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ウクライナ軍"めったに見られない"ロシア軍の偵察ドローン「ZALA 421-16Е2」久しぶりに撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
ロシア軍の偵察ドローン「ZALA 421-16Е2」(ウクライナ軍提供)

"めったに見られない"「ZALA 421-16Е2」久しぶりに迎撃

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」でも偵察を行っている。11月に入ってからは「Granat-4」、「Korsar(Корсар)」「Supercam S150」というロシア製の偵察ドローンも破壊されていた。またロシア軍は、ロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」、イラン政府から提供された攻撃ドローンで攻撃を行っている。これらのドローンが撃破された残骸の写真はよく公開されているので頻繁に見かける。

2022年11月にはウクライナ軍がドネツクで破壊したロシア製の監視・偵察ドローン「ZALA 421-16Е2」の写真を公開していた。2022年5月、7月にも偵察ドローン「ZALA 421-16Е2」を破壊していたが、久しぶりに「ZALA 421-16Е2」を破壊した写真を公開していた。5月に同機を迎撃して破壊した時には「めったに見られない偵察ドローン」と報じられていた。「Orlan-10」と異なり、それほど珍しい頻度でしか見られない。

ロシア軍は偵察ドローンでは主に「Orlan-10」を多く使用していたので、「Orlan-10」の破壊された写真は珍しくなかったが、最近ではあまり見かけなくなった。ウクライナ軍は2022年2月24日から11月26日までに1554機のロシア軍のドローンを撃破している。偵察ドローン「Orlan-10」はウクライナ軍によって徹底的に破壊されてしまい開発と生産が追い付かずに品不足なのかもしれない。

▼ロシア軍が監視・偵察に使用していたZALA 421-16Е2

▼迎撃された「ZALA 421-16Е2」

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。

「ZALA 421-16Е2」は、監視・偵察専用機で爆弾を搭載して落下させたり、標的に突っ込んで爆発させることはない。そのためジャミングでも機能停止できるが、今回はハードキルで破壊されたことが写真からうかがえる。

最近の偵察ドローンには手榴弾などの武器や弾薬が搭載されている可能性があるので、機能停止するだけでは上空からドローンが落下して地上で爆発する危険もある。そのため上空で撃破しておいた方が良い。また敵軍の監視・偵察ドローンに自軍の居場所を察知されると、その場所をめがけてミサイルが大量に発射されるので偵察ドローンを検知したらすぐに破壊したり機能停止する必要がある。

また現在のロシア軍は破壊された監視ドローンを回収して部品の再利用をして、監視ドローンを作っている。そのため、監視ドローンといえども、中途半端な機能停止や撃墜によって落下させるのではなく、他の戦車やミサイルと同じように上空で徹底的に破壊しておきたい。そうすれば部品を回収されて監視ドローン製造に再利用されないので効果的である。

▼2022年11月に迎撃された「ZALA 421-16Е2」

▼2022年5月に迎撃された"めったに見られないドローン"「ZALA 421-16Е2」

▼ウクライナ軍は2022年11月26日までに1554機のドローンを撃破

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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