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藤井聡太七段、詰将棋解答選手権5連覇の快挙

松本博文将棋ライター

 2019年3月31日。藤井聡太七段(16歳)が詰将棋解答選手権(チャンピオン戦)で5連覇を達成した。点数は100点満点で98.5点。わずかなマイナスは単純な誤記によるものだそうで、実質的には満点と言ってよいようだ。

 選手権に参加しているのは、斎藤慎太郎王座、宮田敦史七段をはじめとするプロ棋士、さらにはアマ強豪、詰将棋作家など、名だたる精鋭ぞろいである。その中で誰よりも早く、目もくらむような難問10問をことごとく解き尽くす。その驚異的な能力を、なんと表現したらよいのだろうか。

 大会の詳しい模様については、「詰将棋解答選手権 速報ブログ」をご覧いただきたい。問題もすでに公開されている。手数はおおむね、詰み上がるまでに数十手かかる。一般的な将棋ファンであれば、将棋盤に実際に駒を並べて動かし、1問でも解ければ、自慢してよいのではないだろうか。大会でも盤駒を使うのは自由だが、藤井七段をはじめ、ほとんどのプロ棋士、女流棋士、奨励会員は、これらをすべて頭の中で解いている。

 棋士としての藤井七段の真価は、盤上に残した指し手をたどることによってのみわかるのだろう。同様に、詰将棋解答者としての能力は、実際に同じ問題を解くことによって体感できるはずである。しかしそれは、ほとんどの人にとっては文字通り、無理難題だ。代わりに、外形的な記録を眺めて唖然とする他ない。

 解答選手権で2位の成績を収めたことのある篠田正人さん(奈良女子大教授、東大将棋部OB、元アマ竜王)は、以下のように述べている。

「出題者が知恵を絞って謎解きを盤上に詰め込んだ問題は、見てみればわかるとおり一般の将棋ファンでは糸口も掴めないほど難しく、制限時間中に解き明かすのはたとえプロ棋士でも至難の技です。その難問をほぼ満点でクリアして優勝した藤井聡太七段の優勝にはただただ感嘆するのみです。思えば2011年、チャンピオン戦の大阪会場に迷い込んだかのように現れた8歳の藤井君は51点を取ってまわりの大人を驚かせ、その時から詰将棋ファンは藤井少年を自分たちのアイドルのように思ってきました。プロ棋界で期待以上の成長を見せている彼が、毎年この大会に参加してくれていることで私たちは一層彼を応援したくなります」

 藤井七段の5連覇は、恐るべきことに、小学6年から高校1年までの間に成し遂げられた。以下はその記録を並べておく。

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 「神童」「天才」という言葉は軽々に使うべきではない。しかし、藤井聡太七段に関しては、どうもそう表現するより他になさそうだ。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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