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ガソリン価格、7週間ぶりに値上がり回避 ~関東地方では値下がり開始~

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

資源エネルギー庁が8月21日に発表した石油製品価格調査によると、8月19日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は前週比変わらずの1リットル=160.2円となった。

前週まで6週連続の値上がりとなっていたが、漸くガソリン価格の急騰にブレーキが掛かりつつあることが窺える。7月に原油価格が大きく上昇した分のコスト転嫁が一巡したことや、為替市場で円安圧力が一服していることが、ガソリン高にも漸く歯止めを掛け始めている。

地域別では、関東地方は前週比-0.1円の159.5円、中部地方は-0.2円の160.5円となり、依然として160円近辺の高値圏ながら、値下がり地域も散見されるようになってきている。ちなみに北海道157.8円、東北地方157.8円、近畿地方160.0円、中部地方161.2円、四国地方160.5円となっており、これらの地域は前週比横ばい。九州・沖縄地方が前週比+0.1円の162.5円と小幅ながら上昇トレンドを維持している。

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■お盆休み終了で、行楽需要は一服へ

今年のお盆休みは、行楽需要が盛り上がったことに加えて、猛暑の影響で空調使用が増えたことで、ガソリン消費は好調だったことが確認されている。石油連盟発表のデータを元に計算したガソリン推定出荷量(8月11~17日の週)は、前週比+13.6%の127万4,964キロリットルに達しており、通常時の3割近い増加を記録している。

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昨年のお盆休みシーズンのガソリン店頭価格は141.0円であり、家計に対する負担は大きくなっている。2010年に租税特別措置法が改正された際には、3ヶ月の平均小売価格が160円を超えた場合には、特例税率(53.8円)の停止が決められており(この規定は東日本復興財源などのために現在は運用停止)、その意味では、160円台のガソリンは十分に高値であることは間違いない。ただ、ここ数ヶ月の消費マインドの改善もあって、ガソリン高のインパクトを無事に吸収した形になっている。不満はあるものの、外出を手控えるような高値ではなくなっているということだ。

もっとも、今後は末端需要が徐々に減退することで、国内需給の引き締まりを背景としたガソリン高は一服しよう。消費者は現行の価格水準を拒否していない模様だが、在庫を更に積み増す必然性は低下することになり、ここから更に大きく値位置を切り上げる必然性は認められない。

エジプト情勢の緊張状態が原油価格の高止まりを促しているが、現実には特に目立った供給トラブルが発生している訳ではない。スエズ運河の石油タンカーの運航状況などに不透明感が強まるも、現実の供給不足は発生していない。隣国リビアの石油ターミナルでストライキが発生していることが欧州地区の原油価格を押し上げているが、北米でもドライブシーズンの終了を見据えてガソリン価格が低下し始めており、国内でも毎週のように値位置が切り上がるステージは終わったと見て良いだろう。

■原油高一服も、円安に要注意

今後は高止まりする原油価格と連動して、ガソリン価格も150円台後半から160円水準での高止まり局面に移行すると考えている。まだ家計に対する負担軽減が進む状況にはないが、今後の値上がりリスクから自動車にガソリンを入れる時期を急ぐ必要はなくなっており、むしろ出来るだけガソリンスタンドに行く時期を先送りすべきだろう。

産油国で突発的な供給トラブルが発生しないのであれば、少なくとも原油高のコスト転嫁を理由としたガソリン高は回避されよう。今後の値上がりリスクとして警戒すべきは、9月の米金融緩和策縮小を見込んで米金利上昇圧力が強まる中で、円安(ドル高)圧力が再開することの方になる。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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