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韓国が北朝鮮のミサイル情報を「日本には教えない」と言っている

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
韓国の朴槿恵大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

韓国と米国は、在韓米軍に配備される最新鋭高高度迎撃システム「THAAD(サード)」が探知した北朝鮮のミサイル情報を、日本とは共有しない方針であることがわかった。聯合ニュースが25日、複数の韓国政府消息筋の話として報じた。

韓国政府は、中国の反発や国内の反対世論を抑えるため、THAAD配備の目的は北朝鮮からの韓国領土の防衛に限定されていると説明している。日本と情報を共有すれば、「韓国が米国と日本のミサイル防衛(MD)体制に取りこまれている」との指摘を受けかねず、そうした懸念を払拭(ふっしょく)する必要に駆られているようだ。

安倍首相一族の「在日人脈」

しかし、韓国は日米との情報共有の取り決めにより、韓国軍が収集した北朝鮮のミサイル情報を米国経由で日本と共有することになっている。

たしかに、THAADのレーダーが探知した北のミサイルの下降段階の情報を、早期警報の目的で日本に提供しても実効性は薄いかもしれない。

ただ、北朝鮮のミサイルには今後、核弾頭が搭載される見込みだ。限定的な範囲の対象を破壊する通常弾頭とは異なり、核ミサイルは例えば、洋上に展開する敵艦隊に1発で致命的ダメージを与えることも可能だ。

日本政府は新たな安保法と、新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)により、集団的自衛権の行使に踏み込んでいる。北朝鮮が、米国を狙う核ミサイル潜水艦を日本海に配備する動きを見せていることを考えれば、今後、海上自衛隊の艦艇が朝鮮半島近海で米軍とともに行動する機会は増えるかもしれない。

(参考記事:いずれ来る「自衛隊が北朝鮮の潜水艦を沈める日」

こんな状況下で、韓国が日本と情報を共有しないことを前提に防衛戦略を組み立てるのは、望ましいこととは言えないだろう。

もっとも、このような展開になってしまった責任は日本側にもある。何しろ安保法を巡る国会の審議では、地球の反対側に自衛隊を送る議論ばかりして、集団的自衛権をもって北朝鮮の脅威にどのように対処するかということは、ぜんぜん話し合われなかったのだから。日本国内で話し合ってもいないことを、韓国に一方的に理解しろと言っても無茶だろう。

この辺のちぐはぐさは、やはり旧ソ連の核の脅威に向き合っていた冷戦時代と決定的に異なる。あの頃は安倍晋三首相の祖父である岸信介元首相や田中角栄元首相らをはじめ、日米韓の利害調整のための「人脈」を持っている政治家が少なくなかった。

(参考記事:【日韓国交50年】岸信介から安倍晋三まで…首相一族の「在日人脈」と「金脈」

もっとも、それが必ずしも日本の国益になったとは言い難い面もあるが……。

(参考記事:【日韓国交50年】田中角栄と「ナッツ姫」祖父が残した日韓政治の闇

いずれにしても、北朝鮮は近い将来に核ミサイルを実戦配備する。これまでとは安保環境が大きく変わるのに、日韓が相変わらずちまちました政治をやっていては、いずれ北朝鮮に足元をすくわれないとも限らないのだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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