北朝鮮「田植え戦闘中に死者続出」末期症状示す異常な場面
国民総動員体制で「田植え戦闘」が繰り広げられている北朝鮮で最近、平壌の江東(カンドン)教化所(刑務所)の収監者2人が、作業中に死亡する出来事があった。
デイリーNK内部情報筋によると、先月中旬に死亡した2人は、もともと「虚弱(栄養失調)班」に分類されていた収監者だった。
教化所側は、職員や収監者の食糧を賄うために割り当てられた耕作地である「副業地」の作業ペースが遅れているとの判断から、「どんな理由があっても、田植えに参加しなかった収監者は処罰する」との指示を先月初めに下していたという。
さらに「総動員期間に参加しなければ理由を問わず、独房3日から最高7日までの処罰を下し、意図的であれば保安課で別途取り扱い、2倍の罰を与えることもあり得る」とし、公然と「死ぬにしても田畑で働きながら死ね」と言っていたという。
そもそも、北朝鮮では刑事事件で有罪となり、教化所に収監されると、満期まで公民としてのすべての権利を停止され、人間扱いされなくなるのだ。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
また、暑さの酷い近年の「田植え戦闘」では熱中症などによる死者が続出。昨年は短期間に50人を超える犠牲者が出た。そんな作業に栄養失調の収監者を従事させれば、どのような結果につながるかは自ずと明らかだ。
件の収監者らは、夜明けから夜8時まで働き、帰ってきてからさらに1時間ほど室内作業をさせられていたという。
彼らが現場で倒れ、死亡した後も、教化所側は何ら改善措置を講じず、「改心して農作業に取り組まない者には、恩赦も刑期短縮もないだろう」としながら、むしろいっそうの恐怖を煽っているとのことだ。
また、「罪を犯したわけでもない人々が夜明けから夜遅くまで働いているのだから、罪人はもっと働いて贖罪しなければならない」と強調しているという。
収監者に対するこうした圧迫は、今後ますます強まるものと思われる。北朝鮮の食糧危機は深刻な状況なのに、すでに栄養失調に陥ってしまった多くの国民が、どんなに号令をかけられても働きに出られなくなっているからだ。
だが、刑務所の収監者はこれまでも、「田植え戦闘」に動員されてきた。つまりはもともと計算に加えられていた労働力であり、いくら尻を叩いても、大幅な生産力アップにはつながらない。
田植えがうまく行かなければ、秋以降の食糧事情がさらに悪化しかねない。収監者を死に追いやるようなやり方は、金正恩体制がいよいよ追い詰められつつある「異常事態」の一場面なのかもしれない。