ガソリン小売価格、8週連続の値上がりも一段高は必至
資源エネルギー庁が6月18日に発表した石油製品価格調査によると、6月16日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比+0.4円の167.0円となった。これで8週連続の値上がりとなる。
原油価格の高止まりが続く中、原油調達コストをガソリン価格に転嫁する動きが維持されている。為替相場に目立った動きが見られない中、ドル建て原油価格に対する上昇圧力がそのまま原油調達コストを押し上げる構図になっている。元売各社がガソリン精製マージンの圧縮を受け入れる余裕がなくなる中、原油価格上昇局面ではマージン確保・拡大のために卸値の引き上げ圧力が強まることが阻止できない。このため、末端でもガソリン価格の値上げが要請されているというのが基本ロジックになる。
■ガソリン卸値が示唆する一段高の可能性
しかも、この167.0円というガソリン小売価格は、まだ足元のイラク情勢の混乱状況を十分に反映していない可能性が高い。すなわち、更に上昇する可能性が高い価格水準である。
指標となるドバイ原油価格をみてみると、6月9日の1バレル=104.95ドルから、同16日には109.45ドルまで急伸しており、今年の最高値を更新している。こうした動きを受けて、業者転売価格(パージ物)は9日の1キロリットル=13万9,000円から16日には14万0,500円まで急伸しているが、まだ小売価格に十分に波及しているとは言い難い。
今月末から7月にかけては、卸値の値上がり圧力が小売価格にも徐々に反映される見通しであり、2008年9月29日の週以来となる170円台乗せの可能性も想定しておく必要があろう。原油調達コスト環境からは、今回のイラク危機を受けて更に1.5円前後の値上がり圧力が正当化される状況になっている。
■イラク産原油の供給リスク
さて、原油価格動向を考える上で一気にメインテーマになったイラク情勢だが、今後は反政府武装勢力が石油生産拠点の集中する同国南部に対して本格侵攻するか否かが注目されることになる。
現段階ではイラク産原油輸出に特段の障害は発生していないが、既に石油精製拠点バイジも武装勢力に包囲されており、南部の油田・石油ターミナルも制圧されると、イラク産原油が市場から消滅するリスクが高まる。
現在、サウジアラビアはイラン産原油の産出量とほぼ同規模の増産余力を有しているため、仮にイラン産原油が供給トラブルに見舞われても、本格的な供給不足に発展するリスクは限定されている。いざとなれば、サウジアラビアの増産でイラクの供給障害を相殺する程度の余力は残されている。2008年当時のように、需要に供給が対応できなくなるような事態までは想定していない。
ただ、サウジアラビアが大規模な増産を迫られることになれば、今後は石油輸出国機構(OPEC)内に十分な増産余力が存在しないことになり、想定外の需要拡大や供給トラブルには、もはや対応できない状況に陥ることになる。
季節要因からも原油価格は強含み易くなっているが、新しくて古い地政学的リスクが蒸し返されていることが、ガソリン価格の上昇リスクを高めている。