電話による通話時間の推移をさぐる
・日本国内の「音声通話」総通信時間は直近2016年度では32億7100万時間。前年度比-3.0%。
・音声通話時間比率は直近2016年度では固定系16.7%、IP電話15.1%、携帯電話とPHSは68.2%。
・音声通話時間は固定系では総じて減少中。IP電話は増加していたが2014~2015年度は減少に。携帯電話とPHSは増加していたが2011~2014年度は減少。2015年度以降再び増加に。
通話による電話利用が今なおコミュニケーションにおいて重要な手段の一つには違いないが、インターネットの普及、特にソーシャルメディアをはじめとした各種コミュニケーションサービスの浸透に伴い、重要性は薄れつつあるのも事実。今回は総務省が2018年1月に発表した調査結果「通信量からみた我が国の通信利用状況-平成28年度における利用状況-」(※)から電話を用いての通話の実態を確認する。
今調査結果によると日本国内の「音声通話」総通信時間は、直近2016年度では32億7100万時間となり、前年度比で3.0%の減少。様態区分別では前年度比で固定系が減少、IP電話、携帯電話・PHSが増加している(携帯電話・PHSはグラフの表記上は「+0.0%」だが、厳密には+0.036%)。IP電話は2014年度において、データ取得が可能な2005年度以来はじめて前年度比でマイナスに転じ、その翌年度の2015年度も減少したが、今回年度では増加する形となった。とはいえ増加度合いはわずかなもので、「電話による通話」そのものへの手控え感が進んでいる実情を覆すまでにはいたらない。それゆえに、携帯電話・PHSが前回年度に続き増加したのは注目に値する。
公開資料から取得可能な値で最古となる2000年度では、通話時間の約8割が固定電話、約2割が携帯電話だった。つまり「電話での通話」といえば固定電話によるものが一般的な世の中で、携帯電話の通話は少数派。しかし直近の2016年度では、固定系電話はIP電話を合わせても3割強でしか無く、携帯電話やPHSで6割強。今や「電話での通話」は主に携帯電話でのやりとりが普通となっている。
各様態区分別では、長らく前年度比でプラスを示したIP電話は、契約数を大きく伸ばしていたのがプラスの主な要因だった。携帯電話契約数の増加傾向は続いているが、それ以上に個々の契約における通話時間の減少率が大きくなり、2014~2015年度ではIP電話総数でマイナスを示していた。直近年度ではわずかだがプラスに転じているものの、通話が活発化したと判断するのにはまだ勢いが足りない。
携帯電話・PHSでは、PHSこそ契約数は減少中だが、携帯電話では契約数は増加している。しかし通話回数は減少している。電話によるコミュニケーション手段が、音声からデジタル(電子メールやチャット、ソーシャルメディアなど)にシフトしつつあるからだ。
しかしながら総通話時間は、今回年度は前回年度に続き、前年度比で増加している。理由に関しては特に報告書では言及されていないものの、興味深い動きに違いない。もっとも詳しくは別の機会に詳しく解説するが、今調査結果の限りでは、1通信あたりの平均通話時間は増加の傾向にあり、これが原因の可能性は高い。
知人との間、そして親子でも手持ちのモバイル端末で、音声による通話では無くデジタル(電子メール、チャットなど)での意志疎通へとシフトが進んでいる。LINEのように音声通話もできるチャットアプリが普及するにつれ、そしてそれを実装できるスマートフォンの普及とともに、電話における通話は時間も回数もますます減少していく。
携帯電話・PHSにおける通話時間の増加がイレギュラー的なものか、それともトレンドの転換によるものかは、現時点では分からない。来年度以降も増加の動きを示し続けるのであれば、携帯電話などにおける通話への姿勢に変化が生じていると見るべきだろう。
■関連記事:
携帯・固定電話の1日あたりの通話回数と1通話の通話時間をグラフ化してみる
※通信量からみた我が国の通信利用状況-平成28年度における利用状況-
日本国内の電気通信事業者からの報告を取りまとめたもので、対象事業者は兼業している事業者も含め発信側で仕切ると、固定系関係9社、ISDN系8社、公衆電話系4社、IP電話系22社、携帯電話系11社、PHS系7社、国際電話関係8社。過去の調査結果も同様の様式で取りまとめられている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。