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日銀の植田総裁発言をどう解釈すべきか、12月の利上げの有無

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀の植田総裁は日本経済新聞のインタビューで、追加利上げの時期について「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているといえる」と述べた(11月30日付日本経済新聞)。

 さらに植田総裁は日本経済新聞の取材で「一段の円安はリスクが大きい」との認識を示した。場合によっては政策変更で「対応しないといけなくなる」と強調した。

 これらを受けて、29日のニューヨーク外国為替市場では日銀による早期利上げが意識され、円が買われ、ドル円は150円割れとなった。

 29日の米債は買われていたが、ナイトセッションの債券先物は29銭高の142円79銭で引けるなど下落した。

 12月2日の日本の債券市場では、12月の利上げ観測が強まったことから、2年国債の利回りは一時、0.625%と2008年10月以来の水準に上昇した。

 植田総裁は「2025年の春季労使交渉(春闘)がどういうモメンタムになるか。それはみたい」として、改めて賃金動向を注視する考えを示した。

 ちなみに連合は11月28日、千葉県浦安市で中央委員会を開き、来年、2025年の春闘ではベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分をあわせて5%以上、中小企業の労働組合についてはさらに1%以上を上乗せし6%以上の賃上げを要求する方針を正式に決定した。

 植田総裁はトランプ前大統領の返り咲きによって「米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある」とも述べ、時期は慎重に判断する姿勢をのぞかせたとされる。

 これについてはトランプ氏が就任し、その後の政策判断を確認した上での世界経済の行方を確認してからでは、かなりの時間を要することとなる。

 「データがオントラック(想定通り)に推移していることで、時間を掛けながらも調整していく方針であるのであれば、トランプ氏の大統領就任の1月20日後の、1月23、24日の金融政策決定会合よりも、年内12月18、19日の決定会合で、政策金利を0.5%に引き上げたほうが個人的には良いと思う。

 その後、トランプ大統領の就任後の状況を確認し、それによる金融市場の動向などもみながら、次の一手を探るほうが良いのではないかと思われる。

 今後の日銀の国債買入減額に際し、日銀に代わって引き受けてとなると予想される銀行などの金融機関にとって、政策金利の引き上げに伴う国債利回りの上昇は、むしろ歓迎されると思われる。むろん急激な変動は避けたいところではあるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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