アドベンチャーワールドで鳥インフル「陽性」で園内のダチョウら殺処分。ペットの鳥、猫は大丈夫?
和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで、鳥インフルエンザに感染し死亡したアヒルが見つかりました。そのため園内で飼育の「アヒル・ダチョウ・エミュー」など57羽が殺処分されました。
今月4日に、茨城県かすみがうら市の養鶏場で同じく鳥インフルエンザの陽性が確定し、飼育していた鶏104万羽が殺処分になりました。鶏が殺処分されても、身近な存在として考えることができにくいかもしれません。
その一方で、アドベンチャーワールドのダチョウやエミューだとそこを訪れた人も多く、あの時に見ていた大型の鳥だと思うと心を痛めてしまう人が多いのです。
鳥インフルエンザは、養鶏農家では生活がかかる重大な疾患ですが、一般の人も身近な動物であるペットの鳥や猫から、この病気について考えていきましょう。
鳥インフルエンザとはどんな病気?
鳥インフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気です。鳥が感染するA型インフルエンザウイルスをまとめて鳥インフルエンザウイルスといいます。
家畜伝染病予防法では、鳥インフルエンザを家きん(鶏、うずら、あひる、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥)に対する病原性やウイルスの型によって、「高病原性鳥インフルエンザ」、「低病原性鳥インフルエンザ」などに区別しています。
鳥インフルエンザの侵入ルートは?
鳥インフルエンザの侵入ルートは、以下のようになります。
・鳥インフルエンザウイルスに感染している家きんから侵入
・野生動物が鳥インフルエンザウイルスを持ち込む
・鳥インフルエンザウイルスに汚染された器材・車両・卵ケースから侵入
・人の衣服、手、長靴などを介して鳥インフルエンザウイルスを持ち込む
このように鳥インフルエンザは、動物園やアドベンチャーワールドのような開放的なところで鳥に感染リスクがあります。
天王寺動物園での鳥インフルエンザ対策
和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで鳥インフルエンザが発生したので、大阪の天王寺動物園でも鳥インフルエンザ対策がされています。
今シーズンは例年より早い時期から、国内各所での野鳥や養鶏から高病原性鳥インフルエンザの陽性事例が認められています。(参考:令和4年度 国内における高病原性及び低病原性鳥インフルエンザ発生状況)
これを受けて、天王寺動物園でも、少し早めに対策を開始しています。11月12日から、エミュー、アフリカハゲコウ、エジプトガン、シロフクロウの準備ができ次第、随時屋内へ収容します。
この移動後も、アフリカハゲコウは鳥の楽園、エジプトガンはコフラミンゴ舎(サバンナゾーン)、エミューは旧コアラ館にて展示していますが、しかし、シロフクロウは見ることができなくなります。
今後の流行次第では、鳥の楽園等、一部施設の閉鎖を余儀なくされる場合があるそうです。
ペットとして鳥を飼っているけれど大丈夫?
国内で鳥インフルエンザが発生したからといって、直ちにペットの鳥が感染するということはありません。
鳥を飼うときに以下のことに気をつけていただければ、心配する必要はありませんので、飼っている鳥を野山に遺棄するなどはしないで下さい。
・鳥インフルエンザウイルスを運んでくる可能性がある野鳥が近くに来ないようにしましょう。
・フンはすぐ片付けましょう。
・エサや水はこまめに取り換えましょう。
・鳥の体やフンに触れた後は、手洗いとうがいをしましょう。
・口移しでエサをあげたりすることはNG。
上記のことは、鳥インフルエンザウイルス以外の、鳥が持っているかもしれないウイルスや細菌、寄生虫から飼い主の身を守ることにもつながります。
ペットの鳥が死んでしまった場合はどうすれば?
鳥が死んだからといって直ちに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。原因がわからないまま、鳥が次々に死んでしまうということがない限り、鳥インフルエンザを心配する必要はありません。
原因がわからないまま、鳥が連続して死んでしまったという場合には、その鳥に素手で触ったり、土に埋めたりせずに、なるべく早く獣医師やお近くの都道府県、区市町村役場にご相談ください。
野鳥が死んでいるのを見つけた場合はどうすれば?
野鳥が死んだ場合には、鳥インフルエンザウイルスだけでなく、さまざまなウイルスや細菌、寄生虫が人に感染するのを防ぐことが必要です。
野鳥が死んでいるのを見つけたときは、こうしたウイルスや細菌、寄生虫に感染しないよう、死んだ鳥を素手で触らないようにしましょう。
死んだ鳥の処分の仕方については、お近くの都道府県や区市町村役場にご相談ください。
鳥インフルエンザは鳥から人間に感染しますか?
鳥インフルエンザは、主に鳥を宿主としているため、容易に人間には感染しません。わが国ではこれまでヒトの感染例の報告はありません(2019年7月現在)。
しかし、鳥インフルエンザの鳥から人間への感染は、まれにあります。感染した鳥との濃厚な接触が原因であり、鳥の排泄物や体液に接触した場合に感染する可能性があると考えられています。
外国で猫が鳥インフルエンザに感染したと聞きましたが、ペットの猫は大丈夫?
高病原性鳥インフルエンザに猫が感染した例がドイツで報告されました。また、過去には、タイで動物園のトラが感染したとの報告があります。
これらの感染ルートは、鳥インフルエンザに感染した生の鶏を餌として与えられる、感染した鳥やその死骸やフンなどに接触したためと考えられています。
日本国内で普通に飼われている猫は、鳥インフルエンザに感染した鶏を食べたり接触することはないので、心配ありません。
また、感染した猫から人間に鳥インフルエンザが感染した例は、これまで報告されていません。
ペットの猫が野鳥を食べてしまいました。鳥インフルエンザに感染しませんか?
この時期に、猫が野鳥を食べていると心配になります。
直ちに野鳥を食べた猫が危険になるということはありませんが、野鳥は病原体や寄生虫を持っている可能性があります。そして、野生動物の保護の面からも、ペットの猫が野鳥を食べることは好ましくありません。
猫は、屋内で飼育するようにしましょう。
最後に
アドベンチャーワールドのダチョウやエミューなどが殺処分されると、いたたまれない気持ちです。飼育員さんたちは、動物の健康に最大限気を使い、自分の家族に接するようにお世話していたと思います。施設側は愛情をそれぞれにかけて飼育しているわけで、どうしてという気持ちが起こっていたかもしれません。
鳥インフルエンザウイルスは、鳥に感染する伝染病なのです。鳥インフルエンザの科学的な知識を持ち、飼い主の命を守ることはもちろん、ペットの鳥や猫も適切に飼育してください。