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来シーズンの1部昇格が決定。入れ替え戦でC大阪堺レディースが見せた確かな実力

松原渓スポーツジャーナリスト
この試合、先発メンバーの平均年齢は17.8歳(C)Kei Matsubara

【1部昇格】

 そのスコアは、1部昇格に相応しい、確かな実力の証だった。

 なでしこリーグ1部・2部入れ替え戦の第2戦が12月16日(土)に川越運動公園陸上競技場(埼玉)で行われ、1部で9位のちふれASエルフェン埼玉(以下:埼玉)と、2部で2位のセレッソ大阪堺レディース(以下:C大阪)が対戦。C大阪が第1戦の1-0での勝利と合わせて2試合の合計4-0で、来シーズンの1部昇格を勝ち取った。

 

 C大阪は今シーズン、なでしこリーグカップ(2部)で初優勝。5年をかけて積み上げた堅守をベースに多彩な攻撃を展開し、リーグ戦(2部)では、日体大FIELDS横浜と最終節まで熾烈な優勝争いを演じた。

 チームの強さを支えているのは、生え抜きのメンバーで戦ってきた連係の良さだ。

(参考記事)先発メンバーの平均年齢17.7歳。堅守で1部昇格を目指す、セレッソ大阪堺レディースが浦和戦で得たもの

「中学生の頃からずっと一緒にやってきたので、チームワークはめちゃくちゃいいですね」(DF筒井梨香)

 2試合を無失点で乗り切った守備で、一際、頼もしい存在感を見せたセンターバックの筒井は試合後、そう言って屈託のない笑顔を見せた。

 C大阪は、先発メンバーの平均年齢が常に18歳前後と、他のチームに比べて圧倒的に若い。

 この日のスターティングメンバーの平均年齢は17.8歳だった。最年少のDF善積(よしずみ)わらいは2002年生まれの15歳で、最年長が20歳のMF松原志歩とDF古澤留衣だ。体が出来上がった大人のチームに比べると、見た目にも体格差はある。だが、C大阪の選手たちは、その差を補って余りあるコンビネーションを見せる。

1部昇格をサポーターと共に喜ぶ(C)Kei Matsubara
1部昇格をサポーターと共に喜ぶ(C)Kei Matsubara

【狙い通りのゲームプランで3ゴール】

 第2戦を前に、今シーズンのリーグ戦で常に先発に名を連ねてきたFW矢形海優(やかたみゆ)とMF井上陽菜が負傷し、大事なこの日の試合を欠場するアクシデントに見舞われた。2人の分まで戦おうという強い想いも、勝利へのモチベーションに変わった。

「決めるところを決めたら3、4点は入れられる。今日もその覚悟で、ゴールをいっぱい決めて、セレッソらしい攻撃的なサッカーで勝とう」

 C大阪の竹花友也監督は試合前、そう言って選手たちを送り出したという。

 そして、試合はその言葉通りの展開になった。

 

 ホームに埼玉を迎えた12月9日(土)の第1戦は1-0で勝利。テンポの良いワンタッチパスをつないで決めた矢形の先制ゴールは、C大阪の強みでもある連係の賜物だった。     

 そして、第2戦は1点リードの優位な状況を活かして、自分たちのゲームプランに持ち込んだ。

 前半の10分過ぎまではロングボールで押し込まれる時間が続いたが、1人が抜かれても、2人目、3人目とカバーが絶えない。攻撃では埼玉のプレッシャーを逆手にとって、相手最終ラインの背後をシンプルに狙った。

 そして、前半17分にFW野島咲良のゴールで先制して試合のペースを握ると、後半は攻撃力を遺憾なく発揮した。

 76分に、右サイドのMF北村菜々美からの絶好のライナー性のパスをゴール前で受けた松原が決めて2-0。後半アディショナルタイムには、エースのFW宝田沙織が自ら得たPKを決めて3-0とし、試合を締めくくった。

「選手たちは緊張することなく、楽しんでプレーしてくれたと思います。守備は、5年前から言い続けてきたことです。あとは、(攻撃面で)積み上げてきたところを今日はうまく出せたかな、と」(竹花監督)

 竹花監督は試合後、大一番でしっかりと自分たちのサッカーを表現したチームに手応えを口にし、歓喜に沸く選手たちを静かな笑顔で見守った。

【攻守の要】

 この試合では、中盤の攻防が試合の流れを大きく左右していた。

 その中で、確かな技術とゲームメイクのセンスで流れを引き寄せたのが、キャプテンのMF林穂之香(はやし・ほのか)だ。

キャプテンとしてチームをけん引した林(C)Kei Matsubara
キャプテンとしてチームをけん引した林(C)Kei Matsubara

攻撃参加や正確なミドルシュートも持ち味としているが、この日は低い位置でゲームをコントロールしつつ、先制点をアシストした。

林は年代別の日本代表にコンスタントに名を連ねており、日テレ・ベレーザや浦和レッドダイヤモンズレディースなどの、1部のチームに所属する選手たちと年代別の代表チームでチームメイトとしてプレーする機会も多かった。

昨年、パプアニューギニアで行われたFIFA U-20女子ワールドカップでともに戦った2歳上の代には、すでにA代表で活躍しているメンバーも複数いる。そのことが、林にとってモチベーションにならないはずがない。

 C大阪には林以外にも宝田や北村など年代別代表で活躍する選手が多く、この試合には、なでしこジャパンの高倉麻子監督やU-19日本女子代表の池田太監督も視察に訪れていた。

「(なでしこジャパンは)ずっと、目標にしているところです。1部に上がって、チームとしても個人としても頑張れば、見てもらえると思うので。自分の特長を伸ばしていくこともそうですが、全体的にひとつ、二つ上のレベルに行けるように成長していきたいです」(林)

 チーム立ち上げ以来、最年長として戦ってきた20歳の松原の言葉も印象深かった。

「私は昔からこのチームにいますが、応援してくれるサポーターの数が増えて、環境も良くなってきて。こんなに良い環境でサッカーができているということを、最初から(チームに)いた身として伝えていく必要があると思っています。試合に出て結果を出し続けて、チームの先頭に立って引っ張っていけるような選手になりたいです」(松原)

 試合前には、C大阪の男子のトップチーム(J1)の選手たちが寄せ書きしたチームフラッグをプレゼントされ、松原はしみじみと見入ってしまったという。

「トップの選手がレディースのことも応援してくれていると知って、すごく力になったし、一緒に戦ってくれているのかな、と勝手に思っちゃいました」(松原)

 ルヴァン杯でクラブ史上初のタイトルを獲得し、J1でも昇格1年目で3位と躍進したトップチームの活躍に、来シーズンのなでしこリーグ1部で続きたいところだ。

【レディースに続いて下部組織のガールズも】

 翌日、17日(日)に三木総合防災公園陸上競技場(兵庫)で行われたチャレンジリーグの入れ替え戦では、C大阪の妹分に当たるセレッソ大阪堺ガールズが、INAC神戸レオンチーナ(INAC神戸レオネッサの妹分)に3-0で勝利し、来シーズンのチャレンジリーグ(3部に相当)参入を果たした。

 先制ゴールを決めたのは、前日のレディースの試合で、試合終了間際までプレーした善積。彼女のように、レディースとガールズを掛け持ちしている選手もいる。その中で、C大阪の「イズム」は、上から下の世代へと確かに受け継がれている。

 年代別代表の国際大会では、来年8月にフランスで開催されるFIFA U-20女子ワールドカップや、来年11月にウルグアイで開催されるFIFA U-17女子ワールドカップ、さらには、2019年FIFA女子ワールドカップや2020年東京オリンピックで、なでしこジャパンの一員として活躍する選手も出てくるだろう。

 若く、才能豊かな原石が揃うC大阪が来シーズン、1部でどのような戦いを見せるのか、楽しみだ。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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