MWC番外編~バルセロナ取材ぶらぶら歩き;スリ、電車、新会場
2月23日(土)に成田を出発し、3月3日にスペイン バルセロナから帰国した。ようやくレポートを終えた。今回は行きのフライトでも帰りのフライトでも「卒業旅行」の若い人たちでいっぱいだった。行きのフライトはアムステルダム経由だったので、まずオランダに行きイタリア・フランスを旅行するというグループだった。彼らの無邪気な声を聞いていると降りるときに思わず「旅行中、気を付けて」と言わずにいられなかった。
ところが我々(もう一人の仲間と一緒)がスリの被害に会いそうになった。バルセロナ空港から電車で地下鉄が交差するサンツ駅に到着すると、客席に座っていた1組の男女が突然立ち上がり入口のドアの方向に向かった。地下鉄は止まってから自分でボタンを押して開けなければならないため、最初に私がボタンを押して降りて仲間を待っていたところ、ドアが閉まった。どうしたのだろう、と思い、駆け寄ると再びドアが開き彼が出てきた。話を聞くと、男女の内の男がドアを閉め、女が彼のポケットに手を入れようとしたという。手を振り払っていると他の乗客もおかしいと思い始めやむなくドアを開けた。もし一人だったら被害に遭っていた恐れがあった。
バルセロナにはスリが多いと聞いてはいたが、これほど身近にいたとは。そういえば2年前に来た時に、車いすに乗った年配の男ともう2人の男がグルになり、わずかに坂になっているカタルーニャ広場で車いすをわざと押して手を離し、いかにも地方から出てきたような若者2~3人にぶつけたふるまいを目撃した。若者たちは男たちには係わらずに無視しで歩き去った。こんな時に温情をかけたら大変なことになる。
今回の仕事は、あるクライアントからMWC(Mobile World Congress)の会場を一緒に回って、製品や技術の説明を聞き不明な点を質問するというものだ。回った企業を取材してもよい。まるで旅行のアテンダントであると同時に記者でもあった。このため記者として事前に登録すると、取材しないか、という案内を山のようにいただく。ただ、面白いことに日本のメーカーからはほとんどお呼びがかからない。その多くが海外のベンチャー企業である。彼らは画期的な技術を持っているはず。でなければベンチャーキャピタルがお金を出さないからだ。こういった無名の企業を取材することが最高に面白い。日本のメディアはほとんどやってこないからだ。
MWCが開催されている間は、欧州域内からバルセロナ行きと、バルセロナ発欧州域内のフライトは満員だ。今年もご多分に漏れずアムステルダムからバルセロナ行きのフライトは満員だった。ただし、日本人旅行客はほとんどいない。フライトチケットは繁忙期に入るため高くなる。しかし、あまり高価な卒業旅行の企画は日本の旅行会社としては立てられない。このためバルセロナへはMWC参加者が帰る頃に入るか、参加者が向かう頃に出るかしかない。いずれの場合も、この前後の期間のフライトはいっぱいになる。
バルセロナ市内のホテルはこの期間、価格が非常に高くなる。2倍3倍はざらだ。東京でいえば山手線内の便利な所は非常に高い。このため郊外の安いホテルに泊まり50~60分かけてMWC会場まで「通勤」した。通勤には路面電車と地下鉄を乗り継いだ。電車の切符は、10回乗れるという日本の鉄道にはないチケットが9.8ユーロ(約1200円)と安い。1回乗ると切符の裏に乗車記録が印字され、あと何回乗れるかがわかる。路面電車と地下鉄の乗り継ぎの場合は、1時間15分以内に乗り換えると1回分の料金で乗り継ぐことができる。使い勝手は良い。
今年は、電鉄会社の労働者のストライキはなく、電車を有効に使うことができた。MWCの会場が今年から変わった。これまではオリンピックの開かれたモンジュイックの丘の下に設けられた会場だった。この会場の広さ(展示スペース)は16万平方メートルだったが、これでも手狭だということで新会場に移った。新会場は、従来会場のあったスペイン広場駅から三つ目に新たにEuropa Firaという駅を新設したところに設けた。新会場の展示スペースは20万平米となった。ちなみに日本の幕張メッセはホール1~8が5.4万平米、ホール9~11は1.8万平米しかなく、合計しても7万2000平米しかない。世界にはバルセロナに限らず、20万平米クラスの見本市会場はミュンヘンやハノーバなどにもある。上海の見本市はドイツを模した以上の大きさを誇る。
MWC開催の前日2月24日の日曜日は会場でレジストレーションとクライアントのホテルの下見。夕方からはメディア向けの催し物が2件ある。バルセロナで一番の繁華街であるカタルーニャ広場に向かい、広場から10分程度歩いたリシュー駅のそばで開かれた一つ目のShowStoppersに参加した。劇場の一部を会場として30社程度が小さなブースを出し、軽食・飲み物を取りながら取材するという前夜祭イベントである。MWCの出展料が高いため、このイベントしか出ないという企業もあった。ここでディスプレイ付きのモバイルルーターや、アプリを簡単に作れるソフト、新しいワイヤレス充電器、iPhone用防水カバーなど小物新製品や技術が展示された。この後もう1件の前夜祭であるMobileFocusにも参加した。ここでも同様なブースが出ていた。出展社もこの二つのイベントを掛け持ちしている所もあり、遅れてやってきていた。
そして、25日月曜日からMWCが始まった。