オーストラリアに「100年に一度」の大雨 5日間で半年分の雨量も
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州で、先週末から「100年に一度」ともいわれる大雨が降り続いています。900ミリ近い雨も観測され、ダムの水も溢れ、家も流されました。残念ながらこの先も雨は続く見込みです。
1961年以来の最高水位
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州では、18日(木)頃から大雨が降り続いています。
シドニーを含め各地で大規模な洪水が発生し、数千人が救助されました。
20日(土)にはシドニーから70キロの位置にあるワラガンバダムの水が溢れました。このため下流の水域では、1961年以来もっとも高い水位に達すると予想されています。
またタリーという町では、家が丸ごと川に流されてしまいました。この家の持ち主は、その当日に結婚式を迎えるはずのカップルだったそうです。
加えて、牛が首だけ水面から出した状態で見つかり、救助されるという事態も起きています。
降った雨の量は?
100年に一度の雨などともいわれていますが、実際どれほどの雨が降ったのでしょうか。
豪州気象局のデータによると、18日(木)朝から22日(月)夕方までの105時間にコンボイン(Comboyne)で870ミリ、レッドオーク(Redoak)で830ミリの大雨が降ったようです。
コンボインの年間平均降水量は1,818ミリですので、およそ半年分の雨が約5日間で降ってしまったことになります。
大雨の原因は何か?
大雨の原因は何でしょうか。それは居座る高気圧と低気圧の影響です。
天気図を見ると、オーストラリア南東部の海上に中心を持つ高気圧があります。南半球では高気圧の縁では反時計回りの風が吹きます。つまり海からの湿った風が吹き続けているのです。そのうえ先週末には低気圧が発生したことが、大雨を降らせた原因でした。
雨はいつまで続くのか?
雨はいつまで続くでしょうか。
実は次の低気圧が西から近づいています。この影響でニューサウスウェールズ州では23日(火)も大雨、そしてその後も雨が降り続く恐れが出ています。当局は指示に従うようにと警戒を呼び掛けています。
大雨の背景にラニーニャ現象
大雨の背景には、ラニーニャ現象があります。
ラニーニャ現象とは、太平洋東部の赤道域の海水温が平年よりも低い現象で、これが起きると逆に太平洋西部の海水温が高くなり、オーストラリアで雨が多くなる傾向があります。
豪州東部の観測史上もっとも多雨であった上位3年のうち、2年はラニーニャの発生年だそうです。またラニーニャが起きると、12月から3月にかけての降水量が2割増えるとの研究もあります。
森林火災から大洪水に
今や雨が止まらないニューサウスウェールズ州ですが、1年半前は大規模な火災が発生し、連日世界のニュースをにぎわせていました。ご記憶の方も多いかと思います。
2019年7月から2020年2月にかけて、ニューサウスウェールズ州だけでも11,264件の山火事が発生し、州の総面積の7%にあたる550万ヘクタールが焼失しました。コアラもまた、州の3分の1にあたる5,000頭が命を落としています。当時は州の95%で干ばつが起きていました。
気候変動の影響
今後オーストラリアでは、気候変動の影響で異常高温や干ばつが増加すると考えられています。しかしその一方でラニーニャ現象による影響も大きくなって、今回のように天候が不安定になりやすくなる可能性も懸念されているようです。
相反する現象の激甚化に、住民の方はさぞや大変な生活を強いられることでしょう。