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関節リウマチに伴う皮膚トラブルの見分け方と対処法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【関節リウマチに伴う皮膚症状とは?】

関節リウマチ(RA)は慢性の自己免疫疾患で、関節の腫れや痛みが特徴的ですが、実は皮膚にも様々な症状が現れることをご存知でしょうか。RAに伴う皮膚症状は、結節、好中球性皮膚症、血管炎など多岐にわたります。これらの症状は、RAの重症度を示すサインとなることもあるため、早期発見と適切な治療が大切です。

RAの皮膚症状の代表格は「リウマトイド結節」です。これは、関節の近くや圧力のかかりやすい部位にできる、痛みのない硬い腫瘤のことを指します。リウマトイド因子が高い患者さんに多く見られ、RAの活動性が高い場合にも発生しやすいと言われています。結節は時に潰瘍化したり感染したりすることがあるので注意が必要です。

RAに伴う皮膚症状のもう一つの特徴は、「好中球性皮膚症」の一種であるSweet病(急性熱性好中球性皮膚症)です。Sweet病は、発熱や関節痛を伴う赤い腫れた皮疹が突然現れるのが特徴で、RA患者の0.5~1%に発症すると報告されています。皮膚生検で確定診断され、ステロイド治療が奏功することが多いです。

【RAに伴う皮膚症状の診断と治療】

RAに伴う皮膚症状の診断には、視診や触診に加え、皮膚生検が有用です。リウマトイド結節の場合、特徴的な硬い腫瘤を触知することで診断できますが、時には皮膚生検で確認する必要があります。一方、Sweet病などの好中球性皮膚症は、皮膚生検で確定診断されます。血管炎が疑われる場合にも皮膚生検が役立ちます。

RAに伴う皮膚症状の治療は、その種類や重症度によって異なります。リウマトイド結節の場合、RAのコントロールが良好であれば経過観察でよいことが多いですが、痛みや機能障害がある場合は外科的切除を検討します。ステロイド注射で縮小させることもできます。Sweet病などの好中球性皮膚症には、ステロイドの内服や塗布が有効です。重症例ではシクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用することもあります。

最近では、生物学的製剤(バイオ医薬品)もRAの皮膚症状の治療に使われるようになりました。TNF阻害薬や抗IL-6受容体抗体などが代表的で、関節症状のみならず皮膚症状にも効果があることが報告されています。ただし、生物学的製剤は高価であるため、患者さん一人一人の状態に合わせて慎重に使用する必要があると考えます。

【皮膚症状から見たRAの診療】

RAに伴う皮膚症状は、患者さんのQOLを大きく損ねる可能性があります。関節の症状だけでなく、皮膚の症状にも気を配ることが大切です。皮膚に異変があれば、早めに皮膚科医や膠原病リウマチ科医に相談しましょう。適切な診断と治療により、皮膚症状をコントロールし、RAと上手に付き合っていくことが可能です。

また、皮膚症状はRAの全身性炎症のバロメーターとしても重要です。皮膚症状が悪化している場合は、RAそのものの活動性が高まっている可能性があります。リウマトイド結節の増大や好中球性皮膚症の出現は、RAの治療強化を検討するきっかけになるでしょう。

RAに伴う皮膚症状は、私たちに様々なサインを発しています。それを見逃さず、総合的に診療していくことが求められます。皮膚症状を通してRAを深く理解し、患者さんに寄り添った医療を実践していきたいものです。

参考文献:

- Chua-Aguilera et al. (2017) Skin Manifestations of Rheumatoid Arthritis, Juvenile Idiopathic Arthritis, and Spondyloarthritides. Clin Rev Allergy Immunol. 53(3):371-393.

- Yamamoto T. (2019) Management of Skin Symptoms in Rheumatoid Arthritis. Curr Treatm Opt Rheumatol. 5:140–151.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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