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日本が1番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
アメリカ合衆国にとってアジアで重要視している国は?(写真:イメージマート)

アメリカ合衆国にとってアジアで最も重要なパートナーは?

アメリカ合衆国の人達はアジア地域においてどの国をパートナーとして重要視しているのだろうか。その実情を外務省が2022年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。

まずは「アジア地域の中でどの国が、アメリカ合衆国・地域にとって最も重要なパートナーであるか」(つまりアメリカ合衆国におけるアジア地域でもっとも頼りにしたい、付き合いを深めたい国)との設問に、択一で答えてもらった結果の推移の確認。なお一般人に関しては2020年度以降は該当項目の調査が行われていないため、その前年度の2019年度の値が最新のものとなる。

↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)

↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)

一般人は2011年度になって初めて、有識者では2010年度に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化によるもの。1990年以降、とりわけ今世紀に入ってからの中国の値の伸びがそれを裏付けている。

ところが2012年度になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそ無いものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由については、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われたもの、そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる(2011年度調査時点では震災関連の動きは反映されていない)。

その翌年の2013年度では、中国の動きは一般人では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。他方、一般人・有識者ともに韓国が大きく伸びている。

直近の2021年度では有識者では前年度から、日本の下落幅を上回る形で中国が大きな下落を示し、両国のポジションは入れ替わる形となった。調査期間にはロシアによるウクライナ侵略戦争勃発直前の期間が含まれているため、中国と日本それぞれの対露姿勢が影響したのかもしれない。

パートナーとしての認識の理由を確認

2021年度ではアメリカ合衆国の有識者にとって、日本はアジア地域の中でもっとも重要なパートナーと認識されたわけだが、その理由は何だろうか。その理由を自由回答形式で応えてもらった結果が次のグラフ。

↑ アジア地域の中で日本をアメリカ合衆国にとってもっとも重要なパートナーだとみなした理由(有識者、自由回答)(2021年度)
↑ アジア地域の中で日本をアメリカ合衆国にとってもっとも重要なパートナーだとみなした理由(有識者、自由回答)(2021年度)

もっとも多いのは「貿易・経済関係」で41%が理由として挙げている。次いで「友好関係・現在の同盟国」が28%。見方を変えればアメリカ合衆国(の有識者)にアジア地域で重要なパートナーと認識されるためには、貿易や経済関係、そして友好関係や同盟国であることの維持、さらには発展が必要不可欠であると考えてよいのだろう。

興味深いのは「他国との比較」が12%の値を示していること。アジア地域にある他国、選択肢の中では中国やオーストラリア、ロシア、韓国、インドと比較して、日本はよりよいパートナー国として選ばれていることになる。どのような点で比較されているのかは不明だが、日本はアメリカ合衆国からの覚えをよくするためには、これらの国との競争の中にあるとの認識をした方がいいのだろう。

「第三国との結びつき・第三国への影響」「経済力」「軍事力・米国との軍事的関係」などは5%にとどまっている。特に「経済力」の値が低いのは、現実の再認識をさせられるものではある。

■関連記事:

【日本から主要5か国への親近感の推移をさぐる(2020年調査版)】

【対米89%、好感度もうなぎ昇り…対外国・震災対策評価】

※米国における対日世論調査

直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2021年12月~2022年2月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(連邦政府、大企業、マスメディア、労働組合、宗教団体、アカデミアなどで指導的立場にある人物)。一般人にはインターネット経由で、有識者には電話によるインタビュー形式で実施されている。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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