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なでしこの攻守をつなぐエンジン、MF三浦成美が臨む東京五輪の舞台

松原渓スポーツジャーナリスト
三浦成美(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

「欲を言えばもっと点を取って圧倒したかったので、危機感も感じています。(五輪の)初戦までは少ししか(時間が)ないので、しっかり準備したいです」

 1-0で勝利した7月14日のオーストラリア戦後、なでしこジャパンのMF三浦成美はそう言って、21日の五輪初戦に向けて気を引き締めた。

 大柄な外国人選手に囲まれても動じることなく、ボールを受け、的確に散らしていく。156cmと小柄だが、技術、運動量、インテリジェンスと献身性が光る三浦のプレーは、なでしこの命綱であるポゼッションの根幹を成す。

 オーストラリア戦でも、その存在感は際立っていた。相手の布陣や攻守の傾向を見極め、味方が空けたスペースをこまめに埋めてピンチの芽を摘む。攻撃に転じると、一度ボールを落ち着かせてから攻撃を組み立て直したり、隙あらば、ワンタッチパスやスルーパスでチャンスを作った。

「オーストラリアはプレッシャーが早いだろうなと予想していたので、ワンタッチを持っておこうと頭に入れていました。相手のボランチが自分たちのボランチ2枚に対して同数で守備に来たら、岩渕さんのスペースが空くことがわかっていたので、常に見ていました。ただ、自分が持った時にもっと前にパスをつけられるシーンもあったので、効果的にゴールに繋げられるようなプレーがしたいです」

 プレーを振り返る三浦の言葉は具体的だ。「相手がここを狙ってきたからこう変えてみたんですけど…」と、試合の中で試行錯誤しながらチャレンジしたことを楽しそうに話すことも。感覚的にとっているように見えるポジショニングも、そうした様々な成功や失敗の経験から緻密に導き出されている。

 21歳の時に出場した2019年のフランスW杯で、三浦はイングランドやオランダなど、世界のトップクラスと中盤で渡り合った。当時、三浦は、11年のドイツW杯で日本をボランチとして優勝に導いたMF阪口夢穂(大宮アルディージャVENTUS)から多大な影響を受けたことを明かしていた。ベレーザのチームメートでもあった阪口のプレーを細やかに観察して、分からないことがあれば聞き、アドバイスを大切にしてきた。

 そして、W杯の結果はベスト16敗退という悔しいものになったが、厳しい戦いの中で工夫を重ねて自信を掴み、自分の殻を破ったように見えた。

 あれから2年が経ち、なでしこのボランチとして成長を続けてきた三浦は、プレーの選択肢やカバーできるエリアを大きく広げている。

 所属の日テレ・東京ヴェルディベレーザでは今年からプロになり、自主トレーニングを強化。筋トレに加えて、高強度の持久力を鍛えたり、反転力を高めるなど、様々な角度からボランチに必要な要素を強化してきた。

 また、WEリーグのプレシーズンマッチでは、本職のアンカーに加え、流れの中でセンターバックやサイドバックに入ることも。そのためのビジョンや展開力も磨いている。オーストラリア戦でも最終ラインでビルドアップに加わった。国際試合でも安定感を増したプレーは、この2年間の鍛錬の成果を感じさせた。

「ボールを持った時に、日頃トレーニングしてきた初速や、一瞬で相手を剥がすプレーは、以前より通用するようになったなと感じました。そこは一つ、余裕を持てた要因かなと思いますが、ヨーロッパのチームはもっと速いと思うし、2枚目もすぐに(プレッシャーに)くると思うので、個人としても、チームとしても(相手の勢いに)のまれないようにしたいと思います」

 ボールを持った時のプレーに目が行きがちだが、三浦自身は以前、ボランチとして楽しい瞬間について聞かれた際に、「奪われてすぐに奪い返した瞬間」と答えている。

 中2日の連戦となる今大会も、そのタフなプレーでチームを支え、試合ごとに成長する姿を見せてくれるはずだ。

中島依美、三浦成美、宝田沙織
中島依美、三浦成美、宝田沙織写真:長田洋平/アフロスポーツ

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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