GWの帰省は軒並み中止だが、国内線は緊急事態宣言でも昨年のような大量キャンセルにならない理由は
4月25日から3回目の緊急事態宣言が発令され、東京都、大阪府、兵庫県、京都府の4つの都府県が対象となった。今回は5月11日までの17日間、テーマパークやデパートへの休業要請、更にスポーツイベントやコンサートなどに対しても原則無観客での開催や延期を要請した。
旅行においては、県をまたいだ移動の自粛は呼びかけられているが、宿泊施設に対しての休業要請は実施されないことで既に予約済みの宿泊施設に予定通りに宿泊することは可能となっている。
旅行は完全な自粛モードにならない可能性も。キャンセルも限定的
全体的に2回目の緊急事態宣言に比べると厳しい措置が取られることになったが、 ゴールデンウィーク期間中(GW)の国内旅行においては、完全なる自粛モードにはならなそうだ。今回、2日前の4月23日に緊急事態宣言の発令が正式決定し、4月25日から5月11日までの17日間が緊急事態宣言の期間となるが、今までと状況は異なる。
取材を進めてみると昨年のGW、夏休み、年末年始と航空業界や旅行業界にとっても最も稼ぎどきである時期の直前で新型コロナウイルスの感染者が拡大し、直前でのキャンセルが目立っていた。しかし今回のGWにおいては、航空会社の関係者やリゾート地の宿泊施設関係者に話を聞くと、昨年のようなキャンセル殺到という状況にはなっておらず、じわりじわりのキャンセルは出ているが、大量キャンセルにはなっていない。ある沖縄の宮古島にあるリゾートホテルでは、キャンセルは僅かであり、影響は最小限だと話す。
帰省は軒並み中止、旅行は予定通りの流れに。都内にいるよりもリゾート地でゆっくり過ごす人も
旅行や帰省で飛行機を利用する予定の人に話を聞いてみると、傾向として故郷への帰省については多くの人が中止をして自宅に留まる人が多い一方、旅行については緊急事態宣言が出ても予定通りにキャンセルせずに出かけるという人が多かった。また昨年のGWは単身赴任者が自宅に戻るのを取り止めるケースも目立ったが、今年は自宅に例年通りにGWは戻るという人が多いようだ。 その理由としてはコロナ禍における旅行スタイル・移動スタイルが確立されたことで、旅行者そして単身赴任者が自分自身でコロナ対策を心掛け、安全に移動できるという判断がある。
実際に飛行機や新幹線でのクラスター感染が起こっておらず、旅行先でも宿泊施設内でゆっくり過ごすスタイルが確立されたことで、 東京や大阪でGW期間中に自宅で自粛するよりは旅先でのんびり過ごしたいという考えで予定通りに旅に出かける人が多い。その一方で出発前にPCR検査を受けてから旅行に出かける人も増えている傾向にある。
関連記事:羽田空港、約15分で新型コロナの検査結果がわかるPCRセンターを10日に開業。実際に検査を受けてみた(2020年4月8日掲載)
感染者数の多い首都圏、近畿圏への旅行は多くがキャンセルに
だが一方で感染者が拡大している近畿圏、そして首都圏のホテルにおいては厳しい状況で、地方から東京や大阪への旅行はキャンセルが目立っている。東京や大阪からリゾート地や温泉地などへ出かける旅行との温度差は大きい。旅行者においては、出発地ではなく、目的地(旅先)における感染状況によって判断している人が多いのだろう。航空会社における国内線の予約状況からも考えてみよう。
昨年のGWの国内線利用者に比べて、今年は10倍近い予約に
昨年(2020年)のGW期間中(4月29日~5月6日)における国内線の利用実績は、ANAではコロナ前の2年前(2019年)のGWと比べて96.5%減の4万5228人で1日あたり5653人、JALグループでも2019年のGWと比べて95.1%減の4万7646人で1日あたり5955人だった。ANA・JALグループを合わせても1日あたり1万1608人しかいなかった。昨年4月~5月の1回目の緊急事態宣時では旅行・帰省を含めて、ほぼ全ての県をまたいだ移動が自粛され、新型コロナウイルスの状況がわからないこともあり、国民のほとんどが自粛生活を過ごした。
ただ今年のGW期間中(4月29日~5月5日)について、ANA・JALグループを含めた国内航空会社は、4月23日に予約状況を発表したが、ANAでは予約数において昨年と比べて446.5%増の44万4493人(1日あたり6万3499人)、JALグループでは昨年と比べて335.3%増の32万6873人(1日あたり4万6696人)となっている。
ANA・JALグループを合わせてると1日あたり11万0195人の予約となる。昨年の最終的な利用実績(1日あたり1万1608人)と今年の4月23日時点での予約状況では約10倍も増えている。それでも2年前に比べると、まだ4割程度の予約水準に留まっている。3月21日に2回目の緊急事態宣言が解除された段階ではGWに国内旅行需要が2年前と比べて8割前後まで回復する期待感もあったなかで厳しい状況であることには変わりがない。
昨年のGWは直前での大量キャンセルが目立った
昨年の傾向としては、昨年4月22日にGWの予約状況を発表した段階でANAでは13万2011人の予約が入っていたにも関わらず、昨年5月8日に発表された利用実績では4万5228人となった。つまり約65.8%の人が昨年4月22日以降の2週間以内にキャンセルもしくは追加減便による欠航で利用しなかったという計算となる。(JALグループでも同様で昨年4月22日にGWの予約状況では12万0342人だったが、昨年5月8日の発表では4万7646人で約60.4%の人が昨年4月22日以降にキャンセルもしくは追加減便による欠航で利用しなかった)
下記の数字を見るとわかるが、例年はGW前に発表される予約状況よりも最終的にGW後に発表される利用実績の方が人数は多くなる。直前予約の数字が反映されるからだ。しかし、昨年は4月22日以降の直前キャンセルが相次ぎ、4月22日の予約状況と5月8日の利用実績の数字が大きく異なってしまった。
■ANA国内線のGW前の予約状況とGW後の利用実績
2019年GW(4月26日~5月6日)11日間
4月19日発表の予約状況 163万2819人(1日あたり14万8438人)
5月7日発表の利用実績 173万2194人(1日あたり15万7472人)
2020年GW(4月29日~5月6日)8日間
4月22日発表の予約状況 13万2011人(1日あたり1万651人)
5月8日発表の利用実績 4万5228人(1日あたり5653人)
2021年GW(4月29日~5月5日)7日間
4月23日発表の予約状況 44万4493人(1日あたり6万3499人)
■JALグループ国内線のGW前の予約状況とGW後の利用実績
2019年GW(4月26日~5月6日)11日間
4月19日発表の予約状況 127万0986人(1日あたり11万5544人)
5月7日発表の利用実績 133万1203人(1日あたり12万1018人)
2020年GW(4月29日~5月6日)8日間
4月22日発表の予約状況 12万0342人(1日あたり1万5042人)
5月8日発表の利用実績 4万7646人(1日あたり5955人)
2021年GW(4月29日~5月5日)7日間
4月23日発表の予約状況 32万6873人(1日あたり4万6696人)
今年は昨年ほどの直前での大量キャンセルにはならない可能性大
しかし今年においては、緊急事態宣言が発令されたことで昨年同様に4月23日の予約状況より利用者が減少する可能性は高いが、直前のキャンセルは1~2割程度(多くても3割)の減少に留まるだろう。緊急事態宣言も昨年は全国だったのに対し、今回は東京都・大阪府・兵庫県・京都府のみであり、沖縄や九州、北海道などの人気観光地が緊急事態宣言発令の対象地域外になっていることも大きい。
ANAに緊急事態宣言発令決定前に話を聞くと「蔓延防止等重点措置が適用されている関西地域および東京といった主要都市において感染者数拡大が続いており、緊急事態宣言の要請が検討されている状況から、今後も予約動向の悪化が続くとともに、予約数の減少が予想されます」とのことだ。GWの予約は、2回目の緊急事態宣言の解除が決まった3月中旬~3月末にかけて一気に予約が入ったそうで、4月5日以降に予約数の増加が鈍化に転じたそうだ。
旅行業界には今回の緊急事態宣言による補償制度はない
そして、旅行業界においては今回の緊急事態宣言発令による大きな補償制度はないことも大きい。その為、地方も含めて観光客の受け入れに否定的な宿泊施設は少なく、宿側も感染症対策をした上で、東京などからの観光客も歓迎のムードであり、少しでもお客様に来ていただいて売上を確保したいという切実な声が聞かれる。
今の時点で言えることは、これからGWの旅行を新規で予約する人は少ない一方、緊急事態宣言が発令されても予約済みの旅行については、そのまま出かける人が多いGWになりそうだ。
(2021年4月29日追記)
GW初日の羽田空港は、緊急事態宣言が出ているが、緊急事態宣言発令が決定してからの国内線キャンセルは10%未満に留まっている。
参考記事:緊急事態宣言決定後のキャンセルは10%未満に留まる。GW初日の羽田空港は多くの旅行者で賑わう(2021年4月29日掲載)