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ソン・ヘギョ、火傷の特殊メイク5時間「死にそうだった」/「ザ・グローリー」出演者トーク①

成川彩韓国在住映画ライター/元朝日新聞記者
Netflixシリーズ「ザ・グローリー」トークイベントに参加するソン・ヘギョ

 Netflixシリーズ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」パート2(9話~16話)が3月10日に全世界で配信されるのに先駆け、ソウルでは出演者と脚本家、監督によるトークイベントが開かれた。主人公のムン・ドンウンを演じたソン・ヘギョは「火傷の跡を特殊メイクで作るのに5時間ほどかかり、ダイエットで3日ほどバナナしか食べていなかったのもあって、撮る前から死にそうだった」と撮影秘話を語った。

 「ザ・グローリー」のトークイベントは3月8日、ソウルの「YES24ライブホール」で開かれ、第1部はソン・ヘギョと脚本家のキム・ウンスク作家、演出を務めたアン・ギルホ監督が壇上に上がり、ドラマファンたちを前にトークを繰り広げた。

 キム・ウンスク作家は「シークレット・ガーデン」「太陽の末裔」「トッケビ」「ミスター・サンシャイン」など数々の大ヒットドラマを生み出してきた脚本家だが、イベントの冒頭、「今年でドラマを作ってきて20年になるが、こういう場は初めてです」と、緊張した面持ちだった。映画は試写会や舞台あいさつ、映画祭などで作り手が観客の前に立つ場が少なくないが、ドラマでは珍しい。ソン・ヘギョも「ドラマでこういう場は初めて。『ザ・グローリー』の人気は知ってはいたけども、ずっと家にいたのでこうやって肌で人気を感じることはなかった」と語った。

Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1、パート2独占配信中
Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1、パート2独占配信中

 パート1(1~8話)は12月30日に配信され、世界的な大ヒットとなった。ソン・ヘギョは「パート1配信前はとても心配だった。私のせいで反応が悪かったらどうしようと心配していたら、配信後の反応がとても良く、うれしかった」と、視聴者に感謝の気持ちを述べた。

 一方、キム作家は「パート1があまりにも人気が出たので、怖くなってきてパート2の台本を読み返した。そしたら、本当に怖かった。よく書けてるなと思いました」と自画自賛し、会場をわかせた。

 パート1では高校生のムン・ドンウンが深刻ないじめを受け、退学する。被害者はドンウンだけではなかった。ドンウンは自分と、命を落とした被害者の分も復讐しようと長い時間をかけて準備する。その復讐のための伏線を敷いたのがパート1、本格的な復讐が展開するのがパート2だ。

 ドンウンをいじめたのは主に5人の男女だが、その中心にいたのはパク・ヨンジン(イム・ジヨン)だ。ドンウンの復讐は他の4人を巻き込みながら、ヨンジンを追い込んでいく。

脚本を務めたキム・ウンスク作家 Netflixシリーズ「ザ・グローリー」
脚本を務めたキム・ウンスク作家 Netflixシリーズ「ザ・グローリー」

 パート1についての視聴者のコメントで印象的だったものを聞かれたキム作家は「『神を信じる者と神を信じない者の戦いだ』というコメントは、正確な指摘だった。私自身、それをエンディングまでの大きなあらすじとして考えていた」と打ち明けた。「ヨンジンはシャーマニズム、サラはキリスト教、ヘジョンは仏教を信じる一方、ドンウンは神を信じず自ら罰しようとする。パート2の最後まで見たら、ああ、神はいるんだと感じると思う。私自身、神を信じている」と、意味深長なメッセージを投げかけた。ヨンジン、サラ、ヘジョンが加害者、ドンウンは被害者だ。ドンウンは神を信じないが、神はいるんだと感じられるような展開が待っているということだろうか。信じる者が救われるというのとは、ちょっと違うようだ。

 韓国では数年前から「学暴(ハッポク)」という言葉をよく聞く。学校暴力の略語だが、日本語で言えば校内暴力に当たる。過去の学暴が暴露され、活動が難しくなった芸能人も少なくない。だから、気象キャスターという芸能人のような立場のヨンジンにとって、学暴を暴露されるのは致命的なのだ。

 キム作家は「親が経済的に余裕のないドンウンや、この世の中にいるたくさんのドンウンのような子たちを応援したかった。ドンウンの復讐が成功する方へ描こうとしたが、最後がどうなるのかは直接見ていただければ」と、学暴をテーマに選んだ意図を語った。ドンウンの退学は、お金に目がくらんでドンウンを守らなかった親のせいでもあった。貧しい家庭の子が標的となり、親にも守ってもらえない現実を描いた。

 さらにキム作家は「脚本のための調査の過程で、警察署が委託する弁護士がいて、学暴に関して無料で相談を受け、訴訟も担当しているのを知った。一人で悩まないで、助けを求めてほしい」と、呼びかけた。

ドンウンを演じたソン・ヘギョ Netflxシリーズ「ザ・グローリー」
ドンウンを演じたソン・ヘギョ Netflxシリーズ「ザ・グローリー」

 印象的だったセリフについて、アン・ギルホ監督は「加害者たちの連帯と被害者たちの連帯、どちらが強固か」というセリフを挙げた。「被害者の連帯を応援したくなる、そういうセリフのように感じた」と言う。ドンウンは一人で加害者たちと戦うわけではない。夫の暴力から娘を守ろうとするカン・ヒョンナム(ヨム・ヘラン)や、父を殺されたうえ、犯人から手紙で脅迫を受け続けている医師のチュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)も被害者の連帯に加わり、ドンウンの復讐を助ける。

 現場での思い出としては、ソン・ヘギョは火傷の跡を作るのが大変だった体験を語った。「特殊メイクを全身にするのに5時間ほどかかった。そのシーンのためにダイエットをがんばって、3日前からご飯も食べず、ほとんどバナナだけ、前日からは水もなるべく飲まないようにして、その状態で5時間特殊メイクなので、撮影の前に死にそうになった。でも、それだけ体が大変だったおかげで、そのシーンがうまく表現できたと思う」と、プロ根性を披露した。

 トークイベントの第2部にはキム作家、アン監督に加え、ヨンジンの夫、ドヨンを演じたチョン・ソンイル、サラを演じたキム・ヒオラ、ヘジョンを演じたチャ・ジュヨン、ミョンオを演じたキム・ゴヌまで、出演者4人が壇上へ上がった。「ザ・グローリー」出演者トーク②で詳細を伝える。

韓国在住映画ライター/元朝日新聞記者

1982年生まれ、大阪&高知出身。大学時代に2年間韓国へ留学し、韓国映画に魅了される。2008~2017年、朝日新聞記者として文化を中心に取材。退社後、ソウルの東国大学へ留学。韓国映画を学びながら、フリー記者として中央日報(韓国)や朝日新聞GLOBE+をはじめ、日韓の様々なメディアで執筆。KBS WORLD Radioの日本語番組「玄界灘に立つ虹」レギュラー出演中。2020年に韓国でエッセイ集「どこにいても、私は私らしく」を出版し、日本語訳版をnoteで連載中。

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