能登豪雨「伝えて欲しい、人力が必要だ」報道がされない、孤立集落からのSOS現場ルポ
能登半島北部を襲った豪雨による死者は 23日、石川県輪島市で新たに1人の死亡が確認され、これまでに7人となった。行方不明者は2人、所在が分からず、連絡が取れない安否不明者も4人に上る。
さらに、孤立集落の数も依然として少なくない。石川県によると、山間部や海沿いにある3市町の14地区56集落が現在も孤立しているという。
そうした中、23日、輪島市門前町浦上を訪ねた。土砂や道路の崩落や陥没などに阻まれ地域で孤立してしまったお年寄りたちが、食べ物や飲み水などを求め、必死に徒歩で山を降りてくる様子にも遭遇した。
生の声を映像で公開しているのでぜひみていただきたい。
◆再び届いた、輪島市門前町の七浦地区からのSOS
能登を訪ねる前日、私のLINEに「七浦にいる両親と連絡が取れないので状況をぜひ教えてほしい」という連絡が届いた。大雨発生直後から電波が途絶え、孤立した状態で電話も繋がらず、安否もわからないという。
実は、1月の能登半島地震の発災直後も七浦地区に家族がいる方から連絡を受け、土砂を乗り越えながら夜通し徒歩で山を越えて目指した現場だ。今回の豪雨でも再び土砂などに見舞われ、地区は孤立。現地へ入るルートは通行止めとなっていた。
◆「食べ物が尽きた」4世帯が孤立、輪島市門前町宮田地区
そうした中、県道38号線を北上してなんとか七浦に近づこうとした。途中、浦上地区で、80歳になったばかりだという畑中好男さん夫妻と出会った。
杖をつき歩く畑中さん。泥や流木に覆われている街の様子を見て、ため息をつきながらこういった。
「とにかく道。道が必要です。私たちも二日間、食べ物も食べられていないんです。電話も通じないから何にもわからない。だから、決心して様子をみようと、歩いて山を降りてきました。何もかもなくなってしまいました」。
畑中さんご夫妻が住む、宮田地区は4世帯が暮らす山間の集落。今回の豪雨災害によって周囲の道路が寸断。未だ救援や支援物資の到着の目処などについて知らされていないと話していた。「どうか皆さん、宮田を宜しくお願いします」と夫妻でカメラに向かって頭を下げ、一刻も早い改善への支援を呼びかけた。
◆「これ以上どうしたらいいのですか?」壊滅的被害の亀部田地区
七浦地区を目指し、さらに県道38号線を行くと濁った川の水が勢いよく流れている様子が目に飛び込んできた。橋の欄干には何本もの大きな流木が引っかかっており、周囲の家を見ると土砂に覆われ傾いていたり、車が流され横転したりしていた。輪島市門前町の浦上亀部田地区だ。あたり一面、見渡す限り流木に覆われてしまっている場所もある。
「車も流されてしまいました。私の車は向こうのほうに。これはお隣さんの車です」
被災した住宅の一階部分に入り込んでしまった土砂や流木をなんとか取り出そうと一人で作業を進めていたのは安原重信さん、83歳。ため息を何度も何度も重ねながら「何ができるのか教えて欲しいです」と呟いた。
安原さんは、自宅が1月の地震の被害を受け、仮設住宅に避難しながらコツコツ片付けをしてきました。しかし、そこへ再び今回の豪雨災害により、濁流が流木とともに安原さんの自宅を襲った。途方に暮れる今回の被害。取材が終わり、別れ際に両手で手を握りあいながらの「応援してください」という言葉に、お互い涙が止まらなくなった。
亀部田地区に後ろ髪を引かれながらもさらに、県道38号線を門前町七浦の方に車で進むと、通行止めになった。電柱が倒れ、電線が道路を覆ってしまっていたからだ。
その様子を撮影しようと車を降りて電柱に近づくと、後ろから人が駆け寄ってくる気配を感じた。振り返ると地元の業者で働く技術者が修理に到着したばかりだった。倒れた電柱の代わりに新たなものを2本たて、電線を張り復旧させるという。
近くに住む住民の男性がその様子を見守っていた。「これが通れるようになれば、やっと食事の買い出しができる」。
さらに、山を徒歩で登り進めると前方から、両手を支えられてゆっくり坂を下ってくる女性に出会った。NPO団体が孤立した集落のお年寄りの避難をサポートしていた。