ガソリン価格が再び上昇中、今後の見通しは? ~全国平均価格は前週比+0.5円の160.7円~
資源エネルギー庁が9月4日に発表した石油製品価格調査によると、9月2日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は前週比+0.6円の160.7円となった。3週連続で160.2円と高値横ばい状態が続いていたが、9月入りしてから再び値上げプレッシャー強くなっている。
例年だと、お盆休み明けのこの時期は、ガソリン価格に値下げプレッシャーが強まり易くなる傾向にある。末端需要がピークを過ぎることで、在庫水準を抑制する動きが活発化し易いためだ。ただ今年は、シリア情勢を巡る緊迫状態などから海外原油相場が急騰したことで、改めて原油調達コストの上昇分をガソリン価格に転嫁する必要性が高まっている。
地域別では、関東地方が前週比+0.9円の160.3円と値上がり幅が大きくなっているが、近畿地方+0.5円の160.5円、中部地方+0.2円の160.5円など、全国的に値上がり圧力が強い。福島県、群馬県、神奈川県、富山県、岡山県が新たに160円台乗せしており、150円台を維持しているのは僅か14道府県に留まっている。
■中東産原油に値上げプレッシャー
ガソリン価格高騰の背景にあるのは、原油相場の急騰に尽きる。指標となるNY原油先物相場は、エジプト情勢の緊迫化を受けて7月19日時点で既に1バレル=108.93ドルまで値位置を切り上げていたが、その後も値上がり傾向は続いており、8月28日には2011年5月以来の高値となる112.24ドルに到達している。
ここにきてエジプト情勢には安定化の兆候が見られるが、1)シリアの化学兵器使用疑惑で米国が軍事介入する可能性が高まっていること、2)リビアやイラク産原油の供給トラブルによる品薄感、3)中国経済に対する悲観ムード後退などを手掛かりに、更に値位置を切り上げている。
こうした状況を受けて、日本の石油会社が調達する8月の直接取引(DD)原油価格は、前月から総じて3.8~3.9%程度引き揚げられており、製品価格への転嫁が必要不可欠な状況になっている。特に、ここにきて灯油や軽油生産に適した軽質・中質油の値上がり圧力が強くなっており、このままの状態が続くとガソリン価格のみならず、冬の灯油価格に対する値上がりプレッシャーも警戒する必要がある。
東京商品取引所(TOCOM)の原油先物相場(当限)は、年初から1キロリットル=6万~6万5,000円のレンジで揉み合っていたが、本日高値は6万9,800円に達しており、まずはこの高騰分を転嫁する動きが強まったのが、今週のガソリン価格が3週間ぶりに上昇した理由である。
■今後の見通しは?
仮に、米国のシリア内戦への介入を受けて、イランやイスラエルなどにも戦線が拡大すると、原油価格は150ドルに到達するといった見方もある。その際は、ガソリン価格は08年8月に記録した185.1円を大きく上抜くのが必至であり、引き続きシリア情勢の展開状況には十分な注意が必要である。
ただ、オバマ政権の目指す「限定的」な軍事介入に留まるのであれば、ここから短期間で5円、10円と値上がりする可能性は低いと考えている。海外原油相場の大幅な値下がりは想定しづらく、引き続き160円台を大きく割り込む展開を期待するのが難しいことは否めない。だが、原油高の転嫁という意味では、160円台前半から中盤で地合の強さが確認されれば十分だろう。
ガソリン価格が更に160円台後半まで値上がりするようなリスクとしては、原油価格動向よりも円安リスクの方を警戒すべきかもしれない。今週6日には8月米雇用統計の発表が控えており、ここで強めの数値が出てくると9月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融緩和策の縮小がいよいよ決定される可能性がある。足元では米金利上昇からドル高(円安)圧力が再開される中、ドル/円相場が1ドル=100円台確立を試す動きが強まれば、少なくともガソリン価格の160円割れは更に困難な状況になる。