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筒美京平の未発表曲『ホテル砂漠』がよみがえる!突如現れた謎のユニット「夏海姉妹」とは!?

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
「夏海姉妹」左:夏海ジュンさん、右:夏海愛さん(レコード会社提供)

 希代のヒットメーカー・筒美京平氏(2020年死去、享年80)が残した曲が、令和の時代によみがえります。歌うのは“姉妹”を名乗る女性デュオ。“ストリッパー”と“お座敷芸者”という謎のプロフィールで、タイプが違えば衣装もそれぞれ。さらには“ビート演歌”という聞きなれない言葉も。デビュー日のライブには、ピンクのスーツで懸命に踊る愛さん&歌に没入するジュンさんを、昭和歌謡好きと思われるファンの方が応援態勢で待ち受けます。昭和の香りを漂わせつつも、SNSのDMからデビューが決まるというイマドキなきっかけを持ち合わせる「夏海姉妹」、始動です!

―デビューおめでとうございます。

2人:ありがとうございます。

―デビューのきっかけは?

ジュン:私は“歌い継ぎ人”というスタイルで、ライブで昭和歌謡を歌っていました。お客様がYouTubeにあげてくださった動画を高護(こう・まもる)さんという音楽プロデューサーが見つけてくださって、お声がけというんでしょうか?SNSのダイレクトメールでご連絡いただきました。最初はちょっと怪しいなと思い、「実際の私の歌をお聴きになってご判断ください」とライブハウスにも来ていただきましたし、高さんというプロデューサーを当時は存じ上げず、今では後悔するような言動もあり(笑)、実際にお会いして内容をお聞きしてデビューの運びとなりました。

昭和歌謡を歌い継ぐ夏海ジュンさん(撮影:島田薫)
昭和歌謡を歌い継ぐ夏海ジュンさん(撮影:島田薫)

:私は、「劇団ワハハ本舗」内の若手一座「大江戸ワハハ本舗・娯楽座」の劇団俳優と並行して、4~5年前から「ポカスカジャン」の大久保ノブオさん(「夏海姉妹」プロデューサー)のオリジナル曲を歌う活動をしていました。フォークっぽいライブをやっていて、そろそろCDにしたいねという話から、演歌系はどうだという話が出てきたんです。

 「演歌?」と思ったんですが、ユニットだったらできるのではということで、「今、話をしている子(ジュン)がOKしたら相方になるかもしれない」とその場に呼ばれました。30分後と言われて待っていたのに一向にその話が終わらないんです。これはダメだったんだと思っていたら、重い空気の中、「相方になりました」と紹介されました。

ジュン:私はこれまで曲もコンセプトも演者も全部自分で決めて、ずっと1人で活動してきました。急にグループとか団体で動くのが不安だったんです。これから全く違う環境に臨まなくてはいけないということで、重い空気になっていたみたいです。

―顔合わせをした感想は?

2人:すごく安心しました。

仲良くなるしかない!愛さんとジュンさん(撮影:島田薫)
仲良くなるしかない!愛さんとジュンさん(撮影:島田薫)

:初めて会ったのが3~4ヵ月前で、紹介された1~2週間後にはレコーディングだったので、正直お互いのことをよく知らないまま進みましたから、意地でも仲良くなるしかないという気持ちでした(笑)。ジュンちゃんがお姉さんの部分はあるので話しかけたりしてくれて、知らないうちに気を遣わなくなりました。

ジュン:セルフプロデュース・マネージメントしかやってこなかったので、いきなりプロデューサーや相方が現れて、こういうのをスピード感というんですか?このスピードについていかないと目標は達成できないのだと理解して、今はしっかりとこなすようにしています。

―デビュー曲が筒美京平さんの未発表曲『ホテル砂漠』と聞いて、どう思いましたか?

ジュン:私は昭和歌謡を歌い継ぐ活動をしていたので、筒美京平さんのすべてをリスペクトしていましたから光栄でしかないです。というか、本当にこれは事実なのかと疑うくらい、すごくうれしかったです。

:筒美京平さんの未発表曲だと聞いて「すっごーい!」と。でも、音源を聴いたら「むずい!」(笑)。メインボーカルのジュンちゃんがレコーディングで歌うのを聴いて、「つい先日初めて聴いたばかりの曲を、こんなに歌えるなんて天才だ!この人についていこう!」と思いました(笑)。

 私はコーラスのような形でジュンちゃんの歌で踊るんですけど、とても楽しいです。作詞の橋本淳先生が「君が一生懸命踊ることが夏海姉妹のキーだから」と言ってくださったのがうれしかったです。

 「夏海姉妹」の曲は歌って踊れる“ビート演歌”なので、今後も踊り続けていくと思います。「ピンク・レディー」さんみたいな踊りでしたか?まさに私はピンクの衣装で、これは気合を入れて特注で作りました。借金したので、売れて返さないと(笑)。

―踊りは得意でしたか?

:劇団でしか経験がないので、変なダンスしかやってこなかったんです。『ホテル砂漠』の踊りは「ディスコっぽい雰囲気で」と言われましたが、どうしても劇団的な踊りになっちゃいます。ジュンちゃんの歌の雰囲気を壊さないように、何とか寄り添った結果が今です。

―(劇団の)“ワハハ的”な踊りとは?

:顔で踊る‼上手さを見せるのではなくて自分を見せるということです。最終的に“顔”になっちゃいます(笑)。

ワハハ本舗所属俳優でもある夏海愛さん(撮影:島田薫)
ワハハ本舗所属俳優でもある夏海愛さん(撮影:島田薫)

―筒美さんの未発表曲は、いつ頃作られた曲ですか。

2人:10数年前というのは聞いています。歌詞が刺激的で当時は出すことができず、いつかオリジナルの歌詞で出すということで皆さんが動いて、今回出せることになりました。

―この歌詞を見て感じたことは?

ジュン:情景が浮かぶので私は好きです。歌詞だけ見るとスポットが当たってしまう言葉があると思います。体の一部、表現がエロティカルなので、それをあまり感じさせないように歌いたいと思いました。

 エロいことをエロくなく、さらっとやろうと思えばできると思うんですけど、それもまた違う気がしていて、自分のフィルターを通して表現するにはナチュラルに歌って聴いてもらう方が自然かなと思っています。

―キャッチコピーに“ストリッパーの愛”、“お座敷芸者のジュン”とありましたが…。

:今回「夏海姉妹」というユニットでデビューしましたが、私たちが普通に「筒美先生の曲を歌います」と言ってもインパクトに欠けるので、「筒美京平の未発表曲をストリッパーとお座敷芸者が歌う!」とした方が、内容的にも説得力が出るのではということで、あえて設定を作りました。実際、MV(ミュージックビデオ)では本物のストリッパーの方にも参加してもらっています。次回の曲ではまた違う職種になっているかもしれないですね。

―先ほどお話に出てきた“ビート演歌”とは?

ジュン:サウンドや世界観、踊りながら表現すること、新しい感覚で“ビート”を感じてほしい、という思いがこもった新語です。演歌とビート演歌の違いはノリですかね。ノリながらも、心にすっと入ってくるフランクに聴ける曲。いろいろな世代の方に受け入れてもらい、身近に感じてほしいです。

―今の音楽界でどういう存在でいたいですか。

ジュン:私ははっきり決まっていて、お茶の間の「夏海姉妹」になりたいです。年齢・性別関係なく、MVでも大人の雰囲気(『ホテル砂漠』)だったり、小学生と一緒に踊ったり(『ハーブみたいな彼』)と広がりがあって、そこには親御さんがいて、おじいちゃん・おばあちゃんがいて、世代を超えて皆で楽しんでもらいたいです。

:私は革命家でありたいと思います。演歌のジャンルで、サウンドも「何これ?」という感じで、「あいつら何だ?」と見て聴いたら「カッコイイじゃん!」という。“ビート演歌”という新しい道を作っていくのが、私たちのやるべきことだと思っています。

ジュン:血の繋がりではなく心が繋がっている姉妹として、姉妹感を感じてほしいです。お笑いには「阿佐ヶ谷姉妹」、美容では「叶姉妹」がいますが、過去には「こまどり姉妹」もいましたし、私たちは音楽で「夏海姉妹」としてやっていきたいです。

―製作総指揮を務める高護プロデューサーに伺います。

高護:歌謡曲のグルーヴ感を今の20~30代の人に求めても、体現できる人が少ないですね。昭和の偉大な歌手の根底にはビートがあります。リズムの前にビートがある。ビートは体の中にある。体にビートをどれだけ埋め込めるかなんです。ただ歌がうまいとかやる気があるとかとは、ちょっと違う。そういう歌謡曲を今の時代にあった形で体現できる人を探していました。この2人ならできるのかもしれない、という思いでいます。

『ホテル砂漠』でデビューした夏海姉妹(レコード会社提供)
『ホテル砂漠』でデビューした夏海姉妹(レコード会社提供)

【編集後記】

当時は歌詞の過激さで発売を見送ったこの曲を、何とか世に出すのだというプロデューサーの使命感を強く感じました。経歴の異なる2人が出会いユニットが生まれ、それぞれが自分のやるべきことを理解し、勇往邁進(ゆうおうまいしん)しています。一点を見つめて進むジュンさんと、元気にハジける愛さんが、よい化学反応を起こしていきそうです。

「夏海姉妹」(なつみしまい)

2023年9月6日『ホテル砂漠』(作詞:橋本淳、作曲:筒美京平)でデビュー。夏海愛・夏海ジュンの女性デュオ。

夏海愛(なつみ・あい)

1993年7月5日生まれ、神奈川県出身。別名:石原奈津美(いしはら・なつみ)。

2014年結成「浅草ワハハ本舗・娯楽座(現:大江戸ワハハ本舗・娯楽座)」メンバー。大衆演劇をモチーフにしたエンタメ溢れる舞台活動を行なっている。テレビ東京系「孤独のグルメseason7」第8話出演、FMさがみ「とれたてランチBOX」レポーター、パーソナリティー他、ワハハ本舗全体公演全国ツアーなど多数出演。

夏海ジュン(なつみ・じゅん)

9月5日生まれ、東京都出身。昭和歌謡を継承する歌い継ぎ人「あや乃」として、都内で数多くのライブハウスで活躍中、「夏海姉妹」プロジェクトに出合いメインボーカリストとして参加。

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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