 市川市内待機児童発生状況一覧詳細(北部)

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出典:市川市「申請者数及び入園状況一覧」より筆者作成

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図表: 市川市内待機児童発生状況一覧詳細(中部)

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出典:市川市「申請者数及び入園状況一覧」より筆者作成

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図表: 市川市内待機児童発生状況一覧詳細(南部)

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出典:市川市「申請者数及び入園状況一覧」より筆者作成

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日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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