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「被曝させながらウラン密輸」金正恩の収容所に新たな噂

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮には現在、わかっているだけで8カ所の管理所(政治犯収容所)が存在する。拷問や公開処刑など、あらゆる人権侵害が横行する「地獄の一丁目」である。そのうち、社会安全省(警察庁)が運営する、黄海北道(ファンヘブクト)の平山(ピョンサン)管理所は2021年に新設されたものだ。

 首都・平壌郊外の勝湖里(スンホリ)にあった管理所が閉鎖され、特権層を収容する労働鍛錬隊(軽犯罪者を収監する刑務所)になり、その人員の一部が平山に移送されたようだ。

 この平山の管理所だが、デイリーNKの内部情報筋は「基本的にウラン鉱石を掘るための管理所」だと説明する。北朝鮮には5つのウラン鉱山があるが、平山には鉱山とウラン精鉱製造施設もある。

 平山の管理所には現在、1万1000人が収容されている。2021年4月、デイリーNKの高位情報筋は、この管理所に建物の新設工事が行われていると伝えている。それまで3000人台だった収容人数が4倍近くに増えたのは、ウラン鉱山で働く労働力確保のためと見られている。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

 彼らは、極めて劣悪な環境の中での強制労働に苦しめられている。以下は、情報筋の証言だ。

「坑道の入口から数十メートルまでは坑木(坑道を支える木製の柱)が両側にあって歩いて入れるが、そこから先は地面に座った姿勢で尻を引きずりながら進み、さらに奥は這って入らなければならない」

「坑道の入口には先生(看守)3人が武装して警備に当たっており、(収容者が)中に入って鉱石を掘り、リュックに詰めて出てくるまで見張っている。労働時間は1日12〜16時間で、延長作業は20時間まである」

 被曝の可能性もあるが、北朝鮮では一般の労働者にすら安全装備が与えられないことが多く、管理所の収監者にそんなものが提供されるわけがない。

「安全装備といえるのは、管理所が1年に2回、夏季と冬季に作業服を与えるくらい。1週間もせずにほつれてくるが、布をあてて着続けている」(情報筋)

 管理所に収容された人々は、公民権が剥奪されるため、国家に保護する義務はないと北朝鮮は考えている。人間ではなく、動物や物扱いされるため、人数を数える時も「匹」や「個」が使われるほどだ。また、看守もそのような教育を徹底して受けている。

 平山で掘り出されたウランは精鉱(イエローケーキ)にして、イラン、シリア、エジプトなどに密輸出されていると言われていたが、原石そのものを輸出している可能性もある。

「中国からイエローケーキではなく、原石を要求されたと聞いている。中国は北朝鮮の精錬技術を信頼していない」(情報筋)

 いずれにせよ、ウランの密輸が増えているのは事実だとのことで、北朝鮮はそのために管理所の施設を増設したということだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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