「童貞を殺すセーター」の商標登録出願に拒絶理由通知
昨年の5月に「”童貞を殺すセーター”は商標登録され得るか」という記事を書きました。セクシーなセーターを表わすネットミームとして定着している言葉をある企業が商標登録出願したという話です。
先日チェックしたら、上記記事での予測どおり、昨年の12月23日付けで商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標)を根拠に拒絶理由通知が出ていました(まだ出願人からの応答はありません)。記事中では審査官へのヒントとして情報提供(刊行物等提出)を行うこともできると書きましたが、そうするまでもなく、審査官は拒絶理由を出したことになります。一般論ですが、3条1項6号への反論は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識している」ことを立証しなければいけないのでよほど周知商標化していない限り困難です。
拒絶理由通知には以下のように淡々と書かれています。
「別掲」とは「ピクシブ百科事典」等です。最近の特許庁の運用では、ネットミーム的な言葉は、たとえ、マスメディアで広く使われていなくても、ネット上の情報に基づいて3条1項6号で拒絶することが多くなっています。特定の企業や個人が独占するのは妥当ではない、かと言って4条1項7号(公序良俗違反)で拒絶にするほどでもないということで妥当な運用ではと思います。ネットミームの由来と全然関係ない人が抜け駆け的に商標登録出願しても料金が無駄になる(下手すると炎上する)だけなので、やめておいた方がよいでしょう。
なお、ドワンゴによる「ゆっくり劇場」「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」の出願のように、商標権を独占するためではなく、第三者による勝手出願を防ぐための防御的出願のケース、あるいは、誰が出願しても登録されない、いわばパブリックドメイン的な言葉になっていることを確認するために出願されるケースもありますので、ネットミームの商標登録出願が即批判すべき行為というわけではない点には注意が必要です。