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【名古屋市】閉店の危機…60年以上愛される串かつの老舗が休業へ。名物馬肉の串かつは、なくしたくない味

まなびと地域情報発信クリエイター(名古屋市)
名物・馬肉串かつ

名古屋市北区の『菊井かつ 黒川店』は、60年以上地域で愛されてきた串かつの老舗です。
串かつといえば、豚や牛を思い浮かべる方が多いと思いますが、菊井かつの看板メニューは馬肉の串かつ。
先代からの教えにより、テレビ取材は断り続けた北区の隠れた名物です。
そんな菊井かつ黒川店が、2024年3月いっぱいで2024年3月25日から休業するとのこと。(3月24日が最終営業日とその後お知らせがありました)
休業の知らせを受け、女将の兼松さんにお話を伺いました。

菊井かつの名物・馬肉の串かつは唯一無二

菊井かつの歴史は長く、西区菊井町にあった本店は戦後から、黒川店は昭和37年から営業を開始し、庶民の味として親しまれてきました。
本店は2014年秋で閉店してしまいましたので、現在は馬肉の串かつが食べられるのは、黒川店だけとなっています。

今も馬肉に一本一本手作業で串を打ち、特製のバッター液を使用、昔と変わらぬ菊井かつの味を守り続けています。
また名古屋ではみそ串かつのイメージが強いですが、こちらではウスターソースでいただきます。
愛知県清須市の太陽食品の日乃鳥ソースを使用してるのも創業当時からのこだわり。
甘すぎず、酸味がまろやかな日乃鳥ソースは馬肉の串かつとの相性が抜群で、切り離せない存在なのだとか。

ランチタイムにお邪魔したことがありますが、揚げたては衣サクサクで絶品。脂が少ない赤身なので、あっさり食べ飽きない味です。
昔に比べれば値上げされたものの、単品5本440円とまだまだ良心的な庶民価格でした。

長く通う地元民はもちろん、この味を求めて県外からもお客様がいらっしゃるそうです。(遠い所では長野県から、月一のペースで来店する80歳代のお客様も!)

休業の要因は店舗の老朽化と従業員の高齢化

外観
外観

黒川店は地下鉄黒川駅から1分ほどの駅近ですが、バスターミナル側で、大通りから一本路地に入ります。
赤い文字で書かれた菊井かつの看板が目印です。

小上がり席
小上がり席

昭和37年から営業している店舗は外観も年季が入っていますが、店内はさらに昭和の風情たっぷり。
カウンターと小上がり席、奥左手に座敷があります。

きちんと整えられており、清潔感はあるものの古さは否めません。
『この昭和な感じがいいと言って下さる方もみえますが、カウンターなんかも傾いてきてしまって…』(女将の兼松さん)

休業の要因の一つは、建物自体の老朽化だそうです。

看板娘は81歳!従業員の平均年齢は約70歳。

菊井かつ本店の店主ご夫妻
菊井かつ本店の店主ご夫妻

話を伺った兼松さんは2014年秋に閉店した菊井かつ本店の店主の娘さん。
現在は黒川店の女将として、先代の味を守り続けています。

従業員は全員女性。平均年齢は約70歳にもなるそう。
30年以上勤める看板娘の「みっちゃん」にいたっては今年81歳と大ベテランです。
菊井かつの家庭的で懐かしい雰囲気は、このお母さん方が醸し出しているのでしょう。
常連さんや顔なじみのお客様も多い中、初めてお邪魔したときも分け隔てなく、温かいおもてなしをしてくださったのを覚えています。
ただ、ベテラン揃いなだけに、1人抜けることも大きな痛手。新しく求人を出してもなかなか人が集まらない現状です。
高齢化と人手不足は年々深刻化し、休業の大きな要因となってしまいました。

取り巻く環境は厳しい

コロナ禍を経て、客足は戻り切っておらず、物価の高騰、近隣への大手飲食店の出店など、取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。

飲食店の発信の手段として主流となったSNSになかなか時間を割けず、不慣れなことも時代についていけていないと感じている様子。

休業という苦渋の決断に至ったそうです。

きっとこのまま閉店の流れなのだろうと思いつつ、「休業」という表現をされたのが気になり、存続の可能性はないのかお尋ねしました。

『ずっと、なんとかならないか考えてきたんですけどね…』(兼松さん)
様々な道を模索したそうですが、やはり従業員が高齢となった今、後継者不在では難しいとのことでした。

しかし、もし人手や後継者が見つかれば存続の可能性は0ではないとのこと。

『長年愛してくれるお客様のためにも、この味は残したい…』(兼松さん)

閉店ではなく、休業とおっしゃったのは最後まで諦めたくない思いが込められているように感じました。

なくしたくない庶民の味

「子どものころに家族で食べた思い出がある」「若いときは仕事帰りによく寄った」そして「ずっと通い続けている」
そんなお客様も多いのではないでしょうか。
ただ、おいしいとか安いというだけでなく、この街の人たちの記憶に残っている味なのでしょう。
それが3月中に無くなってしまうかもしれません。
菊井かつの味を知る方も、気になっていたけど行ったことはない方も、ぜひ今のうちに足を運んでいただきたいと思います。

【店舗情報】
店名 菊井カツ 黒川店
住所 名古屋市北区敷島町10
定休日 月・火
営業時間 昼11:30~14:00 (L.O13:30) 夜17:00 ~20:30 (L.O19:45)
日曜日は夜営業のみ
・情報は取材当時のものです

お問い合わせ 電話番号 052-914-6428、052-981-7758
菊井かつ公式インスタグラム

地域情報発信クリエイター(名古屋市)

名古屋市在住。地元がずっと元気であってほしいから、頑張るお店や人を応援しています。日常生活の中で感じられる等身大の町の魅力を発信したいと思っています。

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