羽生善治九段(49)追いついた! 竜王戦挑決三番勝負第2局で丸山忠久九段(49)に勝ち最終第3局へ
8月25日。東京・将棋会館において第33期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第2局▲丸山忠久九段(49歳)-△羽生善治九段(49歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。
10時に始まった対局は21時32分に終局。結果は112手で羽生九段の勝ちとなりました。
三番勝負はこれで両者とも1勝1敗。竜王挑戦権のゆくえは最終第3局の結果次第となりました。先後は改めて振り駒で決まります。
第3局は少し間が空いて、9月19日におこなわれます。七番勝負が開幕するのは10月です。
羽生九段、正確な指し回しで制勝
戦型は角換わり。先手番の丸山九段は早繰り銀の速攻に出ました。羽生九段は1歩損の代償に駒組に手をかけます。
羽生「なんかちょっと、序盤は失敗してしまったような・・・。模様がわるいと思いながら指していました」
昼食休憩が終わって再開。互いに角の打ち込みに気をつけながら、じりじりとした形勢互角の中盤戦が続きました。
コンピュータ将棋ソフトはさかんに千日手の可能性を匂わせる中、両対局者は金銀を玉に寄せて4枚の堅陣を築きます。
局面の均衡が次第に崩れてきたのは、夕方に入ってきてからでした。丸山九段苦心の金の動きに応じて羽生九段は銀を前線に進め、本格的な戦いが始まります。そのやり取りでわずかにポイントをあげたのは、羽生九段の側でした。
65手目、丸山九段が1筋の端歩を突き上げて反撃を継続します。
丸山「あそこは苦しいと思ってまあ、勝負というか、ちょっとやけくそ気味なんですけど」
そこで18時、夕食休憩に入りました。
18時40分、再開。両者の指し手は早く、一気に終盤戦へと入ります。
羽生「終盤はけっこうギリギリの勝負なんじゃないかと思ってやってたんですけど・・・。うーん。なんかちょっとあんまり読みきれなかったですね。どういう展開になるのか、手が広いところなので。きわどいかなと思って指してました」
80手目。羽生九段は自陣の銀取りを手抜いて、相手陣に迫ります。いかにも羽生九段らしい、鋭い踏み込みでした。
羽生九段は緩急自在の指し回し。攻めるべきところは攻め、受けるべきところはしっかりと受け、優勢のうちに終盤戦を進めていきます。
94手目。丸山九段が成り捨てたと金を羽生九段が丁寧に払ったところで、持ち時間5時間のうち、残り時間は丸山1時間10分、羽生38分。
そこで丸山九段が熟慮に沈みました。丸山九段は大きな扇子を広げてあおぎます。
「そうか・・・」
どこかに悔やまれる手があったのか。羽生九段が離席している時、丸山九段は左手で頭をかき、ぼやくような声が漏れました。
丸山九段の時間は少しずつ減っていきます。丸山九段は前局の挑決第1局や、本戦の藤井聡太棋聖(現在王位とあわせて二冠)戦などは、時間で大きく差をつけて、完璧に近いゲームマネジメントで勝利を収めました。
本局では盤上の苦境を示すかのように、丸山九段の時間は刻々と削られていきます。
95手目。丸山九段は37分を使って飛金両取りに角を打ち込みます。部分的には大変厳しい攻めです。
対して羽生九段は相手の考慮中に読み進めていたか、ノータイムで丸山陣の守りの金を取ります。これで羽生九段が一手勝ちの形勢です。
互いに相手の飛車を取り合い、105手目、丸山九段は飛車を打って羽生玉に王手をかけます。残り時間は両者ともに32分。
羽生九段勝勢で、いかに逃げ切るかという最終盤。しかし一手でも間違えたら、たちまち逆転となるのがトップクラス同士の戦いです。
「羽生九段、残り25分です」
「羽生九段、残り20分です」
記録係の声に、羽生九段はそのつど「はい」と答えます。
考えること12分。羽生九段は少し指の先を震わせながら、駒台の金をつかんで飛車と自玉の間に打ちます。
「羽生九段が手を震わせるのは、勝ちを確信した時」
これが将棋界の共通認識です。
丸山九段もまた自身の負けを読み切っていたのでしょう。今度は丸山九段がノータイムで王手で迫っていきます。
羽生九段は王手に応じながら自玉を上部へと逃げて安全地帯に。そして手番が回ったところで112手目。少し手を震わせながら、自陣の桂を跳ね、丸山玉を受けなしに追い込みます。
「負けました」
羽生九段の桂跳ねを見て、丸山九段は明瞭な声で投了を告げました。羽生九段が深く一礼を返して、対局は終わりました。
挑決三番勝負はこれで両者1勝1敗となりました。
羽生「まあちょっと間隔が空きますけど、まあまた調整して、次の対局に臨みたいと思います」
丸山「本局はちょっとミスが多かったように思うんで、次はまた調整してがんばりたいと思います」
竜王挑戦権のゆくえが決まる第3局は、9月19日におこなわれます。