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成長が見える長坂拳弥選手と、徐々に上向いてきた江越大賀選手の今季1号《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
長坂選手。昨年のフェニックス・リーグで撮った1枚ですが、いいポーズでしょう?

 きのう5日、鳴尾浜に広島を迎えての3連戦が終わり、結果は阪神の2勝1敗でした。3月に行われた今季最初の対戦が2連勝だったので、通算は4勝1敗。ここ数年はかなり負け越して終わることの多かったカード(2015年は12勝12敗4分けのタイ)ですが、ことしはいいスタートと言えますね。

 きょう6日からは中日3連戦が組まれています。このカードは前回、鳴尾浜で1勝1敗1分けという結果。きょう6日の初戦は、先発の才木浩人投手が1回に先制を許しましたが、3回に長坂拳弥選手の二塁打と江越大賀選手のヒット(二塁でアウト)などで2死三塁として、北條選手が同点タイムリーを放ったものの…阪神の得点はこれで終わり。5回に才木投手が3連続タイムリーを含む4安打と1四球で3点を追加され、4対1で中日が勝ちました。あす7日は三重県四日市市の霞ヶ浦第一野球場で行われ、8日はナゴヤ球場に戻っての開催です。

 さて、きょうは3日から5日に行われた広島3連戦の簡単な結果と、唯一取材に行けた4日の監督や選手のコメントをご紹介します。カープ女子という言葉がよく聞かれるようになった4年前から、どこでも多かった赤ユニホームの広島ファンが、鳴尾浜ではここ2年ほどグッと減りましたね。ピークの頃は一塁側のスタンドは真っ赤で、バックネット裏にも陣取るほどだったんですけど。まあ“減少”したわけじゃなく、落ち着いたということかも。赤ユニ以外の方も多いでしょう。

1戦目、打線は3安打でも完封勝利!

《ウエスタン公式戦》4月3日

阪神-広島 3回戦 (鳴尾浜)

 広島 000 000 000 = 0

 阪神 102 000 00X = 3

  

◆バッテリー

【阪神】○岩貞(1勝)-望月-Sモレノ(2S) / 長坂

【広島】●塹江(1敗)(5回)-ケムナ(2回)-飯田(1回) / 坂倉

◆本塁打 森越1号ソロ(塹江)

◆盗塁 坂倉(1)、陽川(2)

《試合経過》※敬称略

 1回に1死から森越と陽川が連続で四球を選び、2死後に中谷の左前タイムリーで先制。3回には先頭・森越の今季1号ソロ!続く陽川が四球、1死後に二盗を決めて、また中谷が中前タイムリーを放ち、3対0とします。以降はノーヒット、四球2つでの出塁のみでした。

 一方、先発の岩貞はヒットを許しながら併殺などで切り抜け、また北條の好守や長坂の盗塁阻止などもあって7回5安打無失点。8回は望月が三者凡退、9回もモレノが三者凡退に抑えて逃げ切り、今季2試合目の完封勝ちです。しかし…3回までしかヒットがなく、それも散発の3安打でよく勝ちましたよねえ。

16被安打で今季初の2ケタ失点

3回に中村奨成選手の3ランで6対0とリードを広げられました。
3回に中村奨成選手の3ランで6対0とリードを広げられました。

《ウエスタン公式戦》4月4日

阪神-広島 4回戦 (鳴尾浜)

 広島 213 000 040 =10

 阪神 000 101 110 = 4

  

◆バッテリー

【阪神】●福永(1敗)-石井-藤谷-岡本-歳内-山本-尾仲 / 小宮山-長坂(5回~)

【広島】○中村祐(1勝)(5回)-オスカル(2回)-カンポス(1回)-藤井皓(1回) / 中村奨

◆本塁打 中村奨2号3ラン(福永)、長坂1号ソロ(オスカル)、江越1号ソロ(カンポス)

◆三塁打 坂倉

◆二塁打 小窪、バティスタ

◆盗塁 桑原(3)、天谷(2)

石井投手は1四球のみで無失点。
石井投手は1四球のみで無失点。
6回の藤谷投手は三者凡退!
6回の藤谷投手は三者凡退!
印象的な岡本投手のフィニッシュ。
印象的な岡本投手のフィニッシュ。
歳内投手は6安打を集中されました。
歳内投手は6安打を集中されました。
9回は尾仲投手が1安打無失点。
9回は尾仲投手が1安打無失点。

《試合経過》※敬称略

 完封リレーだった前日から一転、4日は今季最多の16安打を浴び、10対4で敗れています。先発の福永が1回、2死を取ってからバティスタと高橋大に連打されたあと5番・坂倉がレフトフェンス直撃の三塁打(壁の上の金網に当たってガッシャーンと!)。まず2点を失います。

 2回は先頭の中村奨の左前打と犠打、三ゴロで2死三塁となって1番・桑原の左前タイムリー。さらに3回、四球とヒットなどで2死二、三塁とされ、中村奨の2号3ランを浴びました。4回も2死から二塁打を打たれた福永ですが、ここは0点に抑えて交代。以降は石井が5回を1四球のみで無失点、6回の藤谷は阪神投手陣唯一の三者凡退、岡本は7回に登板し、二塁打を許しながら抑えました。

 8回は歳内が三盗から連打され、犠打で1死二、三塁として9番・木村の中前タイムリー。続く桑原にも左前タイムリー。小窪の中前打に続いてバティスタにも左前タイムリー。2連打と4連打を浴びて4点を失い、2死を取ったところで降板しています。代わった山本はいきなり初球を坂倉にぶつけてしまいましたが、次を抑えて終了。9回は尾仲が1安打と味方エラーで走者を置くも、併殺で無失点です。

 打線は1回に荒木が中前打しただけで3回まで得点なし。4回に陽川の死球と板山の右前打で無死一、三塁となり、中谷が右犠飛。6回は板山が左前打、中谷の三ゴロで木村が捕球と送球のダブルエラーを犯して一、三塁。2死後に代打・江越の中犠飛で1点を追加。7回は5回からマスクをかぶる長坂がレフトへ今季1号ソロ!そして8回は2死から江越がカンポスの真っすぐを左中間へ、やはり今季1号ソロ!何とか1点ずつ返した打線も、反撃はここまで。今季最多の16安打、10失点で敗れています。

5回に8安打で8得点!逆転勝ち

《ウエスタン公式戦》4月5日

阪神-広島 5回戦 (鳴尾浜)

 広島 010 200 100 = 4

 阪神 000 080 00X = 8

  

◆バッテリー

【広島】○青柳(2勝)-守屋-山本-モレノ‐伊藤和 / 長坂‐岡崎(6回~)

【阪神】●中村恭(1敗)(4回0/3)-長井(2回)-佐藤(1回)-ケムナ(1回) / 中村奨-白浜(8回裏)

◆本塁打 高橋大2号ソロ(青柳)

◆二塁打 上本、岡崎、陽川、中谷、江越

◆盗塁 小窪(1)、天谷(3)、中村奨(1)、江越(2)、熊谷(5)

《試合経過》※敬称略

 三者凡退で立ち上がった青柳ですが、2回に先頭・高橋大の2号ソロで先制を許します。4回は1死から連打されたあと8番・上本の左中間へタイムリー二塁打を浴びて2人を還しました。しかし、4回まで1安打のみだった打線が5回に大爆発!打者13人で5連続タイムリーを含む6連打、計8安打を集中させ、8点を奪う猛攻を見せます。

 序章として、先頭の江越が左前打と二盗、熊谷の四球に続き代打の岡崎が左翼線へ2点タイムリー二塁打!さらに北條が四球を選び、森越の犠打が内野安打となって無死満塁。ここからクライマックスの5連続タイムリーです。まず陽川が左中間へ二塁打を放ち2人還って逆転!

 なおも無死二、三塁で板山が右前打。一、三塁になって中谷は左翼線への二塁打。また二、三塁で長坂の中前打。ここで投手が交代しますが、まだノーアウトで一、三塁。この回2打席目の江越がレフトフェンス直撃の二塁打を放ってもう1点!そこからは3人で攻撃が終わったものの、11人目の打者・熊谷が三振してようやく1死だったんですね。ホームを踏まなかったのは長坂1人だけ、8点を奪うビッグイニングでした。

 6回は三者凡退で切って取った守屋が7回、連続四死球で無死一、二塁としてバティスタに中前タイムリーを浴びますが、後続を山本のリリーフも仰ぎながら断って1失点でとどめています。8回はモレノ、9回は伊藤和が1安打ずつ許しただけで試合終了です。

1軍の競争に入っていけるところへ

4日の先発・福永投手。4回8安打6失点でした。
4日の先発・福永投手。4回8安打6失点でした。

 では4日に聞いたコメントをご紹介します。矢野燿大監督は福永春吾投手に「追い込んでから決めにいって何本打たれた?1つ1つのボールの質は上がってきていると思うけど、追い込んでいきました、打たれましたではねえ…」と、少し苦い表情。福永投手本人は「変化球がちょっと浮きました」と言います。そのせいで、調子のよかった真っすぐをとらえられた?「そうですね。真っすぐの奥行きが使えていなかったから、ストレスなく振られていた」

 この日ホームランを放った長坂拳弥選手に、矢野監督は「左肩が入りすぎるという悪い癖があったので、去年1軍に来た時『直さないとしんどいぞ』って言ったんだけど、それがよくなっている」と分析したあと「去年はまだ上の競争に入っていなかったが、ことしバッティングはいい方向に変わりつつあるし。きのうまでもあまりよくなかったけど、きょう2本打ったからね」と評価。

途中出場で犠飛とソロの江越選手。HRで三塁を回ったところです。
途中出場で犠飛とソロの江越選手。HRで三塁を回ったところです。

 さらに「キャッチャーとしては、まだまだ全然!俺もキャッチャーなので目が厳しくなるとこはあるけどね。でも(ポジションをめぐる)勝負に入っていけるとこまでは上がってきた。キャッチャーってのは急に上がるもんじゃないから。ただ時間はゆっくりあると思ってやっていてはいけない。我々も、そこを指導していくつもり」と続けました。

 また江越大賀選手については「どうやったらよくなるか、俺らも考えている。ポテンシャル、身体能力は半端なくいい選手なので勝負に入っていけるよう、守備と走塁はいいからバッティングを何とかね」と話しています。

シンプルに取り組む打撃

 長坂選手のコメントです。「ホームランは真っすぐ。1球目(見逃しストライク)も真っすぐでしたが、それよりちょっと内よりだった。感触はよかったですね。行ったかな~と思いました」。ルーキーイヤーの昨季とはバッティングも変わった?「そうですね。打率もヒット数も、去年のこの時期よりいいですし。それは継続していきたいのと、速いストレートが打てていないので、詰まらされているのを何とかしないと」

長坂選手の今季1号。打席はおろか塁を回る写真も失敗…これが最初です。
長坂選手の今季1号。打席はおろか塁を回る写真も失敗…これが最初です。
左の矢野監督にヘルメットをバシッと。この後もいろんな人にバシバシ。
左の矢野監督にヘルメットをバシッと。この後もいろんな人にバシバシ。

 去年と一番違うところは?「いつでも打ちにいける状態を早めに作っているところです。始動もそうですし、トップも早めに。去年の秋から、あれだけ振り込んで。ことしの春も。振る力はついたかなと思います。まだまだつけないといけないけど。僕はシングルヒットでもコツコツ打っていかないといけないタイプ。いかに自分のポイントで打てるか、とシンプルな考え方になりました」。技術と力と、そして意識も変わったんですね。

 キャッチャーとしては、3日の広島戦で5回に坂倉選手の盗塁を許したものの、6回は桑原選手を刺した長坂選手。この送球は完璧だったのでは?「はい、よかったです。これまであまり刺せていなかったので。ことし最初の筑後(開幕のソフトバンク戦)は5つ企画されて1つくらいしか刺せなかった…」

 3連戦すべてにフルでマスクをかぶった長坂選手は、合計5つの盗塁を許しました。なので企画は6つだったと思われ、もしかすると1つは二塁へ送球して挟みながら最後にファーストの捕球エラーで走者を残したものかもしれません。走塁、盗塁に絡むエラーも2つあり、さらには暴投や捕逸のバッテリーエラー続出だった開幕3連戦。これはソフトバンクも同じでしたね。

 今季は果敢に盗塁を試みている阪神も、その3連戦で11盗塁を成功させています。ソフトバンクは釜元豪選手はもちろん、ルーキーの周東佑京選手がものすごく速いから。「そう!そうなんですよ。そのへんが走ってくるんですよ」。来週10日からの対戦、お互いの走り合いも楽しみにしてください。って、キャッチャーは災難でしょうけど。

自分にも言い聞かせる「上向き」と

8回2死から左中間へ、今季公式戦1号を放った江越選手。
8回2死から左中間へ、今季公式戦1号を放った江越選手。

 次は江越選手で、4日の8回に放った今季1号ソロは145キロの直球を打ったもの。「真っすぐを狙っていました。しっかりとらえられたと思います」。バットをなかなか放り投げず、一塁近くまで持って走っていたので「確信はなかった?」と尋ねたら「そんなことないですよ。入ると思いました」とのこと。

 27日の関西大学戦で打ったホームランを思い出すような、いい当たりでしたね。「一発で仕留める、っていうのを監督がいつも言っていて、自分も頭に入れてやっている中で、よかったと思います」

ベンチで迎える選手の中、中谷選手が高く高く左手を掲げて
ベンチで迎える選手の中、中谷選手が高く高く左手を掲げて
必死で手を伸ばす江越選手。まさに“ハイタッチ”?
必死で手を伸ばす江越選手。まさに“ハイタッチ”?

 それから「上向きです」と付け加えた江越選手。それはよかった!「上向き、上向きと言い聞かせないと」。なるほど、メンタルから上げていくわけですね。その通り、翌5日は大逆転の口火を切った左前打と、同じ回に巡ってきた2打席目でレフトフェンス直撃のタイムリー二塁打を放ち、6日の中日戦もマルチヒットでした。

 同い年の中谷将大選手も“もがいて”いますが、3日はチームが3安打3打点のうちタイムリー2本を放ち、4日が犠飛、5日にタイムリー二塁打を含む2安打と貢献しています。それまでチャンスでことごとくフライを打ち上げていたのが、少しスイングも変わってきたみたいですね。

 そうそう、フライといえば4日に登板した石井将希投手が右飛、中飛ときて四球を挟んで最後は左飛で打ち取っています。きれいに外野3方向のフライで打ち取ったねと言ったら「狙っていました」と。え?まさか。「嘘です(笑)」。そうきましたか。

今季初打席、果敢にファウルで粘る福永投手。
今季初打席、果敢にファウルで粘る福永投手。

 もう1つ、今季初めて打席に立った福永投手の話も。「打席は去年、甲子園で1回、鳴尾浜で2回ありますが、バントでした」。じゃあ制約なしに打つのはプロ初?「そうです」。3回2死ランナーなしでフルカウントから3球連続ファウル、そして四球と粘りましたね。打つ気満々だったと思われます。

おまけ★ヒーロースピーチ

 最後に、ことしからホームゲームで勝利した際に行われる“ヒーロースピーチ”が、この3連戦で2度ありました。3日は1号ソロの森越祐人選手が「本日ヒーローの森越です。僕の数少ないホームランを見に来ていただき、きょうはありがとうございました」と、スムーズな挨拶を披露。そのあと「余談ですが」と前置きして続けたのは…

 「セミが人間の大きさになって東京タワーから鳴くと、鹿児島まで(声が)届くみたいです。以上です。ありがとうございました!」という、驚きの雑学(笑)。あまりにも予想外だったのと、スタンドのお客様にはハッキリと聞き取れなかったらしく一瞬ポカーンという静寂があったとか。せっかくの豆知識なのに残念ですねえ。テレビ中継では聞き取れたものの「は、セミ?」と思いましたけど。

「セミの声が届く」鹿児島で、ことし1月に自主トレ中の森越選手。
「セミの声が届く」鹿児島で、ことし1月に自主トレ中の森越選手。

 翌日、その余談について森越選手を直撃したら「何かしゃべれと言われ、使命感が目覚めてしまった」のだそうです。なぜセミだったのかはわからずじまい。お話し上手な人ですから、持ちネタなのかもしれません。

 5日のヒーローは5回の猛攻で、最初に代打で2点タイムリー二塁打を放った岡崎太一選手。「本日はご観戦いただき、ありがとうございました。僕のタイムリーから流れが変わって、逆転勝ちすることができました!本日はどうもありがとうございました」。そこで後ろを振り返ると、よほど恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして照れ笑い。マイクを返そうとしたら、もっとしゃべれと言われたのか再び握り直して「解散!」とひと言(笑)。来週も楽しみですね。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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