直近では1人あたり7.8枚…年賀郵便の利用実情を公開資料で検証
インターネットとソーシャルメディアの普及に伴い、日本郵便発行の年賀はがきによる年賀郵便の利用が漸減する傾向にある。コミュニケーションの変化の影響による必然的な現象ではあるが、実情としてどの程度の減少が起きているのだろうか。公開資料からその実情を確認する。
日本郵便発行の年賀はがきの発行枚数などは毎年日本郵便から発表されている。それによれば直近年の2024年発行・2025年用年賀はがきの当初発行枚数は10億7000万枚。2023年発行・2024年用の確定発行枚数ならば14億4000.1万枚。
一方で年末の特定期日に投函された年賀状を翌年の元日にまとめて配達する年賀郵便の枚数は、直近2023年度(2023年の元日配達分)で9億7048.6万枚。
これらの値から、いくつかの指標を計算する。まずは年賀はがき利用率。これは日本郵便が発行した年賀はがきのうち、実際にその年で年賀郵便として使われたのはどれくらいの割合なのかを意味するもの。例えばこの値が80%なら、発行された年賀はがきのうち80%が、その翌年元日に年賀状として届けられるように利用されていることになる。
実際には自分で印刷した私製葉書に専用の切手を貼り年賀状として用いる場合や、1月2日以降に届く形で投函せざるを得なかった年賀状もあるため(住所書きが間に合わなかった場合、送っていなかった相手から届いた場合の返礼としての年賀状)、年賀はがきがすべて年賀郵便に使われるわけではない。しかし1980年代前半ぐらいまではおおよそ100%を超えている。これは年賀はがき以外の私製葉書で年賀郵便として年賀状を出す事例が多かったものと考えられる。
しかし利用率は漸減し、1980年代後半以降は100%を割り込むのが当たり前となり、今世紀頭ぐらいからは70%台で推移する形となる。
年賀状を出す人そのものが減る場合は年賀はがきそのものも買われなくなるため、利用率に影響は与えない。利用率が漸減し、その後70%台を維持しているのは、年賀はがきを元日に届く形で出す人が減っている、あるいは年賀状として使う人が少なくなっているものと考えられる。その下限が70%台ということなのだろう。もっとも直近年ではその下限すら下回ってしまったが。
ともあれ直近年となる2024年元日用の年賀はがきでは、発行枚数の3割強が元日に配達される形での年賀状としては使われていないことになる。
仮に年賀はがきが年賀状として使われなくとも、普通の郵便葉書としての利用は可能で、手数料を支払えば普通の郵便葉書との交換もできる。とはいえ、利用率が低迷しているのもまた年賀はがきの実情ではある。
他方、年賀郵便が実際にどれほど使われているのかについて、国民1人あたりの枚数を計算したのが次のグラフ。人口の値は総務省統計局の人口推計のものを用いている。
年賀はがきの発行枚数のピークは2003年だが、一人あたりの年賀郵便の利用枚数ではそれよりも10年以上前の1992年にピークが生じている。この時の枚数は29.7枚。ちなみにこの年における年賀はがきの一人あたり枚数は30.9枚なので、ほとんどの年賀はがきが年賀郵便として用いられた計算になる(実際には私製葉書も使われているため、年賀はがきの利用率はもう少し下がる)。
ピーク以降は年賀郵便の利用枚数は漸減。直近年の2023年(2024年元日配達)は7.8枚。ピーク時の1/3足らず。この年における年賀はがきの一人あたり枚数は11.6枚なので、3.8枚は年賀郵便以外で用いられていることになる。
年賀郵便以外で年賀状として使われる年賀はがきがどれぐらいの数となるのか、それを知る方法は無い。年賀状の用意が年賀郵便の取り扱い期間に間に合わず、三が日以降に配達されるタイミングで投函する人や、自分からは出さずに送られてきた年賀状への返礼のみで済ます人が増えているとの話も多々聞く。
とはいえ、年賀はがきを年賀郵便用の年賀状として使わない割合、そして年賀郵便そのものの利用枚数が減っているのもまた事実ではある。
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