米長期金利が2.95%と3%に接近してきた背景
2月21日に公表された1月30~31日開催のFOMC議事要旨では、物価がFRBの目標とする2%に届かない状態が続くリスクや賃金が明確に十分な上昇トレンドを示していないことで、利上げについては慎重になるべきとの意見が数名のメンバーから出されていた。
これを受けて21日の米国市場では米10年債利回りは一時2.87%に低下し、利上げペースは緩やかとの見方から、ダウ平均は一時300ドル超上昇した。
しかし、何人かメンバーからは最近の経済状況に加えて税制改革の影響を踏まえ、景気見通しを引き上げたことが示された。経済には「相当の基調的な勢い」があると記され、多数の参加者からはより強い経済見通しにより、政策金利も「gradual increases 段階的な上昇」から「further gradual increases 段階的な更なる利上げ」となることが示された。
これにより2018年の利上げペースは予定通りの3回程度となることが予想され、3月の利上げ観測がより強まった。これを受けて米債は戻り売りに押されることになり、米10年債利回りは反転し、2.95%と2014年1月以来の水準に上昇した。この米長期金利の上昇が嫌気されて、米株は戻り売りに押されダウ平均は166ドル安、外為市場ではドルが下落した。
利上げペースについては、議長がイエレン氏からパウエル氏に変わっても変化はないとみられる。景気の拡大などによって利上げペースが維持されるとなれば、米長期金利は目先の節目とされる3%を超えてくることも予想される。
ただし、今回の米長期金利の上昇要因はこれだけではないと思われる。FOMC議事要旨の内容は会合後に示された声明文等にも記されていたことでもあり、21日の動きはやや過剰反応にも見えた。このため今回の金利上昇は、需給悪化なども意識されたものであったと思われる。
金利上昇には景気の拡大にともなう物価上昇を意識した良い金利上昇に対して、国債の需給悪化や財政赤字の拡大などを意識した悪い金利上昇がある。実際にはどの部分が良いとか悪いとかではなく漠然とした判断となるものではあるが、米長期金利の3%あたりまでの上昇であれば、FRBの利上げペースに応じた「良い」金利上昇ともいえよう。しかし、ここからさらに上昇ピッチを早めると、米財政への警告ともなる「悪い」金利上昇が加わるとの見方もできる。3%がすでに目前となっているだけに、ここからの米長期金利の動向には注意する必要がある。