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NY原油12日:需給緩和状態の再評価で続落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油4月限 前日比1.12ドル安

始値 48.44ドル

高値 48.76ドル

安値 46.86ドル

終値 47.05ドル

特に目新しい材料は見当たらないが、過剰供給に対する警戒感が根強く、期近主導で続落した。

為替市場ではドル高圧力が一服しており、これを受けて原油市場でも売り方ファンドの利食い売りが膨らむ場面も見られた。ただ、48.76ドルまでの戻りが精一杯であり、その後は戻り売り優勢の展開になっている。特に注目されるような動きはなかったが、前日の米週間統計で強力な在庫積み増し圧力が続いていることが確認されたインパクトが大きく、短期需給の緩和状態は維持されているとの見方が、上値を強力に圧迫している。

米エネルギー情報局(EIA)は4月に一部のシェールオイル生産地で若干の減産が始まるとの見通しを示しているが、シェールオイル全体としては増産ペースがやや鈍化するか否かというレベルであり、なお供給サイド主導で過剰供給を是正できるような環境にはない。需給バランスの均衡化には需要回復が必要不可欠であるが、現在は製油所のメンテナンスが漸くピークを過ぎた段階であり、なお製油所向け原油需要が回復する時期にはない。オマーン当局者は日量100万~150万バレル規模の供給過剰が発生しているとの見方を示している。

また、イランがアジアの需要家と売却交渉を行っているとされており、核開発による対イラン制裁が緩和・解除されると、イラン産原油の供給が新たな需給緩和要因になるとの見方も強い。少なくとも、イランが制裁緩和後の原油輸出拡大の可能性を探っているのは間違いない。

需給バランスの歪み是正の動きが強くなっていることは間違いないが、この時期から原油相場が反発してしまうと、需給均衡化をもたらすのに十分な生産調整が進まず、今後の反発力が限定されてしまうことになる。中長期的にはボトム圏に近づいているのは間違いないが、短期スパンでは依然として戻り売り対応の方に魅力を感じる。特に急激なドル高傾向が続いている間は、地政学的環境に大きな変化などが生じない限り、本格反発は想定しづらい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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