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12年半の帯番組終了も「ワクワクしています」。ふかわりょうに前を向かせる“50歳の通信簿”

中西正男芸能記者
50歳、30周年という大きな節目を迎え、思いを語るふかわりょうさん

 8月で50歳になったふかわりょうさん。同時に芸歴30周年も迎え、今年はメモリアルイヤーとなっています。そんな中、9月27日の放送で司会を務めるTOKYO MX「バラいろダンディ」が終了。2012年4月から担当した「5時に夢中!」から数えると、12年半にわたり同局で帯番組のMCを務めてきましたが、仕事的にも大きな節目を迎えることになりました。生活の大きな軸を失うことにもなり、ピンチにも思える中で出てくる感情は「ワクワク」だといいます。

20歳とは違うワクワク

 今年、30周年を迎えることができました。

 一言で言うと、ワクワクしている。そういう心境なんです。

 30周年と同時に、今秋で夕方(5時に夢中!)と夜(バラいろダンディ)合わせて12年半お世話になったTOKYO MXのMCのお仕事に区切りがつきました。

 帯番組のMCですからね。それがなくなるんだから、気持ち的に不安になるかなと思ったんですが、不思議なことに非常にポジティブな心情が膨らんできたんですよね。

 キザのことを言うつもりはないんですけど、MXという大好きな港で穏やかな暮らしをしていた日々から、いよいよ出航となるのか。そういう感覚なんです。

 卒業というよりも出航。この言葉がフィットするなと。ここからどんな風景が見られるんだろうという思いが先に立ってるんです。

 この感覚って何なんだろうなと思った時に、20歳でこの世界に飛び込んだ時と似てるんですね。当時の芸能界って、今より周りから「そんな世界、やめておきなさい」といわれる圧が強い世界だったと思うんです。でも、その世界の景色がどうしても見たいから、そこに向かう。その感覚と同じだなと思ったんです。

 変な強がりでも何でもなく、今本当に前向きにいられる理由、それはお笑いという要素ですよね。僕はすごくテレビが好きで「芸人としてライブをやり続ける」というよりも「テレビの世界に飛び込んだ」という意識が強かった。正直な話。

 そして、ありがたいことに比較的早くテレビの世界に入れてもらうことができました。それだけに、お笑いライブというところから早く離れた部分があったんです。そこに対する一抹の後ろめたさ。実はそれがずっとあって、大きくなってくる中で、どこに進んでもいい大海原に出ることになりました。

 そして、帯番組が終わるとなって、まず思ったのが「あ、この笑い声を毎日浴びられなくなるんだ」ということだったんです。それが一番の心配であり寂しさでした。ということは、自分は笑い声を浴びたいんだ。その気持ちが実感した瞬間、進むべき道は定まった気がしました。

 こういうことを言うと怒られてしまうかもしれませんが、帯番組が終わることに寂しさはもちろんあるんですけど、一方で自分の中で「いい風が吹いてきた」という思いもあるんです。「今だ!」という。帆を立てて大海原に出るからこそ、改めて風を感じたというか。

 「R-1グランプリ」も今は芸歴制限がなくなってますし、ピンでやる以上、そこを目指して動くのは一つの羅針盤になりますしね。漠然と大海原に出るのではなく、とにかくあそこを目指す。それによって地図が浮かび上がるとも思いますし。

 そこに向けていろいろなライブにも若手に混じって出してもらっているんですけど、今までとは違う景色に遭遇していますし、それが心底楽しいんです。

 今までDJだったり、執筆だったり、MCだったり、マルチみたいな言葉で評される領域の活動をしてきたことを4分、5分の中に凝縮させて板の上で発表する。これって、改めてエモいなと思ったんです。

 ネタを作る。ここだけを見ると20歳の時にやり始めたことと同じなんですけど、30年やってのことなので、それともまた違うんですよね。50歳になって、原点回帰ではなく、やってきたことの最前線としてお笑いと向き合っている。20歳の時にもワクワクがあったんですけど、それとはまた違うワクワクがあるというか。

 人生100年時代とは言われますが、自分の中では50歳の時の景色が一つの通信簿だと思ってきたんです。そういう意味では、もちろん本当にたくさんの方々に助けてもらっての50歳なんですけど、この感覚を味わえている時点で50歳の通信簿としては悪くないのかなと思っています。

 これも、本当に奇しくもなんですけど、内村光良さんも還暦ということでテレビ朝日開局65周年記念「祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!」という特別番組に向けてのいろいろなプロジェクトも動いていると聞きます。

 こんな巡りあわせ、いくら考えたって具現化できるものではないんですけど、そこにすら大きな風を起こしてくれた内村さんにも、改めて感謝しかありません。

橋を伸ばす

 運動とは違って、お笑いや音楽は歳を重ねるということがマイナスではなく、むしろプラスになる。味になる。そこに魅力を感じてこの世界に飛び込んだんです。なので、ここからどう枯れていこうが、そこも輝いて見えるとは思っているんです。

 この前、8月31日に開催された小沢健二さんの武道館ライブに行ってきたんです。30年前の1994年8月31日に発売されたアルバム「LIFE」の再現ライブというコンセプトで、当時レコーディングに参加されたアーティストの皆さんも集結してみんなで30年を噛みしめるような場だったんです。

 しこたま涙して会場を後にする時、ふと横を見ると、赤ちゃんを抱いたバカリズムが歩いてたんです。バカリズムというか(本名の)桝野とは20歳の頃からよくつるんでいて、夢を語ったりとか、原宿のファミレスで朝まで入り浸ったりとか、何もかもが始まった時から一緒だった。その桝野がすぐ横で自分の子どもを抱っこしている。

 時間という見えないものが、その瞬間、一気に見えた気がして。また涙が出てきました。簡単なことではないけど、続けるってこういうことに出合えるんだなと。それを強く、強く感じました。

 橋脚というと不躾な言い方になるかもしれませんが、私の30年という橋を支えてくださっている方がたくさんいてくださる。それはタモリさんであり、内村さんであり、東野さんであり…。芸人さんに限らず、いろいろな場面で支えてくださった方がいらっしゃいました。

 そういった方々の存在がなければ、この橋は今日という場所までたどり着いていない。これからも何とか橋を伸ばしていけるような生き方をしていかないといけないですね。

 実はね、いわゆる単独ライブみたいなことを私はやったことがないんですよね。自分が面白いと思う世界をライブで表現する。それもやっていければなと。

 この取材を受けるまでは単独ライブというワードを口に出すこともなかったんですけど、いろいろ考えると、出てくるものですね(笑)。50代でも、まだまだやりたいことが出てくるものだと思いたいです。

 ただ、老化という言葉が迫ってくることだけは確実ですからね。

 今はまだ大丈夫なんですけど、先輩から「白髪が増えてくると、ネタのウケが悪くなってくるぞ」とも聞いていて。白髪を染めたりするのはあまり好きじゃないんですけど、そのあたりもどうするのか(笑)。あらゆることと向き合いつつ、積み重ねをしていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■ふかわりょう

1974年8月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。慶応義塾大学経済学部卒業。ピアニカの演奏の合間に「この表札、かまぼこの板じゃない?」などと魂の暗部をくすぐるような一言を挟むネタで注目される。ROCKETMAN名義でDJ、ミュージシャンとしても活動する。2012年4月からMCを続けてきたTOKYO MXの情報番組「バラいろダンディ」が9月27日の放送で終了。2012年4月から担当した「5時に夢中!」から数えると、12年半同局の帯番組でMCを務めてきたが、大きな節目を迎えることになった。10月17日に言語学者・川添愛さんとの対談本「日本語界隈」(ポプラ社)が出版される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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