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ケガを乗り越え、ガンバ大阪のDF中澤聡太が完全復帰。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

ガンバ大阪のDF中澤聡太が練習中、左腓骨遠位端骨折の重傷を負ったのは7月3日のことだった。今シーズン開幕から、J1リーグ戦で16試合、先発フル出場を続けていた最中のアクシデント。しかも黒星が先行する苦しい今シーズンの戦いに、彼自身も責任を強く感じていたからこそ、『復帰まで約14週』との診断結果に悔しさを募らせたことは言うまでもない。

「ケガをした当時もチームは苦しい状態にあったし、それは今も続いていて…そのことを悔しくも感じていたし、現状を何としてでも自分の力で引き上げたいという思いはリハビリ中もずっと抱いていました。と同時に、チームの結果に関係なく、自分がそこに立てていない事実に歯痒さ、悔しさも感じていましたしね。だからこそ、その思いをひたすら反骨心に変えてリハビリに取り組んできました。」

あれから、約3ヶ月半。DF中澤がピッチに戻って来た。孤独との戦いでもあるリハビリ中は、頭では割り切って、前を向いてリハビリに取り組んでいながらも、心が完全に晴れることはなかったからだろう。ピッチ外でチームメイトとみせる“掛け合い”には、いつもの中澤らしい明るさを見た一方で、ピッチ内でみせる表情にはどこか、サッカーが出来ない、ボールを蹴れないことへの寂しさが漂っていたもの。だが、10月半ばになってようやくチームに合流してからは少しずつ、本来の中澤らしい溌剌とした表情が見られるようになった。

「コンディション面ではまだまだ足りないところもありますが、気持ちの面は非常に高まっているので、そこを大事にしながらやっていきたい。ただ、試合に出なければ完全復帰ではないですからね。早く対外試合を積みたい。」

そして、10月21日。DF中澤はアウェイの地で行われたジュビロ磐田との練習試合でケガから復帰後初めて、対外試合のピッチに立った。後半60分から、30分間という時間制限の中での出場となったが、その中では短いながらも、久しぶりの『試合』を存分に噛み締めた。

「今回は60分からの出場で図り切れないところはあったし、本当にこの試合が初めての試合だっただけに、多少ズレを感じたりもしたけど、ある意味、それは想定内。素直に、楽しかったです。」

そうして、長いリハビリ生活に本当の意味での終止符を打ち、完全復帰を果たしたDF中澤。ここから先は、同じポジションを争う選手との競争が待ち受けているが「ようやくみんなと同じところに立てたので、ここから先は全力でポジションを獲りにいくだけです」と本人。毎年のように、厳しいポジション争いをくぐり抜けてレギュラーポジションを手にして来たように、まずは、DF今野泰幸、DF岩下敬輔、DF丹羽大輝らとセンターバックのポジション争いを征して、ピッチに立つことが当面の目標になる。

「チームも未だ苦しい状況にある中で、それを見ているだけの自分というのも悔しいのは事実ですが、とにかく自分がやるべきことを全力でやり続けないと始まらない。過去にも長期離脱のケガは何度か経験している中で、ピッチに戻る難しさも知っているだけに簡単にはいかないと思いますが、とにかく全力で…本当に今はただ、それだけだと思っています。リハビリ中、僕自身は単にケガを治すだけではなく、やれる範囲内で地道にいろんなことを積み上げてきたつもりですが、それが本当に自分のものになっているのかは分からないし、逆にここから先は自分でそれを引き出すこともしていかなければいけない。ケガして以降、このままリハビリでシーズンを終えるつもりも、サブで過ごすつもりもない、という意識でやってきましたが、ここから先も、自分ができること、やれること、やるべきことを練習でもオフ・ザ・ピッチでもしっかり考えながらやっていきたいと思います。」

余談だが、その磐田との練習試合では、長期離脱から久しぶりにピッチに立った彼に向けて、磐田サポーターから復帰を祝う名前のコールがあったと聞く。敵チームであるという垣根を越えて、1サッカー選手に贈られた温かい声援。これには「ビックリしたけど、本当に嬉しかった」と笑顔を魅せた中澤。「ただ、これがホームでの公式戦だったら…と想像したらもっと嬉しかったのかなとも思っただけに、できるだけ早くその喜びを味わいたいと思いました」と言葉を続けた。

もちろん、ガンバ大阪サポーターも、その時を心待ちにしている。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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